序章 アルクス大陸史
アルクス大陸。
かつて「大賢者」と呼ばれる者が支配した広大なる大陸は、約1000年の時を経て7つの大国「グランパワード」と呼ばれる国々が互いに牽制し合う戦国の時代へと突入していた。
「グランパワード」はそれぞれ近隣の小国「パワード」に対して、領地を守る代わりに忠誠を誓わせていたが、時の流れに伴いそれまで付き従っていた大国と縁を切り別の国につく者や、どこにも属さない国々が現れるなど大陸は混沌の様相を呈し始める。
大陸暦1008年。
アルクス大陸東方一帯を支配するオーガス家は先代「ゲシン・オーガス」の代で最大版図を広げる。
大陸最強の騎馬隊と屈強な兵士を指揮し戦線を拡大し続け、破竹の勢いで勝ち続けて名声をほしいままにしていた。
一時は「アルクス大陸の天下にもっとも近い男」とも呼ばれ、大陸中央にある大都アルスクウェアで官位を与えられる。
オーガス家の大陸統一は近いと誰しもが思っていた。
しかし、栄華は長くは続くことはなかった。
最大版図となってわずか2年後、ゲシンは志半ばで病に倒れそのまま病死。
家督は息子「クライヴ・オーガス」へと継がれた。
クライヴは亡き父の意思を継ぎ戦線を拡大しようとするも息を吹き返した北のグランパワード「ダルムード家」と、西南に位置するグランパワード「オルブライト家」に連敗することで勢いが削がれる。
偉大なる父をもつ息子。
その重圧を跳ね返すことのできないクライヴは、家臣との信頼を関係を築くことができず日に日に孤立していった。
「アルクスの獣」と呼ばれたオーガス家の面影はもはやそこにはなかった。
オーガス家の隆盛が終わるその瞬間を虎視眈々と狙っていた者もいる。
大陸中央部分を支配し、オーガス家に変わり大陸で最も勢いのある大国ベルフレム家が当主「レギュラ・ベルフレム」である。
それまでは数ある小国の1つでしかなかったベルフレム家であったが、レギュラが当主となって以降、経済力を増しグランパワードが1つイングリス家も無視できない存在感を放つようになる。
大陸暦1000年、レギュラを討つべく数万の兵とともに進軍してきたイングリス家当主モーリスをわずか数百の兵で奇襲。
これを打ち破り大陸全土にその名を知らしめるとともにイングリス家の所領を支配。
7大国グランパワードの仲間入りを果たしたのであった。
それからレギュラ・ベルフレムは自身の野望であるアルクス大陸の統一を達成するため力を蓄え始めるのであった。
「機は熟した」
大陸暦1011年、6の月。
レギュラの号令一下、数万の軍勢がオーガス家の領土を狙い進軍を始める。
ゲシンの死からわずか数年、アルクスの大地に名を馳せたオーガス家の滅亡がにわかに囁かれはじめる。