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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

物の怪たちの宴

濡女子

作者: 2Bペンシル

この小説には虫や衛生的に不潔なシーン、精神崩壊表現があります。虫が苦手、潔癖症、そういう表現が苦手という方にはあまりお勧めいたしません。ご了承ください。

 ある金曜日、車軸を流すような雨が突然降りはじめた。車道はほとんど川のようで、排水溝からは湧き出るように水があふれていた。いわゆるゲリラ豪雨だ。

 そんな中を、彼は家に向かって走っていった。朝は晴れていたので、傘を持って家を出ていなかった。折り畳み傘なんてものを持っているほど几帳面な人間でもなかったのが災いし、大学からの帰り道にこの豪雨に打たれることになったのだ。

「くそ、これじゃいったんシャワー浴びないとバイトに行けないじゃないか!」

 彼の言う通り、服はすでに溺れたかのように濡れていて、口を開けるだけでも雨粒が口に入った。目を細めなければ、涙の代わりに雨が目を潤しかねないほどだ。

 そんな中、ふと反対の歩道に目を向けると、身長は160㎝くらいの髪の長い少女が傘もささずに立っていた。その髪はかなり離れているはずなのに、濡れているとわかった。

「ん?」

 彼は豪雨の中に立っている彼女にも好奇心を抱いた。それに加えて、彼は無類の女好きだった。ただし、飽き症の彼は彼女ができても長続きすることはそうそうなく、付き合っていた彼女を一方的に捨てることはもちろん、浮気も多かった。言い方を変えれば、女癖が悪い男だったのだ。

 また、捨てる時もSNSはもちろんのこと、電話やメールを一方的に無視し、徹底的に女心を踏みにじった。その時の理由は「もう必要なかった」から。

 目を彼女に向けたそのとき、彼女は顔をあげた。

 その顔はとても整った顔をしていて、見るだけで微笑みそうになるほどだった。目はアーモンド形の下三白眼で、鼻筋はスッと通り、唇は程よく膨らみ、肌は透けるように白かった。

 思わず彼は彼女に微笑んだ。そして、瞬きしてまた目を開いたとき、彼女の姿は反対側の歩道から消えていた。

「……俺の見間違いか? 大学にブサイクしかいなかったせいで、美人の幻覚でも見たのか?」

 彼は狐につままれた気分になったが、時計を見るとバイトの時間までそうなかった。

「いけね、もう少しでバイトじゃないか。急がないと」

 濡れるのもかまわず、家まで走り通した彼が家につく頃には、履いていたスニーカーは水を含んで重くなっており、玄関先で水を絞らなければ玄関が水浸しになりそうだった。そのことに気を取られていた彼は、近づいてきた足音を聞くことはできず、音の主の足跡も残らなかった。

 そのとき、雨はやんでいた。


 彼は家からそう遠くないところにあるコンビニでバイトしている。だいたい平日の夜は、仕事帰りのサラリーマンやOLなどが缶チューハイや酒の肴を買いによることが多いのだが、今日は珍しく人が少なかった。

「暇だなあ……」

 スマートフォンこそ弄っていないが、もしあれば日課の出会い系アプリを巡って女漁りしていたことだろう。

 ふと入り口のほうを見ると、だれかの人影が見えた。

──客か? それにしては入ってこないみたいだし、明かりに照らされているはずなのによく見えないな。

 その人影は入口の前で立ち止まっていた。長い髪を持っているということは見えるが、それ以上のことは分からなかった。なぜか、服装すらわからなかったのだ。

 彼は意を決して、レジを離れて入口に向かった。客がいないから暇だということ、どんな人間なのかを確認したい好奇心、もし具合が悪いのであれば放置して面倒なことにしたくないという気持ちが入り混じって、彼の心を突き動かし、足を動かしたのだ。

 入口のガラス戸についたが、近くで見てもその人影はよく見えなかった。

 ガラス戸を開ける。

 そこに人影はいなかった。先ほどの豪雨の名残か、まるで湿っているかのようにアスファルトのちょうど人影があった部分だけが変色していた。

「どういうことだ、これ……」

 彼は外に足を踏み出した。

 そのとき、後ろから監視カメラから見ていたのか、バックヤードから出てきたマネージャーが彼に声をかけた。

「どうしたんだー?」

「すんません、だれか外にいたもので」

 マネージャーは変な顔をして、

「誰かいた? そんなの見てないぞ。酒にでも酔ってるのか?」

「勤務中も勤務前も酒は飲みませんよ」

 そんなことを言いながら、彼は変色したアスファルトの跡に背を向け、店内に戻った。腑に落ちなかったが、「きっと見間違いだろう」と考えることにした。人影は電灯にいた虫か何かの陰で、アスファルトが濡れていたのは先ほどの豪雨のせいだと。

 それからの時間は、特に何事もなかった。そして、勤務時間を終えた彼はコンビニを後にして家に帰った。

 金曜日は、それだけだった。


 次の日、土曜日。

 講義もバイトもなく、今日の予定というと出会い系であった女と夜に会うことくらいだった。

 昼間は溜まった洗濯物を片付けるくらいしかすることはなかった。その洗濯物を仕分けているとき、彼はふと風呂場の中を見た。

 そこは、壁一面が黒いもので覆われていた。間違いなく、昨日風呂に入ったときにはなかったものだった。

「うわっ!?」

 後ずさった彼は風呂場から漂う匂いに気付いた。異様にかび臭いのだ。その匂いで冷静になった彼は、風呂場を覗く。そこにあったのは見渡す限りのクロカビだった。 

「一晩でこんなことになるか……? 確かに最近掃除してなかったつっても、こんなになるわけ……」

 絶句している彼の耳に何かが聞こえた。人の声、それも少女のような声だったが、よく聞き取れなかった。

──ん?

 あたりを見回しても、もちろん誰もいない。隣人かと思ったが、壁は厚いためほとんど音を通さず、通したとしても彼の両隣は男だということを知っていた。

「まあいい……今日の夜も使うし掃除するか。だれだよ、こんな汚くして……」

 愚痴を言いながら、風呂用洗剤とスポンジを持った彼は、ゴム手袋をはめて掃除に臨んだ。

 風呂場から離れているベランダが湿っていることに気付くことはなく、濡れていた跡はすぐに乾いた。


 その夜、近くの居酒屋でその女と待ち合わせした彼は、待ち合わせ場所で待っていた。二人で飲んだ後、彼の家でまた飲んで、そのまま泊まる予定だった。

 ふと、スマートフォンが鳴る。

 その女から、電車のダイヤが乱れて少し遅れる、先に居酒屋で飲んでいてほしいとのことだった。

「ちっ……ヤるのが遅れるじゃねえか」

 居酒屋に入店する。

「二名様ですか?」

──こいつ目でも死んでるのか?

 彼はすこしイライラしながら答えた。

「いや、どう見たって一名じゃないですか。どう見たら二名に見えるんです?」

「えっ? も、申し訳ありません。一名様ですね」

「後から一人くるんで、一応二名ですけどね」

「わ、わかりました。二名様ご案内でーす」

 挙動不審な店員が彼をボックス席まで案内する。

 席に着いた彼は店員にビールを頼み、女がくるまで料理は頼まないでいた。

 ビールの泡が消えるころ、その女は来た。

「やあ」

「あれ? 三人で飲むの?」

──こいつも? そんなこと言うような女じゃないはず。

「え? 二人に決まってるだろ?」

 いった刹那、女の顔から血の気が目に見えるほどはっきりと消えた。

「ご、ごめん。私帰るわ。お金おいてくからそれで支払って」

 言うが早いが、女は一万円を置いて逃げるように居酒屋を出た。

──店員といい、あの女といいなんなんだ。俺のこと見るなり化け物でも見たようにへんになりやがって。それになんでいちいち人数が増えてるんだよ。

「まあ、料理頼まなくてよかった。無駄に金がかかるところだったからな」

 彼はビール飲み干し、女からもらった一万円でビール代だけを払って店を後にした。


 日曜日。朝から、といっても10時からだが、彼はバイトに出ていた。日曜日はそこまで混むことはない。せいぜい、昼食を買いに来る人がいるくらいだ。

 だれもいない店内をモップ掛けしていると、床が一部だけ濡れていた。

「あれ? おかしいな、晴れてるのに」

 独り言をつぶやきながら、その水たまりをぬぐう。そのとき目の端で、近くの床に黒い影が立っているのが見えた。入店時のメロディーも聞こえなかったため、誰かが入ってきたわけではないのは確実だった。

──誰だ!?

 顔をあげると、そこには誰もいなかった。そして、また人影が立っていたであろう床が濡れていた。

「なんなんだ……ホラー映画じゃあるまいし」

 得も知れない不安と恐怖を抱いた彼は、店内を見回して人がいないことを改めて確認した。

「マネージャー?」

「どうしたー?」

 間延びした声がバックヤードから聞こえる。

「監視カメラにさっき誰か映ってませんでしたか?」

「誰かー? いるわけないだろー、ここ30分くらいは誰も来てないんだぞー?」

「だよなぁ……ありがとございまーす」

「前回といい、おかしいぞお前ー。いつでもいい眼科紹介してやるからなー」

 マネージャーの冗談を流し、彼はまた仕事に戻った。

 次はトイレ掃除をする予定だったが、掃除用具入れを見た瞬間、彼は青ざめた。

 用具のほぼすべてにクロカビが生えていたのだ。ふつうは生えないであろう予備のトイレットペーパーもクロカビだらけで、黒い円柱のように見えた。

「ふ、風呂場といい、なんなんだよ……」

 彼は追い詰められた人間が浮かべる、笑みとも引きつりとも取れる表情を浮かべた。彼の額から脂汗が一筋、あごまで垂れてクロカビに落ちた。


 18時にバイトを終えた彼は逃げるように家に帰った。

 あのカビだらけの掃除用具入れをみたマネージャーも恐怖を抱いたようで、オーナーに報告した後、仕事が手につかなかったようだった。

 それは彼も同じで、その後の仕事は何をやってもダメで、買い物に来た客に心配をされるほどだった。

 ふと、スマートフォンを見ると、昨日会った女から連絡が来ていた。『もう二度と会いたくない、連絡もしないでくれ』とのことだった。

「くそ、いったい何なんだよ……」

 夕食を食べ終え、誰かに相談しようと思い立った彼は、大学で知り合った友人に連絡を取った。

「よう、今時間あるか?」

『時間? ないことはない』

 連絡を取った友人は学内でもかなりの変わり者として知られている人物だった。どうして彼と交友を持っているのかと、周りが気にするほどに正反対の性格をしていた。また、口が堅いので相談しにくいことを相談する時にはうってつけの人物だった。彼は、心の底から友人を信用しており、一番仲がいいとまで思っていた。尤も、友人のほうはそう思っておらず、「少々騒がしい知り合い」程度に見ていたのだが。

「時間あるんだな。なあ、変なことが最近多いんだよ」

『変なこと? 女捨てすぎて罰でも当たったんじゃないのか』

「違うんだよ、居ないはずの人影が見えたり水場がクロカビだらけだったり……一晩でだぜ?」

『普通じゃあり得ないな。そうなる前に変わったことはなかったのか?』

「あっ……」

 金曜日の帰宅途中のことを思い出したのだ。あの不思議な美少女に出会い、笑い掛けたことを。

『その反応だと、なんかあったんだな。また女捨てたのか? 20人の記録が21人になるぞ』

「ちげえよ、確かにさっき捨てられたけど、金曜日変な子にあったんだよ。あの豪雨の中で傘も差さないで美人が立ってたんだよ! きっとそいつにつけられたんだ!」

 少し間が開く。

『……ついにクスリに手を出したか。悪いことは言わない、自首しろ』

「幻覚じゃないんだって!」

 片手で持っていたスマートフォンを両手で持つ。

「それにクスリもやってない! 本当に見たんだよ、それからだ!」

『わかったわかった。お前の言うことが本当だとして、なんでその子がお前の後を着けるんだ? それにカビが生えた原因はそれじゃ説明がつかないぞ』

「確かに……」

『いいか、カビが生えた理由は俺にもわからない。ただ、人影の説明ならできる。お前が見たものが異常すぎて、無意識に動くものをその女の子だと脳が錯覚してるんじゃないか。実際には虫の陰や外を歩いてる人の陰なのにな』

 その説明を聞いて、彼の胸につっかえていたものが取れた気がした。

──確かにそうなのかもしれない。いいや、きっとそうなんだ。

「納得したよ……ありがとな」

『これくらいのことは慣れてる。ん?』

「どうした?」

『いや、ベランダに誰かいたような気がしたんだが……お前のそんなやっすいホラー話聞いて俺も幻覚が見えたのかもしれん。さっさと寝るとしよう、切るぞ』

「ああ。わかった」

 電話が切れる。

──ああ、やっぱり幻覚だったんだ。よかった、今日はよく寝れそうだ。明日、あいつに改めてお礼を言おう。

 彼はベッドに入った。ここ最近の不安が取り除かれたからか、ベッドに入るなりすぐに寝落ちた。

「……おやすみなさい」

 か細い声が部屋に響いた。


 月曜日、友人に問題を解決してもらったもののあまり眠れず、寝不足の状態で昼頃の講義を受けに大学に来た彼は、友人がいないことに気付いた。

「あれ、あいついない。休みなんて珍しい」

 いつもは休まない友人が休んでいた。彼は講義が終わったら連絡を入れようと思い、講義を受けた。もっとも、すぐに彼は寝たのだが。

 講義も半ばになったころ、彼は不意に目を覚ました。

 寝ぼけ眼で周りを見渡すと、明らかに異常な存在がいた。その黒髪は背中を覆うほどの量と長さを誇り、そして、あの時のように濡れぼそっていた。

「ひぅっ!?」

 息が抜けるような声が口から搾り出され、一気に覚醒状態まで彼の意識は引き上げられた。

 そこに座っていたのは、間違いなくあの少女だった。

 彼女の頭がゆっくりとこちらに回る。「目を合わせてはならない」、心がそう警告する。だが、彼の体は金縛りのように強張り、首はもちろん指までもがプラスチックでコーティングされたかのように動かなかった。

「うわぁぁ!!」

 彼は起き上がる。一応開いていたノートには板書の代わりに冷や汗の跡が記されていた。

「そこ、寝るのはいいが授業中に叫ばない。ここは動物園じゃないんだ」

「はっ、はい……」

 彼は頬をつねる。痛かった。

──ああ、あれは夢だったんだ……。ひどい夢だった、悪夢じゃないか。

 講義の残り時間は寝る気にならず、だからといって講義を聞く気にもなれなかったので、彼はそのまま上の空のまま過ごすことにした。一度頭を空にしないと、連日の怪奇現象もどきが頭の中を駆け巡り、彼を破壊しそうだったからだ。

 講義が終わる。彼はいつも話している集団には入らずに荷物をもって、そのまま次の講義だけでなく昼食も取らずに家へ向かっていった。

 後ろ姿を追う目が一対、その講堂にはあった。


 ベランダに面したカーテンを締め切り、部屋にある換気扇はすべて止める。ドアにはチェーンをかけた。

 彼はそんな薄闇の中心で掛け布団をかぶって、歯の根が合わないほどに震えていた。

 排水溝のごぼごぼという音、隣の部屋から聞こえる幽かなエアコンの作動音、彼の周りから聞こえる音のすべてに怯えた。「またあの少女がいるのではないか」、「大学にいたのなら部屋にも入れるのではないか」という恐怖が、あの出来事は神経衰弱が引き起こした悪夢だとわかっていても彼を包み込んでいた。

 スマートフォンが振動する。

 そのバイブ音ですら、彼にとっては心臓を貫く銃弾のようだった。画面を見ると、見知らぬ相手からのメールだった。

『明後日、昼間に大学のカフェに来てほしい。話したいことがある。それにあなたは友人の心配をしたほうがいいわ』

 その一文のみ。だが、縋るものを失った彼には一筋の希望だった。そのメールのおかげで、若干だが心が落ち着いたような気がした。

「……あ、あいつ大丈夫か聞いてみないと」

 友人へのメッセージを打っているうちに、彼は心が落ち着いていくのを感じた。恐怖心が消えることはなかったが、それでも冷静に考えることができるのはよかった。

 打ち終わって送信する。そのころには、あの夢か現かわからないものを悪夢として認識できるようになっていた。締め切られた部屋はすでに闇に沈んでいた。

「ああ、やっぱり夢だったんだ。……トイレ行ってから夕飯作らないと」

 ベランダから顔をそむける。その直後、カーテンは揺れ、そこに街灯に照らされた何者かの陰が浮かび上がり、消えた。


 翌日の火曜日、スマートフォンを見てみると、友人が彼からのメッセージを読んだ形跡はなかった。

「おかしいな……いつもならいつ送っても大体すぐに読んでるのに」

 今日は講義を休み、昼間に友人に会いに行くことだけ済ませようと彼は考え、昼間で布団にくるまっていた。あまり長く外にいると、またあの少女に会いそうだったからだ。

 友人のアパートがどこにあるかは何度か行ったことがあるので分かっていた。

 大学からそこまで遠くない友人のアパートに来てみると、そこはいつもと変わらない外観をしていた。

 一階に四部屋、二階に四部屋、計八部屋が南向きの窓と小さいベランダを持つクリーム色のアパートは、古いながらもしっかりとした構造で入居者を守っているように見えた。アパートに併設されている駐車場には車が二台止まっており、許容量に達していた。

「ここで間違いないよな……」

 友人の郵便受けを見てみると、慎重な友人らしくダイアル式南京錠が郵便受けにはついていた。ただ、彼は友人がよく使うナンバーを知っていたので、開けるのは難しいことではなかった。

「8845と……よし」

 開けてみると、そこには宅配便の不在票だけだった。ただ、それの日付を見ると月曜日に来た荷物だということが分かった。つまりは月曜日から友人は外に出ていないのだ。

 その事実が分かったとき、彼の背筋に冷たいものが走った。彼が連絡を取った翌日には何らかの理由で家から出ることができなかったのだ。そして、通話を終えるときに、友人は何かの影を見たといった。「何かの影」、その正体を知りたくなかった。

 生唾を飲み込み、冷や汗をかきながら、彼は二階にある友人の部屋に赴いた。

 階段を一段、また一段と踏むたびにカビ臭いにおいが鼻につくようになった。それに加え、なにやら空気が湿り気を帯びたように感じた。

 友人の部屋にたどり着く。

 部屋番号203を探す。

 見つけた。

 湿る手のひらをジーパンでぬぐい、彼はドアノブに手をかける。

 ドアノブを回すと、ドアが少しだけ開いた。中からは一週間放置した生ごみのような悪臭と湿り気のある臭い、カビの臭いが鼻についた。それに加え、虫が飛ぶような音が漏れ出た。

──鍵が開いてる……? あいつがそんな不用心なことを……? それに何だこの臭いは?

 処理しきれない情報量に襲われた彼の脳は、少しの間だけ思考することをやめた。傍目に見れば、ドアノブに手をかけた状態で突っ立っている彼はとても奇妙に見えたことだろう。

 思考停止から立ち直った彼は、一度ドアを閉めた。アパートの大家に話を聞いてみることにしたのだ。

「確か……大家さんは101号室だったよな」

 階段を下り、101号室に向かう。その影は二つあった。


 101号室のチャイムを鳴らす。

「すんませーん」

 返答はない。

 またチャイムを鳴らし、ドアをノックする。少し待ってみるが、中に誰かがいるとは思えないほどに中は静かだった。

「どうしました?」

 横から声を掛けられて、首を回す。そこにはスーパーの買い物袋を両手につりさげた中年の女性が立っていた。

「すんません、俺203号室の友達なんですけど、ちょっと前からそいつと連絡取れなくてー。それで大家さんなら何か知ってるかなーって思って」

「203号室? ああ、あの真面目そうな……。ちょっと待っててね、いま鍵取ってくるから」

「鍵空いてましたよ? 勝手に入るのはよくないかと思って入ってませんけど」

 大家は片方の眉を吊り上げる。

「あの子が施錠してないですって? とても用心深いのに……」

 少し考え込む仕草をしたあと、野次馬魂に火が付いたのかそれとも親心に突き動かされたのか、

「見に行ってみましょう。ちょっと買ったものだけしまわせてくれない?」

「ええ、いいっすよ。外で待ってるんで」

「ちょっと待っててねー」

 大家がドアを開けて部屋に入る。ほどなく、悲鳴が聞こえた。

「どうしたんすか!?」

 逃げるように出てきた大家は玄関の前でへたり込む。その顔には恐怖が貼り付いていた。

「何があったんすか?」

 呼吸のまだ整わない大家は、絞り出すように恐ろしい事実を告げた。

「れ、冷蔵庫の中が全部……カビてたの。プラスチックもなにもかも……」

 それを聞いた瞬間、彼は冷や水を浴びせかけられた気分になった。いや、そんな生易しいものではない。真冬のシベリアの海に後ろから突き落とされた気分というほうが正しいだろう。

 過呼吸寸前の息をどうにか整え、彼はなんでもいいから言おうとした。だが、それは無理だった。彼の脳は、すでに平静という言葉を忘れていた。言葉にならない音が喉から鳴る。

 先に立ち直った大家は、

「と、ともかくお友達の部屋に行ってみましょう」

 彼は頷き、先導する大家の後をついていった。それが限界だった。

 203号室へ向かう間、先ほどと同じようにカビのにおいが漂う。彼は目の前に広がるであろう光景が、すでに予想できていた。

 大家が203号室のノブに手をかけ、一思いに開けた。

 全開になったドアから、ハエやムカデといった腐肉を食らう生き物が堰を切ったようにあふれ出る。それだけじゃなく、先ほど嗅いだ匂いが周りの空気を侵食する。

「ウッ」

 大家が胃の中のものをぶちまける。彼も吐きそうになったが、吐き気をこらえて部屋の中に突入する。

 廊下には、黒い人型のものが倒れ、虫達がそこで乱舞していた。


 その後、警察を呼んだ大家と彼は警察から事情聴取を受けた後に帰された。

 部屋にあった黒い人型は握っていたスマートフォンから友人と考えられた。明確な結果は顔や指紋はすべて腐り落ちて歯の治療痕も判別できる状態ではなかったため、DNA検査をしなければわからないそうだが、ほぼ間違いないとのことだった。死因は司法解剖の結果を待つ必要があるが、心臓発作だと思われるとのことだった。

 友人が黒くなっていた理由はやはりカビだった。カビは遺体だけでなく、部屋のありとあらゆるところ、特に水場を中心に繁殖していた。

 ただ、その死亡推定時刻と彼との通話時刻が全くかみ合わなかった。これだけの腐敗は死後一週間以上たたった遺体が引き起こす、と鑑識課の刑事は言った。

 しかし、彼は日曜日の夜に電話で話したと証言して通話記録も見せたため、警察は司法解剖の結果を待ち、正確な時刻を割り出すまで待たねばならなくなった。

 家に帰された彼はどうしようもない孤独に襲われていた。

「あいつが死んだ……?」

 友人の死を受け入れられない彼は、ただ部屋の真ん中に立ちすくんでいた。脳は真っ白になり、そこに浮かぶのはイメージでもなんでもなく、ただの「無」だった。

 気づいたら、彼は部屋の真ん中に座り込んでおり、締め切ったカーテンの隙間から、朝日が差し込んでいた。

「あさか……」

 

 水曜日。

 昼頃になって、彼は大学のカフェへと赴いた。一睡もしてない彼は、さながら歩く亡者のようだった。

 誰が呼んだのか徹夜明けの血走った目とカフェの中を探していると、明らかに彼の目を追っている女の子がいた。身長は座っているからわかりにくいが150㎝くらいに見え、どちらかというと美人の部類といえる顔だちをしていた。状況が状況でなければ、彼は彼女を口説いていたのかもしれない。

 対面の席に腰掛ける。それを拒否しないあたり、彼女が呼んだ主だったようだ。

「はじめまして、あなたね」

「あ、ああ。俺の名前は」

 彼女が空間を切るように彼の発言を遮る。

「自己紹介はいいわ。あまり深いつながりを作ると、私にも彼女が来ることになる。それだけは避けたいから」

「彼女……知ってるのか」

「ええ、いつもあなたと一緒みたいよ。今は人が多いから近寄ってこないけど、人が少ないと私も危ないの」

 彼は彼女の発言に冷や汗をかき始めた。

「あいつは……あいつはなんなんだよ?」

「彼女は濡女子、おなごなんて授業中いつも寝てるあなたには書けないでしょうけどね。妖怪の一種で、雨の日に現れやすいわ」

「雨……?」

「あら、金曜日のことよ。あなたは確か笑いかけたはず。彼女はね、女の子の執着心の集合体で、彼女は自分の好みの人を探して、そして気に入ると一生放さない」

 彼の冷や汗はクーラーが効いているはずのカフェの中でも、シャツを濡らすほどに噴き出していた。

「一生放さない……?」

「ええ、死ぬまでね。いえ、死んでもしばらくは体をもてあそぶわね。魂は死んだ時点で一緒になるらしいんだけど……ああ、話がそれたわ。それだけじゃない、対象とかかわりのある人間をじわじわと殺していくの。逃がしたくないのね、彼女は。悲しいことだけど、たぶんあなたの家族はすでに彼女に殺されているはず。あなたもご友人の末路は見たでしょう?」

 最後の一言に、彼は激昂した。机にこぶしをたたきつけ、椅子から立ち上がる。

「冗談でも言っていいことと悪いことが!」

 また彼女はさえぎる。そして変わらぬ声のトーンで

「冗談ではないわよ? こんな品のない冗談を言うほど、私はユーモアにあふれてないの」

 膝から力が抜けたかのように彼は椅子にもたれかかった。

「お悔やみを言うわ。あなたの家族にもね」

「確定では……ないんだろう?」

「確定と必然は違うわ。もし死んでいなかったとしても、いつか必ず彼女の手にかかって死ぬ。それは必然的なこと」

 彼は言葉を失った。いや、失わされた。

「彼女の呪いを解く方法はない。そしてあなたが独りになったとき、彼女はあなたを殺して一つになる」

 彼は目の前にいる女が信じられなかった。残虐な推測を、声も変えずにただ淡々と並べたてる人間なんて見たことなかったからだ。

「どうして俺を……?」

「残念だけど、それはわからないわ。伝承でも特に決まっていないの。あなたみたいなクズから名僧までいろんな男が狙われているから」

 そこで彼女は舌で唇を濡らした。

「あえて言うなら……因果応報、自業自得ってとこじゃないかしらね。数多くの女性を捨てあなたは、絶対捨てられない女を拾ったのよ」

 彼女は椅子から立ち上がる。

「さて、これで言いたいことは言い終わったわ。カビ臭いにおいがして、あなたのほうをみたら濡女子が付きまとっていたから、死ぬ前にせめて正体くらい教えておこうと思ったの。あなたのメールアドレスはあなたがいつも話してる連中から聞き出したわ。じゃあね」

「待ってくれ、何か逃れる方法が……!」

「ないわ。あってもクズには教えない。ただ、今日は幸運なおかげで、まだ生きていられるわね。明日は知らない」

 そういい捨て、彼女はカフェから出て行った。

 彼はしばらく立ち上がれそうになかった。うつむいている彼の下にある天板には大量の汗と涙が水たまりを作り、絶望感からか目は限界まで見開かれていた。彼を見る目は好奇に満ちていたが、そんなことはどうでもよかった。

 差し迫った死だけが、彼の認知できる唯一のものだったからだ。


 結局、彼が立ち上がることができたのはカフェが閉店する間際だった。立ち上がれても、彼の心はそこになかった。

 そこから先、どう家に帰ったのか何を食べたのかはわからなかった。

 ただ、彼の心にあったのは死への恐怖と自らの罪を認めないための逃避、濡女子への怒りだった。

 その日の夜は、一分が一日に感じるほどの長さだったのに、眠りに落ちることができずに頭を抱えていた。

──いつ濡女子に襲われて自分が死ぬのか、明日か明後日か。一人にするためにどれ位の時間がかかるのか。もしかしたら、常に友達を作り続けるなら寿命まで生きていられるかもしれない。でも、そんなことは無理だ。

──俺が女を捨て始めたのは、中学の時に女に捨てられたからだ。そいつは何人も彼氏を作って、その全員と寝てたんだ。そいつが俺をこき下ろして捨てたから、女共に同じ思いをさせようとして、俺はそいつの真似をしただけなんだ。それに簡単についてくる女のほうも悪い。俺の悪い噂なんて聞いてるのに、俺についてくる。だから、俺は悪くないんだ。全部女のほうが悪いんだ。

──なんで俺なんか狙った。男なんてそこらへんにいっぱいいるじゃないか、どうして、どうして俺なんかを……。

 風呂場の半開きになった戸から、一対の目がずっと彼を見つめていた。床に水滴が落ちる音が聞こえる。その人影が笑ったような気がした。

「やっと二人になれそうね……」


 木曜日。

 結局、昨日も今日も寝れなかった彼は、ただ部屋の真ん中で絶望に飲み込まれていた。

 目の下のクマや二日で急激に増えた皺と白髪のせいで、彼を知らない人が見たら中年の浮浪者だと判断するであろう程に衰弱していた。尤も、彼の姿を見られる人間はいなかったのだが。

 絞り出すような呼吸音、姿勢を変えるときの布ずれの音、蛇口から落ちる水滴の音だけがその部屋を支配していた。

 ふと、彼が絶望の淵からすこしだけ体を出したとき、風呂場のドアがスライドする音がした。

 振り返る彼が見たものは、あの金曜日と変わらない少女が風呂場から出てくるところだった。

 アドレナリンによって、一気に覚醒状態にまで引き上げられた彼の肉体と精神は四つん這いになって、部屋の隅へと逃げた。

「やっと二人っきりね……」

 蚊の鳴くような、しかしはっきりと聞こえる声が狭い部屋に響く。

「あ、ああ……」

「ずっと待ってたの……貴方が一人になるまで……」

 濡女子の髪から雫が落ちる。雫が触れた床は瞬く間にクロカビに覆われた。

 その光景を見た彼は、彼女が一連の怪奇現象や友人を殺した真犯人だとはっきりと分かった。それと同時に、彼の胸の中に怒りが沸き上がり、何かがはじけた。

 壁を背に立ち上がり、怒りに満ちた目を濡女子へと向けた。

「お前が……お前が俺の友達を……!」

「ええ、必要なかったもの……貴方が必要なのは私だけだから。必要のないものはいらないでしょう?」

 濡女子が彼に近づく。その距離はもう1mもなく、吐息がまじりあいそうな距離だった。

「来るな、来るなぁあ!」

「……」

 彼女が俯き、止まる。

「お前なんて必要ない! さっさとどこかに行け!」

 その言葉を吐いた瞬間、部屋の空気が凍った。

「そんなわけ……」

 彼女が顔を上げる。その顔には憤怒と狂気が入り乱れていた。

 息の抜ける音ともに、彼はへたり込む。その顔を見た彼の体は芯から冷え、体が自分のものでないようだった。

「そんなわけないじゃない、貴方が私を必要としてないわけないじゃない……だって、貴方は独りだもの。寂しいでしょう? だから、寂しくないよう、ずっと一緒にいてあげるから。ずーうっと」

 心臓の鼓動がうるさいほどに耳の奥で響く。

「はっ……はっ……」

「だから、ほら……一つになりましょう? 一つになれば寂しくないわ? 寂しいから冷静に判断できなくなったのね? ねえ、そうでしょう?」

 畳みかけられるセリフ、美しい顔に浮かぶ憤怒と狂気、暗く狭い部屋の中で追い詰められていること。そのすべてが彼を苛む。

 彼女がさらに近づく。彼にはそれを拒否できるほどの気力はもう残ってなかった。

「私を受け入れてくれるのね? 逃げないでいてくれるのね? さあ、腕を広げて私を抱きしめて……?」

 無意識なのか操られていてなのか、彼は彼女を受け入れるために腕を広げる。

 そこに彼女は体を滑り込ませた。彼と彼女の体が触れた部分にカビが広がり、数秒で彼の胸はカビに覆われて黒くなった。

「さあ……」

 彼女の唇が彼のと重なった瞬間、くぐもりながらも鋭い悲鳴が狭い部屋に響いた。その後、何も聞こえることはなかった。それは彼の耳の中も同じだった。


──数週間後。

 彼のマンションの前には数台のパトカーと少し形の変わった消防車、救急車がいた。

 数時間前、マンションの大家から『住んでいるはずの人がいなく、部屋が異常な状態だ』との通報があったのだ。警察は警官を派遣したが、部屋の衛生状態が危険なレベルであるとの判断のもと、消防の化学機動中隊と救急車が彼の部屋に派遣され、マンションに住む住人たちの搬送と部屋の除染を行っていた。

 その部屋の状態は異様だった。

 壁だけでなく、エアコンや換気扇、家電の中までがすべてカビに包まれ、電気ポットなどの小さな家電に至っては半分朽ち果てていた。そして、カビのせいか湿度は常時90%を超えていた。防護服なしの人間が一時間もいれば、ほぼ間違いなく何らかの感染症に陥るほどひどく汚染されていた。

 また、ムカデやハエ、ゴキブリなども大量に繁殖し、新たな生態系を形作り、生命を育んでいた。

 そんな地獄のようななかで、化学機動中隊の隊員が彼を見つけた。正確には、彼と思われるカビの塊を見つけた。

 体は壁に張り付いており、腕を胸の上で誰がを抱きとめるかのように組んでいた。顔はわからないものの微笑んでいるかのように見えた。

 防護服を着用した隊員の一人がつぶやく。

「これはいったい……?」

 除染作業の準備をしながら、もう一人の隊員が返事をする。

「どういうことなんだろうな……。現場は長いが、こんなのは見たことがない」

「先輩でもですか……」

「ああ……。ただ、一週間前、千葉でも同じようなことがあったとは聞いた。亡くなっていたのは3人で、資料があってればここの住人の家族だった。状態はほぼ同じだろう。問題は原因だな……」

「家族もですか……とはいえ、この状態じゃ証拠も何もかも消されてそうですね」

「まあな。ともかくだ、まず除染するぞ」

「はい」

 防護服を着ていた彼らにはわからなかったが、空気が動いた。その動き方は、まるで人が玄関から外へ出るかのような動きだった。


 そのころ、外では一人の刑事が外で事情聴取をしていた。

 だが、実りはほとんどなかった。あえて言うのならば、彼の階下の住人が『数週間前からほとんど無音で、数日前から異臭がしはじめたので大家に相談した』という程度のことだった。

 彼は独り言をつぶやく。

「前の発狂したガイシャといい……不可解な事件だな。そしてここだけじゃなくて、千葉でも一か月ほど前にも同じような事件が起きている。前のと今回の二件のと千葉のには共通点はない……か」

 刑事は後頭部を掻き、手帳のマインドマップを見つめる。

「ただ、何か引っかかるんだ……人の仕業とは思えない」

 空を仰ぐ。そこに答えはなかった。


 ある豪雨の日、駅に立つサラリーマンは対面のホームに美人を見た。

 そして、彼は濡れた髪をもつ彼女に思わず微笑んだ。

 どうも、2Bペンシルです。閲覧誠にありがとうございます。なんでしょうね、またしても徒然と書いてたら、妙にえぐいのができました。

 さて、今回のヒロイン? の『濡女子』なんですが、伝承で伝えられているのが「雨の日に出てきて、微笑みかけると一生ついてくる」ってだけなんですよね。あと愛媛の一部地域では「やかましい」というといなくなるという伝承がある程度でしょうか。というわけで、ここに出てくる『濡女子』は私の創作です。

 小説を読んでいて、「なんで六日分なんだろう」って思ってくれる方がいらっしゃいましたら、私としてはうれしい限りです。「あれ、これ六曜じゃないか」と思った方がいらしたら万歳ですね。

 実は金曜日が赤口で、一日一日が六曜に対応しています。一日が多くの場合2つの節に分かれているのも午前と午後の意味だったりします。まあ、先勝がちょっとうまく対応させられなかったのですが……。もし、そこまで気づいて楽しんで? くれる方がいらっしゃいましたら、個人的にはとてもうれしいです。

 さて、次回はだれが出てくるんでしょうね……。ネタ集めしないと……。

 閲覧してくださった皆様、最後までありがとうございました。また、次回作があればよろしくお願いいたします。

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