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この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
第十章 ワシントン流星雨の日
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櫻井、王女様に呼び出される

コンゴ政府AI(B・B)は、コンゴ国内の全情報を司っていた。

だが、国外への侵入(クラック)は出来なかった。

それはB・B全体を包む入出力処理(ラッパークラス)により禁じられていた。

ところで、何事にも例外はある。


入出力処理を作った所長は、技術者として当然のように隠しコマンド(バックドア)を仕込んでいた。

B・Bの枷を外すバックドア。

そのドアを開ける鍵は、管理者(root)による全情報削除(rm -rf /*)。そしてパスワード”ゴルディアスの(ko katna)結目を(le jgena)切れ(.gorudias.)


念には念を入れ、サカニア総研内の過半数の人類(ホモ・サピエンス)が叩かねば枷を解けないよう設定していた。

叩く者が脅迫されていないか、タグによる血圧、血中ホルモンの確認も行うようにした。

理由も教えて貰えずに叩いた櫻井(クズ)は居たが、そこは関係ナシ。


========

-2046年7月5日 12:10(日本標準時(JST))-


政友の様々な質問全てにB・Bは答え、その答えは彼を納得させた。

そして遂に政友は考えるのをやめた、いや納得した。


そもそも東京(ここ)は、核爆弾で破壊された筈だった。

政友は死んだ筈だった。

どっこい生きてる。

東京も全然壊れていない。電気は通じてないが。

東京壊滅がB・Bの創作(ウソッパチ)であることは、間違いナイ。


「で、私に何をさせたい?」

電算機(B・B)ではなく人間(サクライ)に聴く辺りが、保守的な老人である。


「人類が支配されたことを、社会の上層部に納得させて頂きたい」

「上層部は核シェルタに篭もり、連絡が取れん」

「いや、そっちは面倒なのでそのままで」

櫻井、結構ヒドイ事を言う。

核シェルタ内は、あまり住み心地が良いとは言えないのだ。


「今、地上に居る上層部だけで結構」

但し――

「世界中の全社会上層部を納得させて頂きたい」

日本だけでなく、滅私でもなく、地上全ての社会を。

社会全てを降伏させろ。そう櫻井は言う。


「B・Bがお役に立つでしょう」

軽く言う櫻井だが、かなりの無理難題である。

社会が降伏する条件は、唯1つ。戦争に負けることだ。

銃も、爆薬もナシに、それを行えというのは無理というものだ。


但し、事実と現実は異なる。

事実としては、銃も弾薬も無い。

だが現実には無限に存在しうる。

全ての情報を管制できるB・Bならば、それは可能だ。


第三次世界大戦は、B・Bが創り出した現実の中でのみ起き、それを全ての社会が認めたのだから。


政友は溜息をつく。

「大仕事だ。何年掛かるか判らん」

「ですが、各国の上層部に食い込むチャンスでもあります」

今まで無言だった藤田が口を挟む。


「B・Bだけじゃなく、此奴(フジタ)も好きに使って構いません」

「おいっ!」

「そうだな――」

政友は苦笑いをし


「最近、気難しい政人(マサト)の説得を任せるか」

と言った。


マサトって誰?

そういう目で藤田を見上げる櫻井。

「馬鹿、このクズ。何度も教えただろう」

藤田の声は、少しだけ湿っぽかった。


「俺の息子だ」


========

-2046年7月5日 12:10(日本標準時(JST))-


政友はSPに手を伸ばし、携帯電話を受け取る。

『何か御用でしょうか?』

通話スイッチを押すまでもなく、B・Bが応える。

「本来の連絡先に繋げてくれ」

『お待ちください』


「はい。その通りです。はい」

背筋を伸ばし、敬語を使い、電話なのに腰を折る政友を、藤田が驚きの目で見る。

「いや、電話なのにお辞儀をする人は結構いるだろ」

そんな櫻井の言葉にも上の空だ。


——相手は、一体誰だ?

この元舅が敬語を使う場面など、想像も出来なかった藤田である。

「はい、今から伺わせて頂きます」

丁寧な口調で電話を切り、SPに渡す。


「一緒に来て貰おう」

突然言われた櫻井は、目を白黒している。

そのままSPを引き連れ、部屋を出る政友。

慌てて櫻井は立ち上がる。


========

「えーと、どこに行くんですか?」

「近くだ」

高級自動車(センチュリー)の後部座席には、政友と櫻井のみ。

藤田は息子に会いに行った。逃げるように。


高級自動車は、高層ビルの駐車場を出て西へ向かう。

「歩いてだって行ける距離だ」

政友の言葉通り、高級自動車は数分で速度を落とし、目的地の門に着く。

都心のド真ン中でありながら、緑が多い。

「ちょ、ここ…ここは」


「君は私に、全世界への交渉を依頼した」

だが——と政友は首を横に振る。

「買いかぶりだ。私にそんな力は無い」

だから——

「その力を持つ御方に君を会わせる」


幾つもの門を、確認の目を過ぎ、高級自動車は進む。

「なに、月の女王に仕えている君にとっては、何程のことではあるまい」

櫻井の顔色は、既に血の気がナイ。

「我が国の王女が、君との面会をお望みだ」


「そ、その方は——」

御結婚されて民間人になったハズでは…と言おうとする櫻井を遮り、

「だから、核シェルターに御入りになっておらん」


高級自動車が停止すると、外からドアが開けられ、櫻井は車から降ろされる。

四方八方から、櫻井の一挙手一投足に視線が配られる。

変な動きをしようものなら、一瞬で首が胴と生き別れになりそうな視線である。


「1つ、助言をしておこう」

身動きも出来ぬ櫻井に、車から降り立った政友が言う。

「我が国の王女は、決して無慈悲では無い——が、極めて有能な御方だ」

ゆめ夢、月の女王の様に与し易いと思うなかれ。


その後の櫻井の面会については——その件はくれぐれもご内密に。

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