序
この小説は知っている方は知っていると思われるある遊びを元としています。
残酷表現あります。怖いものが苦手な方はお控えください。まぁ僕程度の文章力じゃ怖くないでしょうが。
「ツカマエタ」
狂気に満ちたその顔はよく見知った――――――――
「■■■■■■■■■■――――――!」
響く咀嚼音。
↑
――おにごっこって知ってる?
最近学校内で妙なものが流行っている。
東京の北部に位置する支丞市。支丞市には2つの私立高校があるのだがそのうちの一つ、この零雨学園が歴史が古く、今はこの周辺でも屈指の進学校として人気がある。そんなこの学校で最近ある『遊び』が流行っている。僕がその話を聞いたのはついこの間、三日前だった。
「『おにごっこ』ってしってる?」
と、最も仲の良い友人から問われた。
「おにごっこって、あれだろ? 一人鬼を決めて他の奴らが逃げる。そして鬼が逃げた奴の中の誰かにタッチして今度はそいつが鬼になるっていう」
この年にもなって……というか日本人でおにごっこを知らない人はなかなかいないと思う。
「そう、それなんだけどね。最近それに関して面白いものが流行ってるらしいんだ」
「へぇ……」
高校生にもなっておにごっこ……? と多少疑問にも思ったが、特に何も言わないことにした。それはこの友人が『こっくりさん』をはじめとして、その手の都市伝説の『遊び』の話題が大好きだからだ。だから今回もそういった話であることは容易に想像できた。
「鬼真似ってかいておにごっこって呼ぶんだって」
鬼真似……?
たしかに『ごっこ遊び』というとなにかになりきって――ようするに真似をしてするものだからその漢字のあて方はあながち間違いでもないような気がする。
「鬼真似……」
聞いた言葉を口の中で反芻する。
「そう鬼真似。これどうやらうちの学校限定の遊びみたいだね。この話を初めて聞いたのが1ヶ月前、今は全校に広がってるんじゃないかな」
「そんなにか」
進学校ということもあり、この学校の生徒は比較的真面目な人間が多いようだ。故にこの手の噂はあまり広がることがない。しかしそんな中でも広まったこの話はよほど面白いのか、それともよほど伝染性があるのか。
「その鬼真似ってどうやるんだ? 普通のおにごっこってわけじゃないだろう」
「そりゃあね」
彼はポケットからメモ用紙のようなものを取り出しおもむろに何かを書き始めた。
「ほら、これがルール」
そう言って書かれていたのは大きく分けて2つの項目だった。
「二つあるのはなんで?」
僕が訊くと彼はあぁ、と小さく声を上げ
「上のルールは多人数用、下のルールは一人用さ」
「一人用……?」
僕は眉をひそめた。おにごっこなのに一人でできるものなのだろうか。改めて紙に書かれた『一人用』のルールを見てみる。
しかし書いてある意味がいまいち理解できなかった。
「これ、どういうことかあまり分からないんだけど」
「そのままらしいよ。俺も一人用はやったことないからさ。聞いた話。多人数は一回だけやったことあるけど」
「やったことないのか。お前ならもう試してると思ったけどな」
と何でもない普通に思ったことを言うと彼はニヤっと笑った。
「それだけどな、『一人用』をやるのはやめておいたほうがいいらしい」
顔をこちらに近づけてきて囁くように語りかけてきた。
僕はそれに少したじろぎつつ、切り返す。
「な、なんでだよ」
「ん、簡単さ」
一呼吸。
「一人用のゲームで負けると死ぬんだよ」
このとき警告されたのに。何故僕は――――




