悪夢
目覚まし時計がけたたましく鳴っている。男が不満そうに起き上がる。
「なんだまだ5時じゃねぇか」
横になったまま手を伸ばしてアラームを止めた瞬間、バチン!と大きな音がしてベッドが2つ折りになり、悲鳴を上げる間もなく男はベッドにサンドイッチにされる。
「なんなんだ?どうなってやがる!」
喚きながら男がベッドから這い出る。
しかし床には油が撒かれており、男は転んで床に顔面を叩きつける。
立ち上がった油まみれの男は、電話しようと受話器を持ち上げるが、その瞬間電話機が爆発し、男は悲鳴を上げ尻餅をつく。
よろよろとキッチンに向かった男は、慎重に冷蔵庫を開ける。とりあえず異変がないことを確かめてから、牛乳を取り出してコップに注ぐ。
しかし男はここで凍りつく。牛乳パックの中からは真っ赤な液体が出てきたのだ。
「うわあぁぁ!」
男は悲鳴を上げ、牛乳パックを投げ出して外に逃げようとする。
しかし玄関で男はさらに愕然とする。玄関のドア1面に大量の毛虫がくっついて、もぞもぞと動きまわっているのだ。
真っ青になった男は、その場で立ったまま気絶する。
男の家の前には、1台の黒いスポーツカーが止まっていて、2人の女が乗っている。
1人は運転席でヘッドセットをつけてにやにや笑っている。
もう1人は助手席で全裸のままダッシュボードに足を乗せ、左手で大きな古びたジッポを弄んでいる。
1人が呟く。
「もういいかしら…」