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1章9話 開始

作戦の朝、例年にない大雨が降り続けた。

「フィオナ、早くしろ」

「兄さん、待って…!」

レインとフィオナは、複数の家臣とともにウェールズの里へと向かった。

ジニウスはクライヴ直々の任務を遂行するため城に残っていた。

「こいつがクライヴ様の言っていた荷物か?」

「あ~だめですよエントさん! 誰にも見せるなって言われてるんですから」

「怪しいのう…。も、もしや破魔石じゃ…?」

「はま…? なんです、それ?」

「<グラン・パワード>だけがもつ魔晶石のことじゃよ。なんでもその石は無限に近い魔力を持ち、どんな凡人でも最高峰の魔法を操れるようになるとか…」

それを聞いた他の運び手が反応する。

「おれも古い本で読んだことあるな。並の人間なら近づいただけで卒倒するとか…」

「…おめぇ、それが本当だったら俺らとっくに倒れてるだろ?」

「あれ、嘘だったのか…信じてたのによぉ」

とりとめのない会話をしていると、アウレリアが通りかかる。

「ジニウス。まだ城に残っていたのですね」

「アウレリアこそ…とっくに城に向かったんじゃ?」

「私はここでベルフレム連合軍を城が崩壊する寸前まで足止めする役割をもらいましたから」

「そっか…大丈夫だと思うけど死なないでくれよ」

「もちろんです。まだ剣の稽古も終わってませんから――」

その時だった。

爆音と共に城壁や天守の一部が崩壊。

「もう来たのか!?」

魔晶石を使った大砲による一撃だった。

「まだ直接攻めるには距離がある。今のうちに荷物を運び出すぞ!」

荷馬車とともにジニウスたちは城を出る。


その姿をアウレリアは静かに見守っていた。

城から少し離れてなお爆音と地鳴りが周囲に鳴り響く。

それは敵が近づいている証でもあった。

「もうすぐ城が爆発するぞ…どれだけの威力かわからねぇ。一旦待機するか!」

老兵エントの助言もあり、一同は歩みを止めるのであった。


一方、その頃。

城ではアウレリアを筆頭とする足止め部隊が城内へ進行する連合軍の兵たちと応戦。

しかし、その差は圧倒的だった。

次々に仲間が討ち死にしていく。

「そろそろ時間か…もはやこれまで」

アウレリアは隠し持っていた魔晶石を一つのみこむと城の外へ身を投げる。

「……グロリアッ!!!」

魔力を込めた剣の一振りは城を分断するほどの強力な一撃であった。

自身の攻撃による爆風で吹き飛ばされるアウレリアはある異変に気づく。

「城が…爆発しない?」

本来ならばアウレリアの攻撃と同時に城が吹き飛ぶ算段であった。

空中で感覚を研ぎ澄ます彼女。

「そんなっ! 魔力の気配が消えている…誰かが運び出したのか?」

「いたぞ! 狙い撃てッ!!」

崩れ行く城。

生き残った連合軍の兵から攻撃を受ける。

「くっ…」

弓矢を剣でしのぎながらアウレリアは深い森の中へと消えていった。


「はァ…はァ…魔晶石を誰かが運び出したのだとしたら…連合軍が攻めてくる前。もしや…裏切り者が…?」

魔力を大きく消費したアウレリアの呼吸は乱れ満足に歩くことさえできなくなっていた。

「レイン…ジニウス…きを、つけ…て…」

人気のない森の中。

力尽きた彼女は雨に打たれながらひっそりと眠りについた。


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