第1話 伝承の儀
新作です!
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俺が颯爽と移動する中、一つの影が森の奥から出て来た。
俺の技術である【分析】を使うと、それがオークリーダーだと直ぐに分かった。
恐らくは先程闇に葬ったオーク達のリーダーであろうと。
オークリーダーとは通常のオークよりも一回り大きく強靭な肉体を持っている。
俺は持っている技術の中で、【神速】を使用し一気にオークリーダーの背後へと回る。
そして背後からオークリーダーの頭部目掛けて【最上位闇属性魔法】の【闇爪】でオークリーダーの頭部を刈り取り、闇に葬る。ここまでの時間は僅か5秒。これが俺の職業の強い所だった。
俺は【ブラックホール】を使いオークリーダーを吸収。そのまま隠れ家へと走り去った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時は二日程遡る。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺…蒼田海は日本のとある高校へ通っていた。現在高校二年。田舎の海が近い漁師の息子として生まれた俺は毎日バスに揺られそこから更に電車に乗って通うと言う過酷な生活を送っていた。父は漁師を継いでほしいと言っているが、俺はそんな事をするつもりは微塵もない。
海は確かに好きだし、魚も好きだ。しかし俺以外にも漁師は沢山居るし、何より俺は一つ夢があった。
俺はゲームのプログラマーになりたいのだ。
これは恥ずかしくてあまり人前では言えない。田舎で生活してきてそんなお高いゲーム等無縁だった俺がどうしてゲームのプログラマーになろうと思ったのか。それは一つのきっかけがあった。
俺が住んで居る場所は田舎だが、30分も車に乗ると直ぐに街に到着する。
何百万人都市とはいかないが、そこそこ人が住んでおり、毎日その街は活気があってとてもいい街だ。実際俺もそこの高校に通っている。
それがある日、俺の家の近くに電化製品を扱うお店が出来たのだ。元々コンビニエンスストアや小さめのスーパー等はぼちぼちとあったが、こんなにも現代的な店が経ったのは初めてだった。
父親の漁成功により家庭が潤っていた俺は簡単にゲームやパソコンを手に入れる事が出来たのだ。
それからはど嵌りの日々。特に忍者をモチーフにしたアクションRPGのゲームに嵌り、俺は夢を決め、高校に通う事にしたのだ。
今日もいつものようにバスに揺られ、電車に乗り換える為にいつもの道を歩く。
しかしここでイレギュラーな事が起こった。ちょっとした路地から何か不穏な気配を感じたのだ。いつもはそんな事を感じる事は無い。それどころかこんなに敏感に背筋がゾワッとする感覚は初めてだった。何かに誘われる様に俺は路地へと入って行く。
ここは人通りが少ない場所でもあり、朝早い時間なので人は誰も居ない。
そしてその路地のど真ん中に小さくも大きくも無い真っ黒な魔法陣があった。
その魔法陣の中を除くと、永遠に闇が続いている様な不思議な光景が広がっていた。
俺の身体はそこに吸い込まれる様に動く。逆らいたくても逆らえない。本当の金縛りの様なものだ。
俺は成す術無くそこに吸い込まれて行き、やがて意識が途切れた。
俺をこの世界で最後に見た者は、今日も頑張ってねと言っていた両親だけだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺が目を覚ますと真っ暗で本当に闇しか見えない場所に寝転がっているように感じられた。
辺りは何も見えなく、ここまでの闇は初めてだった。自分の身体がどこにあるのかさえも確認出来ない。ましてや少しも動く事が出来ない。俺が暫くそうしていると、俺の前方から声が聞こえて来た。
「おお、ようやく起きたか。結構待ったぞ」
その声は全く知らない人の声色だった。性別は男で年齢は初老から老人あたりだろう。
「…幾つか質問させてくれ。ここはどこで貴方は誰ですか?」
決して取り乱したりはせず、冷静沈着に質問をする。俺はここまで冷静になって喋る事が出来た自分に驚き、同時に沢山の疑問を頭に抑え込む。
「すまんすまん。順番に説明していくぞ。先ず最初にこれだけ言っといた方が良いな。いいか、決して驚くんじゃないぞ?腰を抜かすんじゃないぞ?」
その声は大分溜めてから一つの言葉を口から出した。
「お前は異世界に転移した」
この男がそう言い、俺は何言ってるんだコイツと思っていた。しかし、大分間があったが向こうから何かしら喋るといった行為が欠片も無いし、それ以前にその気配が無い。
俺は満を持して質問をした。それは…。
「本当ですか?そもそも証拠は?」
これだ。非常に単純で分かり易い質問だ。俺は基本的に物事の全てを疑うし、出しゃばったりする事は殆どない。疑心暗鬼な意味では無く、慎重と捉えてほしい。
「やはり儂が見込んだ通りじゃったな。流石は儂の跡継ぎじゃ。さて、証拠か?これを見てみろ」
「いえ、一切見えません。そもそも貴方の姿さえ確認出来ていませんから」
「そうじゃった。少し待ってくれ」
男はそう言うとまたもや理解不能な言葉を出した。【暗殺眼】と。
その瞬間俺の目は先程とは打って変わってはっきりくっきりと周りが鮮明に見えるようになったのだ。
さっきまで暗かったという記憶を突き破るような明るさ。しかし自然と目がチカチカしない。
その事を尋ねてみると真っ暗なままじゃぞと返って来た。全く意味が分からない。
ここはどこかの建物の一郭らしく、豪華な家具や骨頂品、美術品等が飾られていた。しかし、自然と居心地の悪さは感じられず、フワッと身に被さってくるような優しい綺麗さが目立った。
「今のは儂の技術。まあ、技術とは言え元々持っていたがな。」
でもこんな事が出来るとしたら異世界しかない。俺は仮にだが信じる事とした。この後見せてくれるものによっては対応を変えよう、そう思った。
しかしその心配は一切必要なかったらしく、直ぐに俺は驚く事となった。
「見てろよ、凄いからな?」
そう言い、その老人は懐から一つの水晶玉を取り出した。そこからはまた神秘的な何かが感じられ、淡い光が凛々と輝いていた。
そして老人はそれを俺の胸の前へと近付け、その後そう叫んだ。
「『伝承の儀』!」
その瞬間水晶玉がすっと俺の胸に入ってくる。傍らから見ると死ぬぞと思い、慌てて止めに入るだろう。しかし俺は不思議と安心し受け入れ、微かな高揚感すら感じられた。
胸に水晶玉の様な物が入ってから直ぐの事だった。俺の身体がどんどん変化していっているのだ。
勿論腕がもう一本生えてきたり胴体から触手が出てきたとかではない。身体の内側が変化しているのだ。
なんと表現すればいいのかは分からないが、じんわりとしか温かい何かが身体の血管を通るように全身を回って行き、外部的な面では視力や動体視力が上がったような感覚があり、更には身体能力が馬鹿みたいに上がった気がする。いつも冷静な俺だが久しぶりに興奮し、今ならバイク一台位なら軽々持ち上げれる気がする。
「どうじゃ?こんな感覚は?驚いたか?そして異世界だと信じたか?」
「そうですね、なんか身体の奥底から力が漲ってくるような、不思議な感覚です。取り敢えずは信じないと先に進まないでしょうし何よりここが地球の訳がありません。なので信じる事にします」
「そうか、それは話が早い。ではここの世界についてと何故お前が転移したのかを軽く話させて貰おう」
そう言い、この老人は話し始めた。
先ずこの世界は魔星という名前らしい。地球とは遠くかけ離れていて宇宙自体も違うという事。因みに何故この老人が地球の事を知っていたのかというと、原因は未だ分かってはいないがこの魔星に転生してしまったそう。それも前世の記憶が残ったまま。
これには驚きだった。
彼の人生は後程詳しく聞く事にしたが、この世界には魔法が存在すると言う。それと同時に技術と言う自らを鍛え抜いた際に獲得出来るものもあるという。先程やっていた【暗殺眼】という奴も常時発動型と呼ばれる種類の技術だそうだ。
更には職業と言う概念まで存在しており、これは仕事の方ではなく役割というか自分が得意な戦闘タイプやもしくは得意な事が職業というものになるという事。
そしてさっきやった『伝承の儀』。あれは秘宝と呼ばれる魔の水晶玉を使って自分の職業や力の一部を渡す事が出来る秘儀なのだそう。
魔の水晶玉とは本当に最強、いや最凶と恐れられる程の魔物が持っている貴重な物で、売れば人生を数回と裕福に遊んで暮らせる程の大金が手に入るそう。これにはビビった。
魔物とは簡単に言うと魔力を所持した動物のような存在だそうだ。魔力とは魔素を取り込む事で使える力の一端で、魔法にはこれが必要不可欠との事。魔素は地球にはない元素だそうだ。
魔法の事に触れれば次から次へと疑問が出て来る。
質問をしてもキリが無く、最後には細かい事は慣れてくれと言われてしまった。
そして一般的な職業の話へと移る。
一般的には非戦闘員が一番多いとの事。戦いに全般的に向いてない者達は職業が無しになってそれぞれが商業や農業、水産業に手を出すらしい。
大体四人に一人位の確率で戦闘員がおり、その者達は各々職業がある。これは最初に才能がある程度与えられ、職業が既に決まっているらしい。こう見ると非戦闘員があまりにも可哀想に見えるが、人々は運命だと言ってごく普通に生活するらしい。なんとも気の強い方々だ。
そして一番多い職業はやはり戦士だそう。
戦士とは前線で戦う近接戦闘に特化した職業であり、攻撃力と防御力が桁違いに補正が掛かるらしい。しかし戦士の中にも種類はあり、兵士となる者も居れば騎士になる者もいる。冒険者してと活動する場合は勿論あるが、その中でも盾役になる者もいる。前線で戦う者を総称したのが戦士らしい。
他にも盗賊や魔法戦士、弓術士等があるそう。時には希少とされる使役者や運搬士…俗にテイマーやポーターと呼ばれる者達が居るそう。
大体この世界について分かってきた俺はとても重要な事を老人に質問した。
「それで、貴方の職業は?」
「そう言えば名を名乗っていなかったな。儂は竜峰春雄という名前じゃった。今はハルオと名乗っておる。この世界は外国風なのでな。…最も今は顔を出さないがな」
ハルオはわざとらしく溜めた。俺は若干苛立ちながらも、期待を込めて聞く。すると思い掛けない返事が返ってきた。
「儂とお前の職業は…忍者じゃ!」
俺はそれを聞いてこう思った。
は?と。
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修正
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