第2話 【分析】
さっきから散々戦士だの魔法使いだの聞かされて、俺はどれなんだろうとか思ってワクワクしていたのだが…忍者ってなんだよ!
そもそも忍者って何だ?盗賊じゃ駄目なのか?確かに忍者のゲームやっていたけどな。
こう思ってしまう俺は仕方ない。
「忍者って何ですか?」
「よくぞ聞いてくれた!盗賊は奪ったり罠を仕掛けたりするが、忍者と言うのは隠密に移動し暗殺等を得意とする職業だ。とは言ってもトリッキーという点は変わらないがな。二つを比べたらまあダントツに忍者の方が上じゃぞ?」
忍者の事になると若干熱が入り過ぎていたハルオだったが、俺は成程と一人納得する。
俺も忍者とかそういう系の者は大好きだし、感覚や想像でしかないが盗賊よりも戦闘向けで強いイメージがある。
大体の話を聞いた後、最後にこれだけは質問しておきたいと、俺は質問する。
「それで、忍者の何やらはどういうもの何ですか?」
「説明するのはめんどくさいから【分析】って言ってみろ」
俺が真剣に質問しているのにハルオは俺に丸投げだった。
言ってみてどう変わるのかは一切予想がつかないが、一応声に出してみる事にした。
「【分析】」
そうすると何だが脳内からぼんやりとした何かがだんだんとはっきりしてきて、次第にそれが文字だと分かった。
今まで存在した思考や感情の上にのしかかるような不思議な状態で、今はその文字しか見えなくなって来た。俺は密かに異世界のステータスみたいなものが凄いと思うと同時に若干の恐怖を抱いた。
そんな事を冷静に分析しても進まないので、より文字に集中して読み取っていく事にする。
********************
名前:蒼田海(通常)
種族:人間[異]
職業:忍者
LV:1
技術:【暗殺眼[常]】【忍び足[常]】【気配隠蔽[故]】【消身[故]】【神速[故]】【知恵者[常]】【分析[故]】
魔法:【最上位闇属性魔法】→【闇爪】【ブラックホール】【闇黒砲】【纏闇】
称号:【異世界渡来者】【極闇】【ただ一人の闇忍者】【闇隠の弟子】【冷静思考】【未来の最凶】
********************
こんな感じだった。称号とかも見ると、何やらヤバそうに感じられた。恐らく忍者自体異常事態なのだ。
一応詳細も調べてみた結果。
【暗殺眼】…常時発動型。暗視の効果があり、視力と動体視力が上昇。
【忍び足】…常時発動型。足音を殺して獲物に近付ける効果があり、俊足になる。
【気配隠蔽】…故意発動型。気配を完全に隠蔽出来る効果がある。
【消身】…故意発動型。身体を完全に不可視にする効果があり、この技術発動時は視力が低下する。
【神速】…故意発動型。自らの動作を瞬間的に音速以上に引き上げる効果がある。
【知恵者】…常時発動型。自らの知恵を使って一部的に策士の働きが出来る効果があり、知力が上がる。
【分析】…故意発動型。自他を分析し、どの様な存在かを確認出来る効果がある。
【最上級闇属性魔法】…闇属性の魔法の最終レベル。全ての闇属性魔法を効果的にコントロール出来る。
【闇爪】…闇をそのまま形にした大きな爪で獲物を切り裂く。切り裂かれた場所からだんだんと負のエネルギーが送られる。
【ブラックホール】…闇を集め渦巻き状の形にした闇そのもの。全てを無に帰す効果と、物を一時的に収納、吸収出来る効果がある。吸収したものは場合によっては自らの力となる場合もある。
【闇黒砲】…闇のエネルギーをビーム状に発射する。魔力の込め方によって大きさが変化する。
【纏闇】…闇の力を纏う事が出来る。直接攻撃がヒットした際負のエネルギーが送られ、更に纏っている間はステータスに補正が掛かる。
【異世界渡来者】…異世界から転移して来た者。LVが上がりやすくなり、技術習得率が上昇。
【極闇】…闇属性魔法を極めた者。闇属性魔法の威力に補正。
【ただ一人の闇忍者】…事実上現在確認されているたった一人の闇忍者。
【闇隠の弟子】…闇隠の異名を持つハルオの弟子。忍者としての才能あり。
【冷静思考】…冷静に物事を分析する事が出来る。【知恵者】と【分析】に補正。
【未来の最凶】…この者は未来、最凶の存在へとなりうる。
こんな感じだった。
称号にも有用な効果があるものが多く、正しくチートだ。
「どうじゃ?強かっただろ?」
「はい。でも【ただ一人の闇忍者】という称号があったんですが…」
「それは儂が伝承したから儂は忍者じゃなくなったんじゃよ」
「いえ、そうではなく…何故”闇”が付いているんですか?忍者は俺とハルオさんだけじゃ?」
「うーむ、もしかしたら他にも居るのかもしれん。そうだとしたらどこかにずっと隠れているんだろうが」
「そうですか」
俺は腑に落ちなく、考えに耽ろうとしたが、ハルオから考えすぎても無駄じゃと言われ、黙る。
「それで、これから俺は何をすれば?」
「うむ、儂はある目的の為にお前を呼び出した。一つは儂の跡継ぎの為。もう一つは…」
「何ですか?」
「まだ言う事は出来ん」
「そうですか…それで、どうやって呼び出したんですか?」
「それは…」
さっき最後にとか思っていたのに段々と質問の量が増えていく。
それは兎も角として、また溜めに溜めてからハルオは言った、が。
「秘密じゃ」
俺はブチ切れそうになった。しかし【冷静思考】のお蔭か何とか冷静に保つ。
「これを教えてしまっては…どこかから情報が洩れては嫌だし、これは禁技と呼ばれる秘技なのでな」
この一言で成程なと俺は思う。
「さて、お前はこれから一つの約束をして貰う」
「それは何でしょう?」
「それは、ここの隠れ家の存在と儂の存在を隠し、更に忍者としての忠誠を儂に刻め」
ハルオは俺が反旗を翻す可能性も考慮し、約束を誓わせようとしている。
しかし俺が生きていけるのはハルオのお蔭。しかし転移したのもハルオのせい。
さて、どうしたものか。俺は冷静に考える。そして一つの結論に至る。
「分かりました、その点に関しては約束します。しかし一つ条件が。それは…」
俺はその条件に肯定すると同時に、ある条件を提案した。
その条件にハルオは笑みを浮かべ、勿論だと肯定の意を示した。
「さて、疲れたじゃろう?休憩していいぞ。お前の部屋はこの廊下の奥じゃからな。狭い隠れ家じゃが、気にしないでくれ」
少ししたら昼食にすると言って、ハルオは俺に休憩を進めてくれた。転移した時はまだ朝だったらしいが、話を長々と聞いている内に昼前になってしまっていたのだ。
俺は部屋に行ってみる事にする。隠れ家と言う位なので、そこまでこの建物自体は広くない。というかここは何処なのだろう。
真っ暗だった事から俺は地下だろうと推測する。恐らくは忍者以外ここの中を歩き回れないのだろう。
例え夜目がきく盗賊だったとしても、何にも見えないだろう、その位ここは真っ暗で闇の世界なのだ。
そしてハルオに示された部屋に行ってみると、予想に反し、驚く程綺麗で整った部屋があった。
部屋自体の広さは元俺の住んでいた家のリビング位ある。狭いと言うのは大分謙遜していたようだ。
俺は若干の落ち着かなさを覚えたが、直ぐに慣れるだろうと寛ぐ。周りには装飾品等が少しだけ飾ってあり、壁は普通に白い。
俺が最初に転移して居たところの部屋とは比べ物にならない位装飾品や骨頂品の類が少ないが、恐らくあれは大広間。そこと比べるまでも無いし、俺はそこまで骨頂品や装飾品があっては落ち着かないと思うので逆に気遣いを感じられた。
これは田舎人の特徴だろう。
俺はこれからどうするかを考える。
先ずはここの地理関係を聞こうと。そして俺は恐らくこの先も戦闘をしなければいけなくなるだろう。そこのところをしっかりと確認しとかなければいけない。
さて、これから忙しくなりそうだ。