広がる風は萌黄色
顔は平凡、体格は細い薄いのヒョロ体質。人間苦手のコミュ障。最近ニートを卒業したばっかの俺、佐々木 優《ささき ゆう》
データ入力のアルバイトを本日も黙々こなして、お給料という外貨を稼ぐ決意のもと玄関開けたら視界の先は別世界。振りかえっても別世界。視界に入るのは倒れそうなドアとドアの枠と大自然。
今、泣いていいかな?異世界?おいおいふざけるな!ようやくアルバイトにも慣れてきたコミュ障に新世界なんてどんな罰ゲームだよ。持ち物は出勤鞄と今着ているジーンズと長袖シャツにダッフルコート。足元はハイカットのスニーカーってそりゃないよ。はぁ……
とりあえず、ドアとドア枠を静かに倒し周りを見る。瑞々しい草花が風に波打つ。完全に平成の日本のコンクリートジャングルでは無い。
ため息が出る。今は生き残ること考えなきゃ。手ごろな小石を拾ってコートのポケットに入れる。
確かジーンズのポケットにはハンカチ代わりに100均のバンダナ入れてたはず。
右手で、右側のポケットの中を確かめる。あったあった。そういや、今日は珍しくて買った手ぬぐいも鞄に入れてたっけ。
出勤鞄に色々入れて仕舞う癖がこんなところで役に立つとは、思わなかったよ。
軽くバンダナの端を捻り、真ん中に小石を包めようにする。簡易式携帯投石器の出来上がりっと。
「生き残るかなぁ……」
俺の弱々しいぼやきは草花の波に消えていった。
初小説なので拙いものですがよろしくお願いします。