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この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
第四章 三代目は信条潰す
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パンロゴ、研究所の秘密施設を教える

『せっかく来てくれたんだ。サクライに、この研究所の秘密を見学させてあげよう』

自慢げに言うパンロゴ。

『秘密?』

首を傾げるアサラト。

『秘密なんてあったかしら?』

『未臨界炉の事だろう。別に秘密でもなんでもない』

サイムが冷静に突っ込む。


「なんだ?その未臨界炉ってのは」

『よくぞ聞いてくれた!』

櫻井の質問に喜ぶパンロゴ。

『この研究所に電力と収入を与えてる自慢の一品だ』


パンロゴがキーボードを叩くと、どこかの施設が画面に映った。

パイプが絡み合うそこは、どうやら発電施設のようだ。

『この施設こそ加速器駆動型未臨界炉。世界で唯一、核廃棄物を処理できる施設だ』

胸を張って自慢するパンロゴ。


「いや、確か日本にもあったぞ。六ヶ所村に」

ケンもホロロな櫻井に憤るパンロゴ。

『アレは保管・管理してるだけ。でも管理が必要な期間はとっても長い。そんな長期間管理なんてできるわけない』


「核廃棄物っていつまで管理すれば良いんだ?」

隣に立つサイムが代わりに答える。

『例えば、ネプツニウム237の半減期は200万年強だ』

214万年、と口を出すパンロゴ。

『1/10になるには700万年ほどかかる』

どのくらい長いのか想像がつかない。


『700万年前には、私たちと貴方達、そしてゴリラの共通祖先が生きていた』

アサラトが説明する。

『つまりその動物がボノボ、チンパンジー、ヒト、そしてゴリラに分岐するくらい長い期間、今後ヒトという種が無くなるほど長い期間、管理が必要ってこと』


「そ、それは長いな」

『1/10じゃ、まだまだ危険なんだけど。ともかく、だ』

現在存在する核廃棄物は管理しきれない。遅かれ早かれ流出する。

『僕たちや人類が今後、数千年間生き延びたいと思うなら、コイツを何とかしなきゃならん』

「何とかできるのか?」

ドン、と胸を叩くパンロゴ。


『世界でもここでしかできない。だから各国が高額の料金を支払って処理を依頼して来てる』

『処理の過程で出る熱を利用して発電もしている。研究所だけじゃなく近隣の村やルブンバシで使っている電力の半分は、ここから供給している』

ほー、と感心する櫻井。


「でも、どうやって処理するんだ?」

よくぞ聞いてくれた、と喜ぶパンロゴ。

『核廃棄物は例えるなら燃えかすだ。通常の分裂炉では燃え難い原子が残ってる』

暖炉の中に燃え残った、湿った丸太のようなものだ。

そうサイムが補足する。


『でも湿った丸太だって、ふいごで大量の空気を送り込めば燃えてくれる』

分裂炉では、高速中性子が空気に当たる。

『通常の分裂炉では、高速中性子の量が足りない』

コイツは、大量の高速中性子を供給する。

とパンロゴが画面に映る施設を示す。


「どうやって、その高速中性子を供給するんだ?」

『加速器で陽子を加速して標的にぶつける。そうすれば核破砕反応で高速中性子が発生しーー』

パンロゴはちょっと視線をさまよわせる。

『最終的に半減期が数十年の原子に分解できる』

「今、ちょっと視線を逸らしたな」

ぎくり。


櫻井の指摘にうろたえるパンロゴ。

「何か問題があるんじゃないのか?」

『いや、問題は…』

『問題は君にある。ミスタ・サクライ』

サイムが助け舟を出す。


『炉に問題は無い。ただ、それを理解するには君に知識が足りない』

『ついつい専門用語でしゃべっちゃいそうになるんだ』

「いや、十分専門用語が出て来たが?」

『例えば、”出力が1/(1-keff)に比例するため、keff=0.95に保つ手法を研究している”と言われても困るだろう?』

「俺が悪かった」

素直に認める櫻井。


『さて、今度は私の研究室を見に来て貰わなくちゃ』

アサラトが手を取り、櫻井を連れて行く。

遠ざかる2人の後ろ姿を眺めながら、サイムが小声で言う。

『”半減期が数十年の原子”じゃなく、”セシウム137”と言おうとしたんだろう?』

福島第一原発事故で有名に、日本人のトラウマになった同位体だ。


『いや』

パンロゴは首を横に振る。

『そっちじゃなく、高速中性子をブチ当てる方』

ああ、と納得するサイム。

『プルトニウム239か』


某国から秘密裏に処理を依頼された核弾頭。

製造されてから数十年、信管となる高性能爆薬が劣化し、使い物にならなくなったお荷物。中性子反射材として使っている酸化ベリリウムの毒性により分解も難しい厄介物。

テロリストに盗まれるわけにもいかず、ただ持っているだけで膨大な管理コストがかかる。

というわけで、長崎型原爆(ファットマン)数百発分のプルトニウムが、研究所の隔離倉庫に眠っている。


『本当なら、ミューオン触媒(サイム型)融合炉を少し改良するだけで処理できるのに』

改良方法を発表させず、なぜわざわざ加速器駆動型未臨界炉(こんなもの)を造らせたんだ?

と何度目かになる問いをサイムにぶつけるパンロゴ。


『ヒトには、色々事情があるのだよ』

『へぇー』

このやり取りも何度か繰り返している。


『とりあえずミスタ・サクライには、この件(プルトニウム)はくれぐれもご内密に』

とサイムはウインクした。

次回投稿は11/18頃

→業務多忙のため11/25頃

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