1章8話 覚悟
城を出る前日、ジニウスとレインは2人、長話をしていた。
「この城ともお別れか…なんだか寂しいような」
「1年も住んでないぞ?」
「そうなんだけどさ~…ウェールズの里と比べてすっごく住みやすいっていうか」
「そりゃこの城は築城してまだ数年しかたってないからな。それと田舎を比べても…」
「田舎って言うなよ。今からみんなで住むんだぞ?」
とりとめのない会話、ただ2人にとっては楽しい時間だった。
コンコン、と部屋をノックする音が聞え、レインが応対する。
相手は兄のクライヴだった。
「兄さん…? 珍しいね」
「明日の出発についてなんだが…」
「……?」
「我々はウェールズの里ではなく、ミョルデの城へと向かう」
「えっ!? ちょ、ちょっと――」
「ただしレイン。お前とフィアナはウェールズの里へ向かえ」
「どういうことだよ、それは!」
「もし私の身に何かあったらその時は…オーガス家を頼むぞ」
「……!!」
「死ぬ気なのですか…? ミョルデ様の城ではレギュラ軍に囲まれればひとたまりも――」
「それでも、だ。明日、我らが城を出た後ベルフレム・ガーランド連合軍にこの城を攻めさせる」
「城を!?」
「頃合いを見計らい、地下に隠した魔晶石を発動させ城ごと奴らを沈める」
わかった、とだけつぶやくレイン。
「それとジニウス。一つ頼みがある」
「なんでしょう?」
「ある荷物をウェールズの里にもっていってほしい。危険かつ重要な物だ」
「荷物…?」
「お主の父なら分かってくれるはずだ。今はそれ以上のことは言えない」
神妙な顔のクライヴにそれ以上、問うことはできなかった。
「明朝より作戦は開始する。2人とも…頼んだぞ」