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この件はくれぐれもご内密に  作者: tema
第四章 三代目は信条潰す
19/81

アサラト、地下施設を案内する


-2045年10月9日(月)15:00-


櫻井は毎日、午前中に草刈りをする。

まるで野球場かサッカー場、いやいやゴルフ場の全18ホールくらい広い敷地を、少しずつ草刈っていくのだ。

「なんでこんなに広いんだ」

幾度つぶやいたことか。


その理由は地下にあった。

『ここに来たヒトは、貴方で3人目よ。ダーリン』

櫻井の左手に寄り添うアサラトが言う。

広大な空間が、研究所の地下深くに造られていた。


木々が立ち並び、足下には草原が広がる。

天井からは光が射し、小鳥がさえずっている。

地球空洞説を信じてしまいそうな光景である。


『1人目は子供の頃から一緒に暮らしてきたジュリア、2人目がアトケの夫である私だ』

一緒に来たサイムが言う。

『ここはボノボの国。彼らが自治権を持っている』


『私達には、独自の文化があるわ』

ふとアサラトは視線を逸らす。

『中には、多くのヒトから問題視されそうな文化も』


--ボノボは性的に奔放や。ヒトから見たら、相当な乱れようやで

以前デジレが言ってた言葉が、櫻井の脳裏に甦る。

--だが、なぜ俺を招いた?


だって、と櫻井の疑問を読んだアサラトが言う。

『私たち…もう、他人じゃないもん』

--ぐはァッ!!


恐ろしい記憶が櫻井の脳裏をよぎる。

言うまでもなく、アサラトとの朝チュン状態の記憶である。

--まさか俺は、人として越えてはならぬ一線を越えてしまったのか?

ぶるぶるぶる。

思わず総毛立つ櫻井である。


「ピャアッ!」

突然、鳴き声と共に獣が櫻井に襲い掛かった。

その獣は脚を櫻井の首に絡め、掌で櫻井の目を塞ぐ。


「ピャアピャア!」

再び鳴き声が響き、別の獣が胸に、脚に抱きつく。

バランスを崩した櫻井は、草原に膝を付き、何とか獣を振り落とそうともがく。

だが、櫻井の手が届く前に獣は素早く身を避ける。


『止めなさい!マセンコ、カリンバ、ハラム!』

サイムの声が響いた。

獣の動きが止まり、櫻井の前に3人の小さなボノボが並んだ。

『初対面のヒトに、そのような挨拶をしてはならない』

『でも--』

『"でも"は無しだ!』


櫻井は、こんなふうに怒るサイムを初めて見た。

常に理を解き相手の同意を得るサイムが、頭ごなしに叱っている。

『ごめんなさい』

3人のボノボが櫻井に謝ると、厳しかったサイムの目が柔らいだ。

『子供たちを紹介しよう』

3人の後ろにサイムが立つ。


『彼女はカリンバ、第3世代のリーダだ。マセンコはアトケの娘でハラムはアサラトの息子だ』

櫻井の横でアサラトが頭を抱えている。

このイタズラの首謀者が判った気がする櫻井である。

女の子の気を引くために蛮勇をふるうのは、ボノボもヒトと同じようだ。


========


子供たち3名も引き連れて、アサラトが地下の研究室を案内する。

巨大なフロアの中には様々なパイプや綱が張り巡らされ、時折ボノボが宙を跳び、移動している。

机と椅子はバラバラに配置されており、何卓かはパイプで宙吊りになっている。

研究室なのかスポーツジムなのか、判らない造りだ。


何人かのボノボは白衣を着ていた。

『研究者は白衣を着るべきだって者も居るの。でも私からすれば一種のコスプレよ』

そう言うアサラトは、一糸纏わぬ姿である。

残念ながら櫻井へのセックス・アピールにはならない。全く。


「ピャアッ!」

叫び声が聞こえ、櫻井が目を上げると

『サクライ!ちょうど良いところに来てくれた!』

パンロゴが手招きしている。

ただし、パイプで宙吊りになった卓上からだ。


「うひゃあっ!」

突然、アサラトが櫻井を抱え、降りてきたパンロゴと協力してパイプを登りだす。

あっという間に目も眩む高所にご案内される櫻井。

『ようこそようこそ』

パンロゴが歓迎し椅子を譲ってくれるが、正直キモは冷えひえである。


『なんか上手く動かないんだよ』

「な、なんだよ、このプログラムは?」

櫻井はプログラムをざっとスクロールさせる。かなり複雑なものだ。

『原子炉の制御をAIにさせようと思って、自分で組んでみた』

そんな危ないことをAIにさせて大丈夫なのか。


櫻井はモニタ上のプログラムを追うが、足下が気になって集中できない。

というか、足下に何も無いことが気になってしょうがない。

「頼むから地面で見させてくれ!」

『ここ、違うんじゃない?』

横から、マセンコが言った。


========


地上に降りてプログラムをじっくり確認した櫻井は、マセンコが正しいことを発見した。

まさに、その部分にバグがあった。

だが、あんな一瞬で見つかるようなバグじゃなかった。


「偶然か?」

と呟く櫻井に

『いや、必然だ』

とサイムが返す。


子供たちは、研究室のパイプやロープを使って鬼ごっこをしている。

それを見上げながらサイムは言う。

『第3世代は、第2世代より更に知能が高い』

肩をすくめるサイム。


『もう私では、彼女らの理論についていけないんだよ』

と、人類最高の頭脳を持つ男は、なぜか誇らしげに言った。

次回は11/18頃

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