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戦神アルの世界荒らし  作者: こまい
第1章 地上荒らし編
13/29

13.龍族のお出迎え

今回は少し短めとなっております。

 

  「……何者だ?俺の山に入るのは。」


  魔力に覆われた山に入って来た異物を察知したのは、その山の頂きで座ってる龍王だ。一応性別はオスとなっている。


「どうやら、人間が4人入って来たようでございます。」


 龍王の呟きに返事したのは、龍王の側近であるバニパルだ。


「人間がこの山に入って来たのは何年ぶりだろうか。しかも、4人か。これはまた、面白い事になりそうだ。」

「そのようでございますね。」


 龍王はそう言うと、不気味な笑みを浮かべながら天を見上げた。


「さては、これも例の事に関係しているのか?」

「まさか。たかが人間ごときが、例の事に関係しているはずがありませんよ。」

「しかしこの山に入って来たのは事実だ。それだけでも一応の敬意は払わなければならない。」

「ですが………」

「まあ、お前の言いたいことも分かる。それでは、バニパルよ。この山の精鋭隊で人間を試しに行ってこい。」


  これはこの山のしきたりである。龍族ではない者がこの山に入って来た時に、この山に住む龍族の誰かが侵入者の力を確かめに行く、というものだ。龍族の間では試練、と呼ばれている。


「良いのですか?精鋭隊を行かせたら確実に人間共は死にますが。」

「別に構わん。俺が求めているのは、俺と対等に戦える者だ。そうでないならわざわざ歓迎する必要はない。」

「はっ。では、行って参ります。」


 精鋭隊はこの龍族の中でも特に優れた者を集めた軍隊だ。もっとも、軍隊と言っても6人しかいないが、精鋭隊が本気を出せば地上は壊滅すると言われている。ちなみにその隊長はバニパルで、龍王の次に強いとされている。だが、龍王とバニパルの力の差はとても大きく、たとえバニパルが5人いたとしても、龍王に勝つことはできないだろう。


「ふん、人間共なんぞ、この私が叩き潰してくれようぞ。」


 しかし、戦う前から既に勝った気でいるバニパルはこの後、信じられないものを見る事になる。





「山へ入ったは良いんだが、誰も近づいて来ないな?」

「そうねぇ。ちょっとおかしいわね。いつもなら、必ず誰かが遊びに来てくれるのに。」


 龍の威圧に耐えるための修行を終えた4人は、無事に山へ入ることが出来た。

  しかし、以前にもこの山へ入った事があるアルとイシスは、違和感を感じていた。


「まあ、遊びに来るって言っても、向こうは本気で俺たちの事を殺しに来るけどな。」

「私達にとっては遊びも同然でしょ?」

「否定は出来ないな。」


  実際のところ、龍族は龍王を除くと全く脅威にはならない。もっとも、それは俺らが神だから言える話なのだが、龍族におけるナンバー2のバニパルでさえも、余裕で俺らは勝つ事ができる。

  問題なのは龍王だ。全力が出せない今の状況で勝てるかどうかは分からない。しかしそれは1対1を行った場合なので、今回は問題ないだろう。なにせ、こちらは4人もいるからな。


  ちなみに以前ここへ来た時は神界が存在せず、神たちは全員地上で生活していた。そのため、当時は地上で過ごすために魔力を消耗する必要がなく全力で戦えた、というわけだ。


「そういえば、神界が生まれたのは800年くらい前のことだったか。」


  神がこの星を生み出したのは約1000年前のことだ。それから約200年ほどの年月をかけて地上を創り上げ、さらに神界を創って、神たちはほとんど全員そこへ移住した。

  それを考えると、この星の歴史はまだ浅い。しかし、地上に住む人間や魔物たちがここまで成長したのは、神の尽力があったからだろう。


「神界ってもともとあったわけじゃないんですね?」

「ええ、そうよ。この星が創られて、その後に神界が創られたの。」

「…………どうでもいい。」


 俺は、トリーの言葉に思わず苦笑してしまった。それもそうだ。人間にとって神界なんて全然関係のない場所だし、そこの歴史を教えられたところで全く意味がない。


「…………?」

「いや、なんでもねえよ。」


 そんな緩い会話をしていた事で、トリーとアイリスは龍族の縄張りに入ったのにも関わらず、とてもリラックスできていた。


「お!やっと来たな。」


 山へ入ってからかなり時間が経ったが、やっと龍族が遊びに来てくれた。


「って、あれもしかして精鋭隊じゃね?」

「そうねぇ。多分一度に人間が4人も入って来たから、警戒してるんじゃないの?」

「ああ、そうか。今の俺とイシスは人間やってるから、神だとバレないわけか。」


  精鋭隊が近づいてきた事を確認した俺らは、その場で止まり、彼らの事を待つ。

  そうして現れたのは、6人の人間だった。


「あ、あれ?人間がなんでこんな所にいるんですか?」

「…………龍じゃないの?」

「ん?お前ら知らなかったのか?龍族ってのは、龍の姿にもなれるし、人間に似た姿にもなれるんだよ。まあ実際、人間に似ているからといっても、身体能力は向こうの方が圧倒的に上なんだけどな。」

「そ、そうだったんですか。」


 どうやら2人は龍族についてよく知らなかったようだ。しかし、それも仕方ない。なにせ普通の人間なら、龍族に会うような事なんてまずないからだ。


  そんな会話をしていると、龍族のうちの1人が話しかけてきた。


「おい人間共。なぜこの山へやってきた?」

「ちょっと龍王に会いに来ただけだよ。って、お前バニパルじゃねえか?懐かしいなー。」

「!なぜ貴様は私の名を知っている?」

「さあ?なんでだろうな?」


 どうせここで俺の正体をバラしても信じてくれないと思うので、あえてそれについては黙っておいた。


「ふん、まあいいだろう。龍王様に会いたいのならば、まずは私たちの試練を受けろ。」

「いいわよ〜。じゃ、私とアルがバニパル含めて4人を相手するから、トリーちゃんとアイリスちゃんは残りをよろしくね?」

「ほう、試練の内容まで知っているのか。本当に貴様らは何者だ?」


 まあ確かに只の人間が龍族の試練について知っているわけがないもんな。もっとも、俺とイシスに関しては、人間ですらないのだが。


「俺らに勝ったら教えてやってもいいぜ。じゃあ、始めるぞ。」


 そうして俺らは試練を始めた。

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