第1話 異世界に転移しちゃいました。
「ふあぁぁぁぁ。よく寝た」
目を覚ますとそこは……真っ暗でよく分かりません。もっかい寝よ。お布団にくるまろうとした私の耳に、いるはずのない人の声が聴こえました。なんで?
「オイオイ、ここ何処だよ」
「え? 私何も覚えてないんだけど」
「きゃあぁぁっ! 助けて」
「だ、誰れだよ、お前たち」
「どこ触ってんのよ! 」パシッ。
「痛えな!真っ暗で何も見えねえんだよ!」
「誰か〜。誰かいませんか〜?」 エトセトラ……エトセトラ……。
ウルサイな、も〜。これじゃゆっくり眠れな……くぅぅぅ……。
あ、そうそう眠ってる間に自己紹介します。私はカンナ……。それ以外憶えていません。自己紹介以上! マル。
「アンタも起きなよ〜」
「うぅぅ〜。おはよ」
茶髪のかわいい感じのお姉さんに起こされました。
「何のんきに寝てるのよ〜。アンタは何が起こってるのか知らない?」
「知らない」
「即答しないで少しは考えてよ!」
「……分からない」
「3秒しか考えてないじゃない!」
「2.9秒」
「大して違わないじゃない!」
「プロレスでは重要」
お姉さん急に驚いています。
「プロレスって、何? ア、アンタ何か覚えてるの?」
「何……だろ……」
確かにプロレスって言ったよね、私。
プロレスって何? 何なのコレ?
ま、いっか。そのうち思い出すかも。それより寝起きのプリン食べたいな。
プリン? プリンって言ったよね、私。言ってないけど。思っただけだけど。
ギギギギギィ。
「何だこの音?」
「ウチら殺されちゃうわけ」
「ザワザワ、ザワザワ」
大きな軋む音がして眩しい光が漏れてきました。みんなざわついてます。私は怖いし眩しかったのでお布団に隠れました。
「貴様らぁ!こっちに来い!」
皆んなぞろぞろ付いて行きました。私もとてつもなく名残惜しいけど2度寝の欲求に抗い、お布団から出て最後尾に付き暗い部屋を後にしました。
そこは大きなドーム型の部屋になっていて私達12人はその部屋の中央に横一列で列ばされました。
「はぁ〜。此度の召喚の儀。数は多いものの小物ばかりときておる。失敗かのぉ」
祭壇?みたいなところで白いおヒゲのおじいちゃんが肩を落として溜息をついていました。
オレ、失敗?
「まあよい。ワシは大魔導師プリンシス・フォン・エルキュール辺境伯。お主らは自分の名前以外は何も憶えていない。それでよいかな?」
いいですけど、おじいちゃん名前負け甚だしいよ。プリンシス感ゼロだしエルキュール感も2くらいかな、もちろん100点満点で。
だけど大丈夫、大魔導師感80は固いよ。
「何が起こっているのでしょうか? 説明をして下さい」
「そう焦るでない。ワシも名乗ったのじゃ。お主も名乗ったらどうなのじゃ」
眼鏡をかけたメガネ君がおじいちゃんにハキハキ質問しました。ああゆう人苦手……。
「シンジです」
イガリくん? 何故かその単語が頭に浮かびました。お父さんはゲン……ジイって言わない? 違った。ゲンバアかな?
「ふぉっふぉっふぉ。お主見込みがあるかものお。それでは皆に答えようぞ。ヤーマダ君、例のものを」
ヤーマダ君と呼ばれた赤い服のオジさんが持ってきたものは、ザブトンでも幸せでもなくパンフレットのようなものでした。
で、出来た! うん、自信作! パンフレットと掛けましてジャムパンと解きます。その心は案内(アン無い)でしょう。 ザブトン・ゲット!
私は喜び勇んで手を上げました。だけど誰も気づいてくれませんでした……。
この時私はまだ気付くことが出来ませんでした。コレは私の呪われたスキルのせいであることを。だって、それ以上に気がかりなことがあったから……。
ジャムパンって何? アンって何? 何で謎掛け? 何でいい答えにはザブトン貰えると思ったんだろ……。そして10枚たまると素敵な商品が……。だけど8枚たまった頃に理不尽に取り上げられて……。
いったい……何で?