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この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
第十章 ワシントン流星雨の日
71/81

はじめまして。ポセイドンの息子です

========

-2046年4月27日 10:30(UTC(協定世界時)0)-


ポルトガル領、デゼルタス諸島。

北緯32°西経16°、大西洋に浮かぶ島である。


“デゼルタ”はポルトガル語で無人島。

デゼルタスは複数系なので、言うなれば無人島ズ。

世界で最も由緒正しいこの無人諸島、現在はアルジャーノンEAの所有地になっている。

希少動物保護のため監視員が常駐しており、実際は無人島ではない。


「本日より新たに監視員に加わった櫻井君だ」

「やんややんや」

監視長の大岩岬氏は、50代と思われる白髪混じりの髭に覆われた元日本人である。

拍手で櫻井を迎えた副監視長の大岩梓さんは、かなり白くなった髪の、やはり50代と思われる女性。岬氏の妻である。

ちなみにこの島に居る人類は、櫻井を入れて3名。

櫻井、唯一のヒラ監視員である。


「仕事は厳しいわよ、櫻井君」

キラリと目を光らせる梓さん。

「まずメルがこのように寝転がったら――」

櫻井の目の前のテーブルには、白い猫が腹を見せている。

「撫でなさい。撫で続けなさい」

へ?


「そう。なかなか良い手つきよ」

重々しく頷く梓さん。

「メルはここの女王様だからね」

隣で頷く岬氏。

櫻井に撫でられてる猫は、周りをチョロチョロ動き回るSマウスを気にする風でもなく、大欠伸をした。


「そしてポチがオモチャをもってきたら――」

岬氏の隣に大型犬が、木で作られた骨状のオモチャを咥えて来る。

足下に落とされた木の骨を岬氏は拾うとドアの外に出て。

「ほうれ、取ってこーい!」

思いっきり投げられた骨を追って走る大型犬(ポチ)


「とりあえず、その2つが最も大事な仕事よ」

宣言する梓さん。

『yLerun:暫くあっちこちで大騒ぎが起きるから、ここ(デゼルタス)で隠れてなさい』

第13世代のSマウス、レルンが有機EL眼鏡(グラス)を通じて話に加わる。

まだ1才だというのに、30才の櫻井に上から目線。

ちなみに彼女は梓さんにモフられ、ご満悦である。


「あのー、お二人はなぜこんな場所に?」

地球の裏側で、まさか日本語で話し合うと思ってなかった櫻井である。

「私がリストラされちゃってねー」

梓さん、櫻井も名前を知ってる貿易会社の社員だったらしい。

若い頃からアフリカや南米を中心に単身活躍し、役員にまで出世したが、社内政治の都合でリストラ。

ちなみに岬氏は元部下で、結婚後は専業主夫。


「暫くプータローしてたんだけどさ、4年くらい前にアルジャーノンEAからオファーが来て」

一本釣りである。

「ここは動物がいっぱいだしねー。アタシも子供の頃、動物王国とか憧れちゃったクチだから」

レルンのモフり具合にも年季が入ってる。


「こっから、”息子”用の資材やら重機やらを調整してたんよ」

「はぁ…お子さんは日本に?」

「へ?」

話が噛み合ってない。


『yLerun:サクライには”息子”の事は伝えてなかったのよ』

「え?ひょっとしてご内密だったん?」

『yLerun:今はもう大丈夫。でも、彼にも驚いて貰おうと思って』

「ああ、なーる」

“ほど”を省略した梓さんは、ちらと腕時計を見るとTVをつける。


「いッつぁ、しょーたいむ!」

大げさな身振りで、TVを観るよう櫻井を促した。


========

-2046年4月27日 11:00(UTC0)-


『紳士淑女諸君』

TVが放送途中にいきなり切り替わり、サイムが画面に映る。

『番組の途中だったろうが、少々時間をいただきたい』

大学(トリニティ・カレッジ)で講義でもするように堂々たる雰囲気だが、サイムは妙な服を着ていた。


『今地球は、3つの複合社会が互いに戦おうとしている』

イングソック、ネオ=ボルシェヴィキズム、滅私の3社会だ。

『3社会の軍事力はほぼ同じ。そして仮にその内の2つが手を組んでも残りの1つを滅ぼすのは難しい。絶妙なバランスだ』

TV画面に、それぞれの所有する兵器、兵士、工業力がグラフで表示される。


『望むなら、永遠に戦争を続けることができる。が、1つ問題がある』

ニヤリ。

腹に一物ある感じで嗤うサイム。

『4番目の社会がここ(・・)にある』


サイムは透明なヘルメットを被り、金属製のドアを開ける。

否、ドアではない。

エアロックだ。

そしてサイムが着ているのは宇宙服だ。


『各国の諸君は、我々が何処に居るか探しているのだろう』

コンゴ中を掘り返す勢いで探しまくっている。

『我々が居るのは、ここだ』

TVが、荒涼とした風景を映した。


その風景に比べれば、砂漠の方が未だ生き生きした風景だろう。

その風景は、どんな場所にも似ていなかった。

だがその風景は、遠い昔にTVに映し出されたことがある。


サイムを映していたカメラが地面を離れ、高く、とても高く舞い上がる。

カメラの視点は豆粒のようになったサイムから離れ、荒涼とした地平線と星空、そして宇宙に浮かぶ地球(・・)を映し出す。


『我々はここだ』

月、専門家が見ればマリウス丘と判る場所からサイムが告げた。


========

-2046年4月27日 11:10(UTC0)-


『君たちが放ったICBMなんだがね』

カメラが地球の映像を映し出したまま、サイムの声が響く。

『実は1発も到達しなかった』


画面が変わり、ブンバ空港――ICBMの落下地点の録画が映る。

高速で近づくICBMの位置が表示(スーパインポーズ)される。

その時、ブンバ空港の隅から砲身が持ち上がった。

『我々もレールガンを持ってる』

超音速で発射される弾頭の音が響く。

『この距離なら100発100中だ』


画面が遠景に切り替わる。

と、膨大な光が溢れ、巨大なキノコ雲が立ち上る。

映像は雲の上部をズームアップする、とそこに巨大な何かが上昇していた。

その下側から、再び膨大な光が溢れる。

『核爆発を推進力とする宇宙船だ。我々は”ポセイドンの息子”と呼んでいる』


========

1950年代、米国で恒星間宇宙船の開発計画があった。

核パルス推進船――後方で核爆弾を起爆させ、その反動で飛ぶ宇宙船だ。


既存技術だけを使い、桁違いの質量比推力を持つこの方法ならば、1回のミッションで月に恒久基地を送ることができる。基地ごと打ち上げることが出来るのだ。

その計画はオライオン計画――海神ポセイドンの息子、狩人オリオンの名を冠した計画だった。


========

『かくして我々は(ここ)に居る。月のマリウス丘の地下空洞、そこに住んでいる』

さて――


『我々は人類の敵、らしいな』

42発の核弾頭で絶滅した筈の敵。

『我々という脅威は無くなり、君たちは2度と恐れることは無かった筈だ』

だが――


『我々はここに居る。君たちの手の届く処に、少なくとも1度は手が届いた場所に居る』

ちなみに――

『君らが開発した対”D”ウイルスは、攻撃対象となる設計された人類(デザイナチャイルド)のNo.5が創った、アンチ”対D”ウイルスで無害化した』

だが――

アンチ・ウイルスに頼る必要も無い、とサイムが言う。


そしてサイムは、世界各国の施政者にとって絶対の禁句を口にする。

『”D”の遺伝子を持つ者は、ここに居る』

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