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この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
第五章 人類は三番目
27/81

所長、手段を選んで貰えず、頭を抱える

-2045年10月12日 21:25-


ハラムは、英国ロンドン・ヒースロー空港で降ろされた。

だが、以後の足取りが掴めなかった。


空港で、ハラムを入れた檻は顧客に引き渡された。

航空会社に登録された顧客情報は、偽物だった。

監視カメラや個人端末から再現された映像によれば、ハラムを乗せたトレーラーは21:15に空港を出発。

そのナンバープレートは、偽物だった。


『どこかで当該車両を見つけたら判るようにしたけれど…』

『牽引車の色を変えられたら、判らないでしょうね』

トレーラは広告を映し出すため側面が液晶で、牽引車はナノ粒子インクで車体の色を変えられるモデルだった。

そして、コンゴではまず見かけない完全人動(・・)運転。


『おそらく密輸業者。データは電子化されてなく、紙でしょうね』

つまり、これ以上の情報を得るためには、誰かがロンドンへ行く必要がある。


幸い、運転手の顔を撮った映像があった。

その運転手が、どこかのカメラの前に現れれば、位置を知る術はある。

運転手を捕まえ、配達先を吐かせる。

力づくででも。


第1世代を中心に、怒気が膨れ上がる。


『残念だが、君たちは駄目だ』

所長は、研究所内の9割以上を占めるSボノボを切って捨てる。

確かにロンドンに彼らが現れたら大騒ぎだ。


『サイム、君も駄目だ』

ロンドン出身で、土地勘も知り合いも多いサイムだが、世界的な有名人だ。街中に現れれば、一挙手一投足が注目の的だろう。


『私は万一の際、政府との調整を行うため、ここ(コンゴ)を離れるわけにはいかない』

残りは3名、実質2名。

ジュリアは国外に出れない。


設計された(デザイナー)人類(・チャイルド)である彼女は、"現実"には存在しない。

"戦争は平和"作戦により改変された"現実"の、僅かな瑕疵。

もし彼女が国外に出れば、即座に各国がその瑕疵を修正する。


残るは2名。

『ほな…』

デジレが立ち上がろうとする。


学会出席のため幾度も渡英したデジレは、土地勘もあり、英語にも不自由しない。

友人も居る。男の友人がいるかどうかは、定かではないが。


『待って』


デジレを止める黒い手。

アサラトだ。


彼女は、立ち上がろうとしたデジレを座らせ、歩きだす。

櫻井の前で、彼女は止まった。

『お願い、サクライ』

なぜ、なにゆえ、Why?


『最も可能性が高いのは、貴方』

英国など行ったことはない。

『できる限りのことをしたいの』

英語も話せない。

『ハラムは--』

知り合いだって居ない。


『私の子なの』

だが、それでも。

「分かった。女の子に泣いて頼まれちゃ、仕方ない」

櫻井は立ち上がり、アサラトを抱きしめる。


彼は知っている。

アサラトも知っている。

この場に居る者の内、多分アサラトと櫻井だけが知っている。

アサラトが櫻井を選んだ理由を。


先程、櫻井の有機液晶眼鏡(グラス)に映し出されていた文字。

"pSyon(サイオン):私も協力する"


謎の守護者。

ルブンバシでジュリアが姿を消した際、位置を櫻井に教えた者だ。

ジュリアのタグに、おそらくは警察官のタグにも、アクセスした者だ。


なぜアサラトが、その者の存在を知っているのか。

それを問う時間は無い。

ただ彼女は、その者に賭けたのだろう。


========


『私も行くわ』


その声に、ほぼ全員がぎょっとした。

『力づくで押し通る場面が、きっとある。なら、私の出番よ』

ジュリアが櫻井の側に立つ。


所長が立ち上がり、叫ぶ。

『君は駄目だ。コンゴ政府が出国許可を出さない!』

『それは、アトケが何とかする』

その制止をサイムが翻す。


『英国に降り立った瞬間に殺されるぞ!』

『それも、アトケが何とかする』


大柄な所長の前に小柄なサイムが立ち塞がる。

数瞬、2人の視線が交差し、

所長は頭を抱えて、椅子に座り込んだ。


『コンゴ政府は後回しで良いわ。先ずは英国システムに侵入(クラック)する』

アトケの言葉で、第2世代が一斉に端末へ向かう。


ヒースロー空港のシステム、英国の税関システムだけではない。

主要道路上のカメラ、各個人の持つ端末に備え付けられたカメラ。

ホテル、レストラン、タクシー、その他各種サービスを行う様々なシステム。

それらには、ジュリア(現実の瑕疵)を見つけた場合、しかるべき部署に通報するよう仕掛けられているはずだ。


その仕掛けを、全て無効にする。

一時的に。

痕跡を残さず。


これは、英国を電子的に侵略し、征服することだ。

宣戦布告なしに。

アトケがやろうとしていることは、不正規戦争(テロリズム)だ。

もしその行為が知られれば、英国は否--国連は、この国(コンゴ)を敵国として報復するだろう。


========


皆から少し離れた端末の1つ。

そこに座ったアサラトは、一通のメールを打つ。


To: ポセイドン

From: アサラト

Title: None

Body: "息子"の準備を急がせて


寂しげに自分の肩を抱くアサラトを、そっとジャンベが抱きしめた。

業務多忙のため、不定期投稿となります。

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