美咲 早希
人間界に降り立ったこの女子の名は美咲早希。元々は吾輩の部下であるが、故あって人間の部下として暫く過ごす事になる。
モニターの画面が一気にアップになったかというアングルからそのまま上半身をニョキっと出して、耕太の部屋へ侵入。
「初めましてご主人様、私は美咲早希と言います。
よろしくお願いしますね」
「あ、どうもよろしく……俺は田辺耕太だけど、知ってるよね」
よろしくもなにもあったもんじゃないだろうに。まあ、挨拶が基本とかいう人間の風習からすればこれが無難なのだろうな。
「あの、私は何をしたらいいのでしょうか」
「え、決めてないんだけど」
まさかのノープラン。思いつきでこんな酷い契約もあったもんじゃないだろうに。要するにただの雑用しかさせないのか?
「それではお掃除でもしておきますね」
「あ! そっちは自分でやるから、そのこの辺片付けてくれると助かるかな」
多少のエロス等、それを糧にする悪魔に対して隠す必要などあるまいに。今更だが、メイドタイプを選んだのは失敗だったんじゃないのか?
「あっと、時間! もう時間ない……バイトの時間だ」
なんと間の悪いやつめ。
「私もお供しましょうか?」
「え? お供……あの、姿とか周りの人に見えちゃうんじゃないの?」
「どちらでも、可能です」
クックック。迷っとる迷っとる。
「えっと、姿を変えたりとかも出来るの……?」
「出来ます」
これから暫く考え込んだ挙句に、仕事を休むという電話を入れる耕太。そんな態度で仕事されてもこっちの世界に来てからだとて大変だろうに。
とにかく今は一つずつ、何が出来るのかを確認しているようだな。
「じゃあ、学校に転校してきていきなりラブラブなラブコメ展開とかも出来ちゃうの!?」
「そうですね、多少の時間はかかりますけども……
学校にも行ってらしたのですか」
「う、……まあ、もしもの話なんだけどね……例えばバイト先に潜入する事も出来たりする?」
「可能ですけども……?」
ここでまた長考に入る。だが、此奴めはなかなか時間がかかるだけで面白い答えを出すのだ。今回もそれに期待しておこう。
「それじゃあ、全く俺のことを知らない新人として入ってきて、そこから恋に落ちるという女の子を演じて欲しいんだけど、ダメかな?」
「いいですけど、演じててもご主人が知ってたら意味がないように思うのですけども」
「ああ、そうだよねぇ……恋をするようなそういうシチュエーションを味わってみたくてさ……」
「それでしたら、期間を決めて記憶を操作してみてはいかがですか?」
「そんな事も出来るのか!! それなら……一週間だけ、俺も分からないようにとか出来ちゃうのかな」
「はい」
バイト先に潜入するという事は容易い。だが、今回はこれが裏目に出る結果になるのだ。策士、策に溺れるとはこの事だな。
不測の事態、耕太に近づいてくる人間が実際に居た場合とかな。
少しずつですが更新していきます。
それから評価ありがとうございます!
物凄くやる気が出ました。 ヽ(´▽`)/