表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
第六章 第二次アフリカ大戦、勃発
40/81

国際社会、諦めずにもっと頑張る

『まさか英国が"錦蛇分隊(パイソン)"放映を知らなかったとはなー』

監督の第2世代、サバールが呟く。

『どーりでPV数が少ないはずだよなー』


コンゴと開戦した際、国際社会が最も恐れたのは、改竄した"現実"を公表されることだ。

このため、豊富省など外交を司る省から厳重な要請があった。

「コンゴからの情報は、決して国内に流出させるな」


このような要請があった場合、選択肢は3つある。

1.ハイ

2.YES

3.喜んで!

の3つだ。


選択肢は3つだが、この実現はなかなか難しい。

国際通信ケーブルだけなら、基地局でブロックすることができる。だが、2045年現在は、人工衛星からの一斉配信(ブロードバンド)が存在する。

個人端末で直接受信する情報をどう防ぐか、技術者は頭を悩ませた。


結果、コンゴのIPアドレスを持つ通信を、全てブロックした。

基地局だけではなく、個人端末も強制的にバージョンアップさせ、コンゴからの情報流出を封鎖した。

その結果、各国にコンゴからの情報流出は防がれた。

ついでに、真理省などの各国諜報機関も、コンゴからの情報が受け取れなくなった。


だから、コンゴでは大人気のドラマ"錦蛇分隊(パイソン)"のPV数は、さっぱりである。

そして、コンゴでは有名人になってる錦蛇分隊(パイソンズ)を、英国が秘密諜報員として派遣しちゃったのだ。


コンゴIPアドレスをブロックした影響は、他にもあった。

自動翻訳サービス(トランス先生)が、コンゴIPで提供されていた。

結果、各国の意思疎通ができなくなり、国連軍が機能不全。


現在コンゴへの侵略は、各国の軍が個別に行っている。


========

-2045年12月1日 15:10-


午後のお茶の時間。

食堂の壁には、コンゴに向かって飛ぶ爆撃機が映し出されている。

元ネタは、静止衛星からのリアルタイム映像である。


『この機体はノースロップ・グラマン社製、B-22Aドリトル。2039年就役の最新鋭爆撃機だ』

飛行機ファンのパンロゴが、なぜか自慢げに説明する。

『一機の価格は約10億ドル。"同重量の金より高い"と言われたB-2スピリットを上回る』


なぜ、そんなに高くなったのか。

『B-21レイダーが開発中止…というか挫折した後、基本設計からやり直したのが、この機だ』

2機分の開発費が積まれてるワケである。


『雲形定規みたいな形だな』

と所長が言う。

雲形定規ってなんだ?

そんな疑問が櫻井の頭に浮かぶが、検索する気にもなれない。


『ロココ調ね』

とジュリア。

ロココ調ってどんなのだっけ?

そんな疑問が櫻井の頭に浮かぶ。装飾過剰であることはマチガイない。


目の前に映っている機体は、イボだらけのクラゲのような形をしている。

しかも、そのイボが機体の表面を動き回る。ありていに言って気持ち悪い。

「よくこんなモノが空を飛べるな」


『そこだ!』

おおいばりでパンロゴが言う。

『ステルス性を高め、かつ空気抵抗を抑えるるための形状だが、空力的には非常に制御が難しい』


『この機が飛べるのは、航空力学の奇跡と言って良い!』

鼻息を荒くするパンロゴだが、別に開発に携わってるワケではない。

パンロゴによれば、機体表面のイボが方向舵(ラダー)昇降舵(エレベータ)補助翼(エルロン)の役割を果たしているらしい。

そのイボは機体を安定させるため、止まること無く動き続けている。


『その奇跡的な機体が、なぜ簡単に見つかっちゃってるの?』

ジュリアが当然の疑問を口にする。

パンロゴが、パタリと止まる。

『はてな?』


『米空軍のシステムに侵入して、飛行計画を見てるのよ』

アトケが助け舟を出す。

『人工衛星に乗せたAIが可視光で監視してるし』

アサラトが補足する。


せっかくのステルス性が、役立たずである。

航空力学の無駄な奇跡である。

その奇跡も、コンゴ国境を超えると役に立たなくなる。

制御システムを開発したのが、アルジャーノンEAだからだ。


滑らかに動いていたイボが止まり、機体が急にバランスを崩す。

そのままフラフラと高度を下げていき、南スーダン国境近くの高原に不時着。

喜んだのはパンロゴである。


『これで、コクピット内部が見れる!』

そこは、厳重なセキュリティに守られ、見ることができなかったらしい。

だが、その喜びも長くは続かなかった。


機体から乗組員が脱出して数分後、機体が爆発した。


顎が外れそうに口を開いたパンロゴに、デジレがトドメを刺す。

『そら敵国内に最新兵器を置きっぱなにするほど、アホやないやろ』


========

-2045年12月3日 10:40-


コンゴ西部、大西洋に面したボーマという都市に、ボーマ空港がある。

その空港に巡航ミサイルが3機、着陸した。

本来は、空港を破壊するためのミサイルだが、制御を乗っ取られ燃料を使い果たした後に無事着陸した。

胴体着陸にもかかわらず、かなり滑らかな着陸であった。


科学技術を推進しているコンゴには、人類(ヒト)の中にもパンロゴのような好き者が居る。

そいつが弾頭を外された巡航ミサイルを入手し、分解を試みた。

動画サイトで実況中継しながら。

しかもIPを差替え、全世界にそのまま公開である。


「やめさせろ!」

巡航ミサイルを撃った国で、軍のエライ人が叫ぶ。

コメカミの血管をブチ切りそうな勢いである。

もちろん返事は、ハイかYESか喜んで!の3択。


でも、どうやって?

問題はそこだ。


急遽、個人端末を強制的にバージョンアップさせ、そのIPも封鎖した。

すぐに別のIPで公開が再開される。

モグラ叩きである。

しかも、1回叩くのに相当な時間がかかり、通信帯域もその間は専有状態になる。


世界の通信網がマヒした。


========

-2045年12月4日 8:20-


コンゴ政府AI(B・B)が、他国の軍事機密を公開しないよう法律を制定した』

3世代のSボノボのリーダを前に、所長が言う。


世界の商取引は、ほぼ100%電子化されている。

通信網がマヒしたということは、商取引が停止されるということだ。

飴の1つ、買うこともできない。


『このまま映像公開を続ければ、餓死者が出るだろう』

重々しく首を振る所長。

『人道的見地から、君たちにも控えてほしい』


イマイチ納得してないながら、頷くジャンベとアサラト。

1人、頷かずに目を泳がせているのは、第3世代のカヤンバ。

所長と櫻井を含めた4人の視線が、カヤンバに集まる。

櫻井の胸ポケットからはアルが顔を覗かせ、視線をカヤンバに向けている。


『その…ジュンジュンに頼まれちゃって』

TVドラマ"錦蛇分隊(パイソン)"のADをやってる娘だ。

『最終話、すごい盛り上がりなんだよ。その中に、まぁ色々と』

軍事機密がてんこ盛りらしい。


「でもアレは、コンゴ内でしか放映されてないだろ?」

軽く言う櫻井に、カヤンバの目は更に泳ぐ。


『その、アレのPVは本来こんなもんじゃないって…』

『他国に公開したのか!?』

頷くカヤンバ、頭を抱える所長。


『方式は?』

アサラトが聞く。

『P2PCDNで』

てへペロ、とカヤンバ。


説明しよう。

P2PCDNとは、ダウンロードした端末がキャッシュサーバになるという技術である。

この場合、"錦蛇分隊(パイソン)"の動画がウイルスのように増えて行く。

しかもTVドラマ。まさか軍事機密が映ってるとは思わないだろう。

気づいた時には、手遅れマチガイない。


『この件はくれぐれも内密に…』

胃に穴が空きそうな声で、所長が言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ