第4話 ハルオの体験談-前編-
今回はハルオの体験談?です。
また、残酷描写が登場しますが、念の為タグにR15を入れました。
共同作品も公開しました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ある朝の事、ハルオはガタンガタンと電車に揺られていた。
日曜なので友達と遊ぶ約束をしていたのだ。
この当時、ハルオは高校二年生。
電車から降りたハルオは、待ち合わせ場所に向かった。そこには既に全員の姿が。
「すまんすまん、待ったか?」
「いや、まだ約束の時間よりも5分早いから。みんな気合入れすぎて早く来すぎたんだよ」
「そうか、それなら良かった」
別に遅れていないと言われ、ハルオは安堵する。
今日は友達の家に行くのだ。
ハルオ達5人は違う電車に乗り換え、また電車に揺られ始めた。
その友達の名は彰と言い、今日は男子3人女子2人だ。
その彰の家は電車の終点の駅から徒歩5分位の所にある。
この5人は全員が一度は行った事がある、仲良しグループだ。
「おっじゃまっしまーす!」
そう言ったのは誰だったか。
恐らく女子の2人のどちらかだとは思うが。
何故ハルオが言った誰かを知らなかったかというと、その時同時に起きたいた事に集中してしまったからだ。
ハルオ達が彰の家に入った瞬間、いつもと変わらない玄関に突如青白い光が輝いている魔法陣のようなものが現れたのだ。
ハルオ達は最大級に警戒をし、助けを求めようとしたが生憎恐怖なのかは分からないが声が出ない。それどころか彰の家やその周りに人の気配は感じられない。
そんな事を思っている内に脳内も青白く光ってゆき、ハルオ達の意識が閉ざされていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「転移した時の状況はこんな感じじゃ」
ここまで話してハルオはお茶みたいな飲み物を口に付け、そのまま一口飲む。
俺もその仕草を真似するように飲んでみたが、やはり異世界のお茶も美味だった。
何となくだが烏龍茶に似ている気がする。
「そうですか…場所は違いますが、殆ど同じですね」
「うむ」
「5人全員一気に転移したんですか?」
「いや、儂だけじゃった」
「そうなんですか…。良く生きていけましたね」
「ああ、当時は頭が混乱してショックだったぞ。…大分噛み砕くが、少しは語ろう」
ハルオはそう言い、起きてからの話をし始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ハルオが起きた時、そこは見覚えのない草原だった。辺りには何の建物も建っていなく、見渡す限り草、木、森等。自然だらけだった。
建物が沢山あった日本に住んで居たハルオからすればこんな自然に囲まれた草原や森林は見た事なく、感動を覚えた。しかし同時に慣れていない自然環境や機械が無い事のストレスや、虫がわんさかいることに対する苛立ちを覚えたりもした。
頭が混乱していた為、ある事に気付くのにその場で考え事をする事約10分が経っていた。
(あれ?みんながいない)
突如その事を悟ったハルオは酷い孤独感に襲われた。
そしてだんだんと意識が遠ざかる前の状況を思い出していった。
周りをもう一度大きく見渡してみるも、先程の青白い魔法陣のようなものは一切見つからなかった。
周りで見える色といえば大まかには緑と茶。とてもそのようなものは見つからなかった。
空が黄昏れる中、ハルオも黄昏れていた。
ついさっきまで…とはいっても何時間も前だが…までは盛りがあって元気だったハルオだったが、空腹感や孤独感に襲われ、更には虫に対する苛立ち、知らない場所に突然やって来た事によるストレス等が積み重なり、もはやどうでもよくなってきた。
帰れるかどうかはもはや絶望的で、ここがもしかしてアフリカだったらと常に絶望感に襲われるだけ。
しかしそんなハルオが黄昏から復活する時がやってくる。
だんだんと空が暗くなってきた時、ハルオは不意に背中に鋭く嫌な気配を感じた。
ハルオは咄嗟にサイドステップで避けたが、今までやった事の無い尋常じゃない程のスピードで避ける事が出来た事に自分でも驚いた。
そしてハルオがさっき居た場所にピュンという音と共に早くも遅くも無い速度で矢が空を切り裂いた。
…いや、いつものハルオだったら早くて避けられないだろう。しかし今は何だか身体が軽く、自分でも驚く程の身体能力が出る。
ハルオは自分の行動に信じられない気持ちを持ちつつ、咄嗟に身体を捻り、後ろを見る。
そこには弓を持った身長の低い醜い鬼?動物?のような生き物がおり、その前には弓を持っていない醜い生物が3体程居た。
(これが噂のゴブリンとゴブリンアーチャーか?)
ゲーム等で知っていたハルオはその動物…正確には魔物を理解する。
どうやらハルオが黄昏れていた間に近寄ってきて、殺そうと考えていた様だ。
何とか応戦しようとするが、ハルオは人型の魔物…通称亜人を相手にする事を躊躇してしまう。
また、勿論勝てないとは思っているが、ここで逃げてもどうせ逃げ切れないだろう。そして折角の食糧を無駄にするかという考えがハルオの頭を渦巻いていた。
しかし、一番期待しているのは先程の身体能力だ。どこか知らない場所に来た時に大幅に上がった様だ。原理は知らないが、という考えがあり、この身体能力さえあれば雑魚と有名なゴブリン程度この手で葬れるかもしれないと思っていたからだ。
油断大敵という言葉があるが、もはやハルオはそんなのはどうだってよく、兎に角食料が欲しいという事しか頭に残ってはいなかった。
しかし亜人を相手にする事を躊躇していたハルオは先手をゴブリンに取られてしまう。
ハルオがそう悩んでいる間、ゴブリンが木製の棍棒を持って突進してきたのだ。
別にゴブリンの突進は防御を捨て、更に陣形等も気にせず突進してきた。
何らかの武術を習っている者ならばただの突進等楽々躱せるだろう。しかしハルオは武術初心者。いきなり突進して来て躱せる筈がない。自分でもそう思っていたが、変な自信がハルオを後押しする。そしてそれは違う形で現れた。
<【無慈悲】を獲得>
頭にこんな声が流れた。自分の知らない声で無機質のような声。
しかし何だか勇気がどんどん出て来て、ゴブリンや亜人に対する恐怖は一切と言っていい程無くなった。…後にこの【無慈悲】のお蔭だと知る事になるが。
突進してきたゴブリンをハルオは右に避ける。これまた自分でも驚く程の反応速度だった。
しかし躱した方向に2体が同時に突進してきた。バックステップもサイドステップも出来ない状態で、ハルオは疑いながらも一か八か跳躍した。
思い切り踏み込んで跳躍した為、ハルオを撃とうとしていたゴブリンアーチャーの矢にも一切当たらず、そのまま軽く2m程跳び、ゴブリン達の背後へと回り込んだ。
武器を持っていないハルオだったが、あるフレーズが頭の中に浮かんできた。
「【闇爪】!」
気合を入れて叫んだその声は、空間に闇で出来た大きな爪が現す事で効果が発動される。
その爪は3体のゴブリンをいとも容易く切り裂く。少し遠くにいたゴブリンは一撃では死ななかったが、何らかのものがゴブリンの中へと浸食して行き、直ぐに息絶える。
最後の足掻きとばかりにゴブリンアーチャーが勢いよく矢を番え、撃って来たが、
「【神速】!」
というまたも理解できない言葉を叫ぶ事で、自分でも酔うんじゃないかと思う程のスピードでゴブリンアーチャーの懐まで移動し、胸元を思いっきりキックする。それだけで意識を失い、口から泡を吐いた所で首の骨を折り、何の抵抗も出来ない内に無力化する。
これだけやってもハルオは特に気持ち悪いといった感情を抱かずに殲滅を完了する。
(まさかこんな事が出来るなんて…ここは異世界か?)
倒してからそこまで時間が経っていないが、冷静に落ち着いてみるとさっきの【闇爪】や【神速】は何だったのだろうと思って来る。
それこそここは異世界で、地球ではないという自分の中での説が有力になって来た。
(さて、もう夜だし頂く事にするか)
しかしそのような事を考える事さえ面倒臭くなっていたハルオは、さっさとゴブリン達を食べる事にする。
血抜きや剥ぎ取りを不器用ながら慣れない手つきで終わらせたハルオは、早速食べてみる事にする。
しかし火が無い為、超古典な摩擦と言う方法を使って何十分もかけやっとの思いで火を熾す。
そして適当に千切ったゴブリンの肉を炙って食べた_____
_____草原にこっそりと吐いたハルオはクラクラする頭を持ち上げ、先程の場所へと戻った。
肉は食べられなかったが、棍棒は必要なのだ。
戻って棍棒を1本手に入れたハルオは、もう夜なので眠る事にした。
またゴブリンが出て来るかもと思ったが、睡魔に襲われて眠ってしまった。
自分の肉体を信じて。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「大変だったんですね」
「ああ、あの時は完全にサバイバルじゃったからな」
「でもそんな夜中に野宿をして大丈夫だったんですか?」
「…それは今から話すとしよう。ちょいと細かすぎたから砕いてな」
ハルオはそう言い、二人分のお茶を補充した。
なんだかんだと細かくなってしまいました(汗)
最近やる気が出ないなぁ~。
この間あるテレビ番組でやってたんですが、やる気を出す方法は”嫌々でもいいから先ず行動する”のがいいそうです。やってみます。