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この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
第六章 第二次アフリカ大戦、勃発
43/81

国際社会、奥の手を出す

-2045年12月31日 00:05-


"こちら偉大なる(グレート・)達人(アーティスト)。t+5min 予定より送れたが位置についた"

"シークエンスに入る。パスコードはDLAI296738AZ"

"パスコードを確認する。一致を確認"

"キー挿入。3秒前から始める。3..2..1..今"


========


航空機は戦争を変えた。戦略の定石を変えた。

現代の戦争は、最初に制空権を取る。

制空権を取る前に地上部隊を出せば、弾丸が届かぬ高所から一方的に爆撃され、甚大な被害を受ける。


対コンゴ戦で国際社会は、ついに制空権を取れなかった。

この場合、打てる手は限られる。


========

-2045年12月31日 08:10-


『米国がICBMの発射体制に入った』

朝食時、前に座った所長の言葉に櫻井が目を剥く。


『一旦軌道に乗れば、後は位置エネルギィと運動エネルギィが仕事をする』

所長の視線がアトケを捉える。

『コンゴ領空内で何をしても、遅すぎる』


アトケが中心となり構築した電子・情報防衛網は、コンゴ領空内でのみ有効だ。

コンゴ外には可能な限り手を出さない。それが彼女のポリシーらしい。

だが、それではICBMは防げない。


ICBMは大砲と同じだ。推進装置は燃焼が終われば切り離され、弾頭だけが飛んでいく。

落下点を変えることは、弾頭自体にも不可能だ。


『核では、無いでしょうね』

アトケの隣に座るアサラトが手を動かす。

『なぜ、そう言える?』

近くにいたパンロゴが話に加わる。


『国際社会が核の使用を躊躇う理由は、報復攻撃よ』

アサラトは瞳をくるりと回し

『目には目を』

核には核を。


「コンゴは、核兵器を持っているのか?」

櫻井の問いに、2種類の応えが返る。

『ええ』『いや』


"いや"と返したパンロゴが、"ええ"と応えたアサラトに目を剥く。

『待て、そんな物はコンゴに無い』

もし有れば放射線で判る。そう核物理学者のパンロゴが言う。


『国内のセンサで、それほどの放射線を検出したことは…』

話している途中で、パンロゴの手が止まる。

彼の顔色が、真っ青になる。


見開かれた目が、アトケの隣に座るサイムに向けられる。


『だから--未臨界炉なのか?』

サイムは一瞬目を閉じ、ため息をつく。

『そうだ。ヒトには色々事情があるのだよ』

次の瞬間、テーブル上の朝食を蹴散らし、パンロゴがサイムに掴みかかった。


========

-2045年12月31日 08:30-


オルトゥとイナンガがパンロゴをサイムから引き剥がし、抑え込んだ。


「どういうことだ」

サイムとパンロゴの間に立つ櫻井が言う。

『加速器駆動形未臨界炉の燃料は、通常の核のゴミじゃない』

抑え込まれたパンロゴが、手だけを動かす。


『ロシアから処理を依頼された核弾頭だ』

パンロゴの目からは涙が溢れ、口からは嗚咽が漏れる。

『核兵器を得るために、あんなものを造らせたのか!』


『サイム、貴方は違うと思ってた!核力を兵器に転用するような、あんなものを残しておくヒトじゃないと--』

『残っては、いないわ』

アトケがパンロゴの前に立つ。


『入手した弾頭は、すべて起爆装置を抜いてある』

アサラトがその横に立つ。

『ただし…』

国際社会は、そうは思わない。


パンロゴの体から力が抜けた。ついでに顎も落ちた。

オルトゥとイナンガが、彼から離れる。


『騙していたのは悪かった』

サイムの謝罪に頭を抱えるパンロゴ。

アトケが彼の肩を叩き、一緒に食堂を出ていく。


『せやけど』

デジレが沈黙を破る。

『通常弾かて、相当な威力あるで』

全ての爆弾の父(АВБПМ)なら、出力は44kt。広島型原爆(リトルボーイ)の1/340に過ぎないが、周囲300mが焼き払われる。


『そう、落ちれば大変なことになったでしょうね』

「待った!」

アサラトの言葉に、櫻井がツッコむ。


「大変なことになっ()、そう言ったな」

しまった、という表情を浮かべるアサラト。

『実は…』

昨夜、英国からICBMが発射されていた。


『ICBMが大気圏を出た直後、人工衛星がγ(ガンマ)線レーザで撃墜したわ』

櫻井の視線は、ムンクの"叫び"みたいになっている所長に釘付けである。


『γ線レーザて、よぉそないな出力だせたなあ』

目を丸くしたデジレが呟く。

ミューオン触媒(サイム型)融合炉を積んでるの』

ちょっと待った!


思わず身を乗り出す櫻井。

「原子炉を軌道上に上げていいのか!?」

『禁止されてるのは、大量破壊兵器だけよ』

でもでも!


「もし落っこって来たら?」

放射性物質(アレ)散逸(ナニ)しちゃわない?

『昔から、原子炉を積んだ人工衛星は多いわよ』

あっさり言うジュリア。


『コスモス954が、カナダに墜落したこともある』

とサイム。

その時は、ウラン235が50kgばらまかれた。


『コスモス1402もやね』

とデジレ。

『トランジット5BN1/2もですね』

とムベト。

「どうなったんだ?」

と気が気じゃない櫻井。


『コスモス954の場合は、ロシアが3億円ほど賠償金を払いました』

「いやそうでなく」

除染とか。


『除染はしたものの、回収率は1%にも満たなかったとか』

『コスモス1402は大西洋に落ちたから、どもならんかった』

『トランジットは全世界でプルトニウム238が観測された』

ムベト、デジレ、サイムが無情に応える。


ぽんぽん。

アサラトが櫻井の肩を叩く。

『だからね、今更なのよ』


『ところで』

ジュリアの声に、皆が振り返る。

『所長、こんななっちゃってるままだけど、どうしよう?』

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