第六話 3体の魔獣
19時投稿なのですが、遅れて申し訳ございません。
業炎の支配者と合流し、桃太郎はケルベロスの背中に乗り、約束の地へと向かっていた。風が吹き抜ける中、上空には燃え盛る鳥が悠々と飛んでいた。
深淵の守護者はただひたすらに走り抜ける。確実に80キロ以上はスピードを出しているケルベロスの背中から、桃太郎の瞳には雄大な自然が映っていた。空は雲一つない紺青色、草原は一面緑。遠くを見渡せば山脈が連なり、壮大な大自然は圧巻だ。ただし、奴らが居なければの話である。
「主殿!奴を殲滅しますか?」
上空で燃えながら飛ぶ灼熱の鳥の様子が変わり、炎が一層増す。桃太郎に思念で何かが居ることを伝える。何も見えていないが、今一番周りが見えているのは業炎の支配者なのだから。
「何があった?」
桃太郎はフェニックスに状況を説明を確認してもらうが、その必要もなくケルベロスが答えに応じる。
「あれを見ろ旦那!」
よく遠くを見れば、そこには約200体程の大群で草原をうろつき周り、その雄大な景観を汚している鬼の姿があった。
「鬼!奴らめ、必ず殺してやる!!!」
桃太郎の殺伐とした雰囲気を察したのか、鬼まであと500メートル位でケルベロスはその場で足を止めるが、それなりの速さはすぐには止められずに滑り込んで静止した。桃太郎は掴まるのが精一杯であった。その場ですぐに体勢を立て直す。
桃太郎もケルベロスから降り、鬼に殺意の眼差しを向ける。おじいさんとおばあさんの敵を目の前にして見逃せるだろうか。憎しみと悲しみが入り混じった感情が蘇る。
「さてと、昔の様に一仕事するかな。深淵の守護者も舐められたものだ!」
ケルベロスは自らの邪気を発し、どす黒いオーラを纏い、グルグルと唸り声を上げた。その様子から、怒りが表れる。
「ヴォァ—————————————!!!」
ケルベロスの恐ろしい唸り声を聞いた鬼たちは一斉にこちらを振り向いた。本能的に畏怖し、生理的に受け付けないその容貌をもケルベロスは上回っている。爪を立て、深淵の守護者は魔獣へと化す。
上空のフェニックスは後退した。桃太郎はその場で刀に手を掛けた。その瞬間、ケルベロスが足を地面にのめり込ませたか思うと刹那、視界からケルベロスの姿が消えた。
「ッ——————————————————————————!!!!!!」
その場の空間が歪み、輪の様に空気が圧縮され『ソニックブーム』を起こす。爆風が轟いた後、ケルべスは雄たけびを3つの口から上げ、地形を抉りながら鬼たちを次々と抹殺していった。鬼たちは断末魔の叫びを上げることも許されないままケルベロスの爪で首を飛ばされ、邪気で闇に呑まれて消滅させられた。
それでもなお、ケルベロス一体で対処するのも難しいのか残党は200体程度はいる。深淵の支配者から逃げ延びた残党は標的を桃太郎に変え、次々に襲って来ようとする。そこで八神師匠の教えを思い出す。
『大抵外でうろついているのは下っ端さね』
その言葉通り実戦経験が少ない桃太郎は、刀を力一杯に引き抜いた。桃太郎は、自らの刀を鞘から引き抜いた。鞘も黒かったが、もちろん刃までもが黒く、刃文が整っている。その刀は、抜いた瞬間に漆黒のオーラが漂う。もはや、それは刀というにはおぞましすぎた。
「はぁあぁああぁあぁあぁぁ!」
桃太郎が叫ぶと、刀からはケルベロスと似た様な波長の邪悪なる力が放たれた。それは化け物には化け物で創られた武器で対抗するために、鬼の血と骨と魂で創られた神器。
「喰らえぇええええ!『黒爆・邪鬼神刀』!!!!」
黒い刃から放たれた斬撃は黒い波動となり、四方八方から押し寄せる鬼を一瞬にして斬殺した。漆黒のオーラを纏い、一時的に鬼の力を手に入れた桃太郎は鬼人化した。
「お前らのせいで皆死んだんだよ!貴様ら諸共死ねぇえぇぇ!!!!」
鬼人化した桃太郎は誰にも止められない。憤怒と憎悪と哀惜を動力源にして、爆発的な力を与えるものの、代価はその感情に飲み込まれることである。
桃太郎は目の前の敵をなぎ倒し、突き刺し、心臓を抉り、首を飛ばし、鬼を次々に惨殺していった。
「ふはははは!!」
熱風が吹き荒れる。フェニックスが加勢し、爆炎が混ざり鬼たちは灼熱の中にもがき苦しむ。
己の感情を支配できない桃太郎が刀を振り続ける中、水が桃太郎を包み込み鬼から遮断する。
「桃太郎様!御無事で?」
鬼の大群に一体だけ鬼と似ているが、鬼とは違った存在鬼と違って皮膚は赤や青ではなく、灰色のゴツゴツとした体表に覆われ、がっちりとした体形に2本のグルグルと巻いた角。羽を広げた目の紅い悪魔がそこにが立っていた。
『次回予告』鬼たちとの闘いの最中、一体の悪魔に出会う。