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この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
エピローグ
81/81

2056年

========

-2056年4月21日 10:45(協定世界時(UCT)+1)-


『そこでパパは、ママを狙う悪人どもを千切っては投げ、投げては千切り…』


――またパパがあの話してる

幼い頃から何度も聞かされた話だ。

でもアレは嘘に違いない。そうクロエは思う。

もうあんな嘘には騙されない。何と言っても今年中には10歳になる。そしたらもう、大人なのだから。


「クロエも近くで聞いてきたら?大好きなお話でしょ」

ママは分かってない。もう私はあんな嘘に騙される程、幼くないんだから。

「ママはどうしてパパと結婚したの?」

そう言うと、ママは少しビックリしたように目を見開いて、花が咲くように微笑んだ。

「んーそうね。決定的だったのは、私を信じてくれたことかな」


ママはパパにはもったいない。

美人だしスタイルも頭も良いし強いし。

パパはひょろ長くて目も細いし、肌も黄色い。そして腕相撲では私に負ける程、弱っちい。

幼い頃から”パパに似てる”と言われるのが残念だった。自分の一重の目が嫌い。自分の色の薄い肌が嫌い。ママに似たかったのに。


一方、パパの話を笑いながら聞き入ってる弟は、まだまだ子供だ。

なんてったって、まだ5歳なんだから。

なのに弟はママに似てる。悔しい。


「ママは、他に好きな人はいなかったの?」

「ママ、あまり男の人と縁が無かったのよ」

――嘘だ


前に、ママとパパの部屋を探検した時に見たことがある。

ママが男の人と写ってる写真。

私の手が届かない高い棚の上にあったけど、よじ登って見つけた古い携帯ディスプレイ(ノート)に有った。

凄く嬉しそうに笑ってるママをハグしてる男の人。


黒い肌で、とってもハンサムで、スタイルもスーパーヒーローみたい。

その人は、その1枚にしか写ってなかった。

名前も消されてて、判らなかった。

気になって、ノートの削除済みファイルを解析したら、その人の写真がいっぱい出てきた。


パパと一緒に写ってる写真も有った。

ママと一緒に写ってる写真も有った。

ママやパパが”所長”って呼んでるおじさんと一緒の写真も、サイム博士と一緒の写真も有った。

そして、お猿さんと一緒に写ってる写真も見つけた。


サイム博士とお猿さんは、月から人類を支配してるって色んな本に書いてある。

学校の先生もそう言ってた。

でもママはそう思ってないみたい。だから私の判断は、まだ保留中。

パパもそう思ってないみたいだけど、それはどうでも良い。

写真の中のサイム博士もお猿さんも、とっても優しい顔していた。


削除された写真を見た事は、誰にも言ってない。

一緒に探検してたレルンが、”この件はくれぐれもご内密に”って言ったから。


レルンはウチの可愛いペット。

フワフワなネズミさん。

彼女が話が出来るってのは、私だけの秘密。

パパにも、ママにだって内緒。


とにかく、ママにはパパよりあのハンサムさんの方がお似合いだと思う。

そうだったら、私の肌ももっと黒くて、目も二重でぱっちりしてた筈なのに。

とにかく、ママは最高でパパは中の下くらい。


「そろそろ降りる支度よ」

ママがパパに言う

電車がそろそろミュアンダに着くみたい。


========

-2056年4月21日 12:35(UTC+1)-


レストランでお昼ご飯を食べた後、みんなで海に行った。

パパは海に来る度に砂浜に座って、ボーっと遠くを見る。

雨の時も傘をさして、遠くを見てる。

あれ?

昨年海に来た日も4/21だった。

一昨年もそうじゃなかったっけ?


パパに何してるか聞きに行こうとしたら、ママに止められた。

「パパをそっとしといてあげて」

「どうして?」

私はママに聞いてみた。

どうして毎年、この日に海に来るのか。

どうして毎年パパは、北西の方を眺めてるのか。

どうしてパパは、ちょっと悲しそうな顔をしてるのか。


「それは、パパの秘密」

ママはそう言う。

「ママはその秘密を知ってるけど、知らないフリしてるの」

どうして?

「それは、パパが秘密にしときたい事だから」

それってまさか、浮気!?


パパはこんな美人なママがいるのに、すぐ他の女の人に目を取られる。

もしママを泣かしたら私が承知しない。そう思ってるけど、ママが平気そうだから許してあげてる。

「浮気なんかじゃないわ」


もっと――

悲しい事だってママは言ってた。

寂しそうな顔で。

「あ…」

弟が、とことこパパの方に歩いて行く。

引き止めようとする私をママが抑えた。


「良いの。良いのよ」

弟がパパの隣に座ると、パパが振り向いて弟を名前を呼んで――

パパは泣いていた。


「さて、アイスでも食べに行こうか」

ママに手を引かれて、2人で波打ち際から離れる。

ふと思い出した。

弟の名前をつけるとき、ママとパパが喧嘩してた事。

ママが言った名前にパパは猛反対してた。

いつもの通り、結局ママが押し切ったけど、あんなパパを見たのはあの時だけ。


ママに手を引かれてカフェに入るとき振り向くと、パパはもう全然泣いてなくて、弟と追いかけっこしてた。

甲高い声で弟が笑う。


弟の――デジレ(・・・)が。

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