吾輩は悪魔である
「3つの願いを叶えてやろう、ただし……」
「それじゃ、一つ目はね」
まだ言葉の途中だというのにいきなり言葉を遮って新たな言葉を返してくる。
「え、いや、早くない? もうちょっと考えてから、そうじゃないときっと後悔するぞ?」
「そうは言ってもなぁ……俺はニート気味でこんなシチュエーションなんて山ほど考えてたから、もう完璧なんだよね」
悪魔である吾輩に向かって完璧だとぬかすこの輩、名前を田辺耕太というそうだ。
完璧というからにはどんな答えが出てくるのか? 気になるところではある。
「試しに言ってみろ、ホレ」
「まずは残りの2つの願いが健康なうちに叶いますようにだ」
期待した吾輩が愚かだった。こいつ、ただググっただけだ。本当にもうちょっと考えてからものを言えよなぁホント。これは簡単なトリックで、2つ目の願いが若いうちに願いを叶えてくれと言うつもりなのだろう。
そうするとどうなるのか?
不老不死の出来上がりである。3つ目の願いは言わなければそれでずっと若いままなのだ。不老不死とかの次元に住んでる訳ではない吾輩に言わせてもらえば。
交通事故にあっても健康体で居られて、それで現実で何も不思議がられないとでも思ってるのかね?
人間を超越しちゃってるんだよねぇ。
「まあ、なんだ、説明するのも面倒くさいが……一応聞くぞ?」
「なんだ? 願いは叶えられないのか?」
「いや、そんな事しなくても不老不死になんかいくらでもなれるしな」
呆気に取られてしまう此奴の顔がまた何ともマヌケで面白い。人間というのは本当に愚か者の集まりだな。ググった知識なんてものは所詮調べて分かった程度。
到底、知っているとは言えないような知識でしかない。
「……ちなみに不老不死になったらどうなるんだ?」
「ふむ、まず死んでも生き返るという特殊な身体を持ってしまう事になるのでな、人目を遠ざけて生きなければならない。その上協力者が居ないと生活自体が苦になるだろうな。
もうひとつ言えば、その協力者は不死ではないし歳も当然のようにとってしまう。
何度でも悲しい別れをすることになるな……」
この辺りからこの男もどうやら分かって来たようだ。不死というものになれたからといって存外楽しい事など起こらない。
というか不幸の方が多いという事を。
「少し考えさせてくれ……」
「おおっとぉ? それが1つ目の願いか?」
「違うわ!」
悪ふざけもほんの少しだけ入れておく。悪魔っぽくな。
それからどれだけ悩んだだろうか。我々悪魔にとって時間なんてものは無意味だし、当然測ってもないのだが、それでも多分人間単位で言ったら相当悩んでいたと思うな、この様子は。
「それじゃ、最初の願いは……」
これが結構的を得ていて実に面白い願いだったのだ。その願いの内容とは……。