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この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
第六章 第二次アフリカ大戦、勃発
42/81

国際社会は、決して諦めない

========

-2045年12月24日 07:45-


『B-52が離陸するわ』


その声に、寝不足と二日酔いを抱えた第1世代が顔を上げた。

昨夜、離陸直前にエンジントラブルを起こし、発進予定が1時間毎に遅れていたB-52は、敵国民が見守る中、ようやく空に身を浮かべた。

ちなみに、この飛行は軍事機密である。

コンゴ以外では。


『ようやく飛んだか』

『長かった。俺は疲れたよ』

『ちょっと一眠りするわ』

まるで自軍の爆撃機みたいな物言いだが、明らかに敵軍機である。


なお、爆撃については誰も心配していない。

誘導管制を乗っ取られ、コンゴ軍の空港に着陸されられた各国の最新鋭戦闘機。それらは今、コンゴ製のAIを搭載してお待ちかね。

ちなみに、AIを開発したのはパンロゴ。

普段の研究より熱心に取り組んでいた。


========

-2045年12月24日 15:45-


これ(B-52)、どこへ行くのかな?』

食堂にいた誰かが呟いた。


『セントヘレナかな?』

『アセンション島かもしれんぞ』

どちらも大西洋上の小島である。

コンゴからは遠く離れている。


セネガル辺りまでは海岸沿いを順調に飛行していたB-52だが、その後、妙な方向に彷徨いだした。


『燃料は保つのかな?』

のんきに言う敵国民である。

一方、B-52の機内は、それどころじゃなかった。


========


「ここはどこだ!」

「GPSによれば、ナイジェリアです!」

「そんなわけあるか!いつナイジェリアは海の底に沈んだんだ!!」

それはナイジェリアではない。アトランティスである。


GPSが示す現在位置は、確かにナイジェリア。

だが、眼下に広がるのは海。一面の大海原。

そして方位磁針によれば、どう見ても機は南に進んでいる。

このまま行けば、南極である。

なお、その前に燃料が尽きる。


「GPSはあてにならん!方位磁針に従い、東へ進路を取れ」

現在位置は判らないものの、大西洋である以上、東にはアフリカ大陸がある。

残燃料は心もとない。

もしこのまま燃料が尽きたら、命はない。

全乗組員の視線が、ベテラン航法士を向く。


視線を集めた航法士だが、彼は今、それどころでは無かった。

時計と方位磁針、そして太陽の位置から現在位置を割り出そうと必死である。

天測航法と呼ばれるこの位置判定方法は、衛星測位システム(GPS)が整備された現在はまず使われない。


「南緯8度、西経16度」

計算と検算を済ませた航法士が、重々しく告げる。

「確かか?」

思わず聞く機長に深くうなづく航法士。


六分儀も無いこの状態で、確かなワケねーだろ!

とは、航法士の心の声である。

だが百戦錬磨のベテランであるこの男は、それを外に出さない。

そんなことを言っても、仕方がないからだ。


乗組員の無用な動揺は避ける。

航法士と長い付き合いの機長だけが、彼の思いを瞳の奥に読み取る。

機長は、微かに目礼し再び前を見据える。

機内は、再び秩序に満たされた。


「燃料がアフリカまで保ちません!」

次の瞬間、若い航空機関士がブチコワシにした。


========

-2045年12月24日 16:25-


『B-52は55,000ftまで上昇。搭載した爆弾はすべて海に投棄した模様』

パンロゴの報告にうなづくアサラト。


残り少ない燃料で飛ぶためには、空気抵抗の少ない上空に昇る必要がある。

そして上昇するためには、少しでも重量を軽くしなくてはならない。

機長、苦渋の決断である。


『じゃGPSを戻すわ』

と端末に向かうアトケ。


GPSは、人工衛星からの電波から現在位置を特定している。

だから人工衛星に侵入し電波発信時刻を操作すれば、現在位置を誤認させることができる。

まんまと誤認したB-52と乗組員は、大西洋ひとりぼっちである。


ちなみに、狂わせたのは軍用のP信号だけ。

通常機器で使っているC/A信号は操作しなかったので、自動運転車などに問題は無い。


『GPSはちょっと待って』

とアサラト。

"?"マークを浮かべるアトケとパンロゴ。


『B-52の航続距離は?』

すかさず応えるパンロゴ。

『7,730ノーティカルマイル。約1.4万km』


『その機を、ブンバ空港に降ろして』

コンゴ北部、モンガラ州にある空港である。

『任せろ!』

パンロゴが喜色満面で応える。


大西洋湾岸各国のシステムに侵入。B-52を認識できないよう、細工する。

これで、B-52は他国の誘導も通信も受けることができず、コンゴの誘導に従う他はない。

後はブンバ空港の管制AIに、B-52の受入準備を行うようメールするだけである。


パンロゴは端末を操作しながら、嬉々として話を続ける。

『君にも、あの機の魅力が分かったんだね!』


========


『ブンバに?』

アトケがパンロゴに見えぬよう、手を動かす。

微かにうなづくアサラト。


『"ポセイドンの息子"の処に?』

なぜ、と目で訴えるアトケへアサラトは応える。

『多分、必要になる。サクライたちのために』


『人類は、侮れない』

たとえ知能はSボノボに及ばなくとも。

たとえ技術格差があったとしても。


アサラトは知っていた。

人類が受けてきた淘汰圧を。

その文明と社会が、ひたすら一つの方向に進化して来たことを。


戦争に勝利すること。


人類の文明と社会は、数万年に渡りその方向に進化して来た。

別の方向に進化した社会は、全て滅ぼされた。


人類より強い生物は多い。

人類より賢い動物も現れた。

だが、人類と戦争し勝利できる生物は、地球上にいない。


--保って、後数ヶ月でしょうね


アサラトは冷静に分析する。

数ヶ月後、コンゴは滅ぼされる。

そして人類が、地球上で最も知能の高い生物になる。

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