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この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
第四章 三代目は信条潰す
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サイム、クオリアを語る

-2045年10月9日(月)17:20-


『これがQX-4。私たちが使っている量子コンピュータよ』

アトケが有機EL眼鏡(グラス)に映し出したものは、コンピュータとは思えない形をしていた。

大型冷蔵庫ほどの筐体。その6面全てがトゲで覆われている。


『真空にした中心部、そこにレーザ光で光量子コンピュータを構築してるの』

『エンタングル状態にする量子も光子。約10Kqbitの計算力を持ってるわ』

「なるほどわからん」


つまり、とサイムが説明役を買って出る。

『数100Wの電力で、2の10,000乗の並列計算ができる』

「2の10,000乗って、10進数で言うと…」

『1の次に0(ゼロ)が1,000個付く。判りやすく言えば10googol(グーゴル)だ』

サイムの説明も大層判りにくい。

まぁ、膨大な計算力を持っていることだけは間違いない。


「でもそれ、何に使ってるんだ?暗号解読以外」

量子コンピュータは、実は使い勝手が悪い。

通常の計算なら、通常のコンピュータの方が速い。

量子コンピュータで通常の計算をするのは、四則計算をAIにさせるようなものだ。手間ばかりかかって、しかも速くない。

量子コンピュータの利点は、“ショアのアルゴリズム”のような特有のアルゴリズムを走らせられることにある。だが、そんな利用価値のあるアルゴリズムは、数えるほどしか見つかっていない。


『ミスタ・サクライ。彼女たちを誰だと思ってるんだ?』

「アトケとアサラト」

ドヤ顔のサイムを一刀両断にする櫻井。

だがサイムはへこたれない。

『そう、人類を超えた知性の持ち主だ』


くすぐったそうな2人の後ろで、サイムは誇らしさと寂しさがあい混ぜとなった表情を浮かべる。

『我々がノイマン型を扱うより簡単に、量子コンピュータを扱っているよ』

ヒトがPCのプログラムを作るより簡単に、Sボノボは量子コンピュータ特有のアルゴリズムを発見する。そうサイムは言う。


『君が持ってきたAIも、数十分で量子コンピュータへ移植してくれた』

「それで、あんなに早く計算結果が出たのか」

MDBのAIは処理が重く、なかなか結果が帰ってこない。だが、量子コンピュータなら話は別だ。

『あのAIは、なかなか良いプログラムだったわ。ヒトが作ったにしては、ね』

開発主任の藤田(キング・オブ・ゲス)は、今頃日本でクシャミしていることだろう。


「で、その膨大な計算力で何を調べてるんだ?」

まさか、個人的にクラウド上に上げた秘密の動画とか調べられてないだろうな。そう不安になる櫻井である。

『最近はSマウスを使った実験をしてるわ』

「アルたちを?」


アルたちSマウスには特殊なタグが埋められており、脳活動の情報を研究所に送っているらしい。

『主に樹状突起スパインと脳内ホルモンの情報よ。そこで集まった情報をAIに食べさせて数理モデルを作ってる』

「はぁ?」


『そしたら聞いて! 同一刺激を受けた異なる個体のSマウスに、同一部位の樹状突起スパイン形成が有意に認められたの!!』


完全にポカン状態の櫻井を置いて、女の子2人が抱き合い喜びを爆発させている。

『つまり、だ』

再び説明役を買って出るサイム。

『私が感じる”赤”は、君にとっても”赤”らしい』


『そう、その通り!』

『素晴らしく判りやすい説明よ! サイム』

女の子2人に褒められ、大満足なサイムである。


全然判りやすくない。ぶっちゃけなんじゃそりゃ。

その言葉は、櫻井の口から先に出ることは無かった。

次回は12/23ころ

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