03・表と裏
薮井浩介 不安症な主人公
神谷樹 初めて話しかけてくれた明るい子
せわしなく進む授業を終え、初めての昼休みを迎えた。
そのころには自分の周りには人だかりができていた。
ある秘密がバレていたためだ。
それは、中学三年生の夏にさかのぼる。
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ちょうど部活の最後の大会が終わり、
受験勉強をしていた。
この日も市内にある図書館に向かっていた。
暑すぎて、早歩きで向かっていたところに、
声をかけられた。
「君、ちょっといいかな?」
声をかけてきた人は、
自分と同じぐらいの伸長をした成人男性だった。
不審者ではないと思った。
「何ですか?」
「君かっこいいよね、身長も高くて、
顔もいいし、ルックスも完璧。高校生かな?」
「中三です」
「そっかー、大人っぽいね。
少しだけお話しさせてもいいかな?」
これはもしかして、スカウトか何かなのか。
特に急ぎの用事もなかったので、
ハイと返事をした。
「あのさ、私こういう者なんですけど」
渡されたのは、芸能プロダクションの名刺だった。
大企業ではないが、若者に人気の事務所だった。
僕も一度は聞いたことのある名前だ。
「君さ、イケメンだし、人気出ると思うの。
体験でさ、うちの撮影に参加してみない?」
もともと芸能界には興味がなかったが、
服が好きだったので、
ファッション雑誌には興味があった。
どんな撮影をしているのか。考えたことがある。
「どんな体験なんですか?」
「雑誌の特集に出てもらいたくてさ。どうかな?」
人とのかかわりが苦手だった僕だが、今は受験期。
周りはみんな勉強で大忙しだし、
志望校に受かる自信もあった。
一回だけの体験だし、休憩がてらいいかもしれない。
みんなにバレることもないだろう。
「いいですよ」そう返事を返した。
親にも伝え、許可をしっかりともらい。
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実際すごく楽しくて、一回だけで終わらず、
中学を卒業してからも
ファッション誌のモデルや、SNSでの活動の幅を広めて
事務所にも所属してしまった。
現実世界では出せない自分が出せた。
高校でも一時期噂になったが、
何せSNS上と現実世界の自分のギャップがありすぎて
特に大騒ぎになることもなかった。
だからだろうか、安心しきっていた。
転校する数日前に今いるクラスの
グループチャットに情報が流れたらしい。
だからみんな自分のことを知っていたらしい。
引っ越してから雑誌の仕事はなかなかできていないが
SNSでの活動はしていた。
本当の姿なのか、偽りの姿なのか、
わからないSNS上の自分を早くも見られてしまった。
はじめての昼休みはそんな恥ずかしい自分への
質問攻めから始まった。
最悪のスタートだ。
なかなか小説書くのって難しいですね。頑張ります。
感想とかもらえると嬉しいですね。