第05話 バレたら厄介?
何故か小説を書き始めると忙しくなります。なんでだろう……。
拙い作品を見ていただき、いつも感謝の連続です。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
―――はぁっー……。
どこまで言ったら良いのやら……。
みんなが寝静まった夜、俺は窓の外を見ながら一人呟く―――
俺はプレゼントを渡し終わった後、そそくさと自分の部屋に戻ろうとドアノブに手をつけたが、残念ながら俺は部屋には入れなかった……。案の定、父上に呼び止められた。
「クレイオ、少し話があるんだ。私の部屋に来てくれるかい?」
特にこれといって断る理由も無かったので、
俺は父上の書斎に行った。
「そこの椅子にでも、座って」
「大丈夫です、ここで」
父上は、「分かった」と言って自分だけ椅子に腰を下ろして口を開く。
「私が聞きたい事、分かるだろう?」
俺は手と首で、さぁ? と表現する。
「そうかな。心当たりがあると思うんだけど?」
どうやら、あくまで俺の口から言わせたいみたいだ…………。
しかし、ずっと黙ってるわけにもいかないので、俺は答えた。
「あの腕輪のことですね」
父上は一度頷いてから
「そうだよ。あれは普通の腕輪?」
「いいえ」
俺の返事を聞いて、やっぱりかと言わんばかりの顔をしていた。
「続きは明日にしよう。もう子供は寝る時間だし遅くまですまないね」
「いえ……。おやすみなさい父上」
「あぁ。おやすみクレイオ」
それだけを交わして俺は部屋を出た。
――月がキレイだ。凛と輝いてる月は地球の夜空に浮かんでる月の五倍はある。
俺は、まだ一度も行ったことがない月明かりに照らされた街の方を眺める…………。大きいな。
父上は、俺にはまだ早いといって連れて行ってくれないが俺は、もう5歳になる。
外の世界も見ないと本だけじゃ分からない事もあるので連れて行ってほしい。
しかし来月から俺は社交界デビューするので、父上が駄目だと言おうが、これは覆ることのない決定事項だ。ハハハハ! 笑いが止まらん。
悪いな親父、俺も外の世界を駆け巡ってくるぜ!
それに、外の世界に出たら女の子とも、ムフフなことも……。
彼女が出来たら街でデートしたいな……。ここの世界のデートって何するんだろ?
でも、やっぱり彼女を作らないと話にならないよな……。
けど今、彼女欲しい!! って気分にならない……。
年齢の所為か? 性的な関心がないのか?
俺が5歳の時はどうだったかなぁ…………くそっ思い出せねぇ……。
それでも、いざ付き合うとなれば、やっぱり貴族の娘と付き合うのかな……。
たぶん基本的に、この世界の子は可愛いと思うけどさ……でも他の種族の女の子にも会いたいな……。
せっかくファンタジーな世界にいるし……。
どこまで行ったらいいんや……。
俺は、いつの間にか最初に悩んでたのと全く違うことを悩んでいた。
―――日が出て来た頃
まだ少し暗かったが、俺は廊下の足音に気付いた。人数的に2人か?
シエラかと思ったが時間的に早すぎる。
誰だ? と思いベッドの上から体をドアの方に向けると…………。
ガチャ。
ドアが開けられて、入ってきたのは父上と母上だった。
「あっ。起こしたかな?」
爽やかな笑みを浮かべながら俺に聞く父上。
「はい。廊下から足音が聞こえましたので……」
「それは残念ね。久しぶりにクレイオちゃんの寝顔を見たかったわ」
少し残念そうな顔をする母上。
「それで何の用ですか?」
「うん。少し早いかなと思ったんだけど……私は急ぎすぎるきらいがあるみたいでね。気になって今日は
早く目覚めてしまったんだ。だから昨日の話の続きをしに来たんだっ!」
と父上は笑顔で答えた。
しに来たんだ! じゃねぇよ! 俺まだ寝ときたいし、しかも何で母上もいるんだ?
それに昨日あれから、どこまで話そうか悩んだ結果……
結局なぜか、どこまで行くと違う種族に会えるのかって事に変わってしまってたんだっけ……。
しゃーない、なるようになるか……。
しかし、どこまで話せば及第点やろ? その境界線がなー。ぎりぎりのボーダーラインが分かんねぇ。
転生の事も話せば良いのか? でもそれは、やめといた方が良い気もするけど……。手っ取り早く終わらせれるのは間違いない。
質問されたこと全部『禁則事項です!』って答えられたら良いのになぁ。はぁぁ~、ため息しかでねぇ。
「それじゃあその前に何故、母上もいるのです?」
すると、母上は少し涙目になって答える。
「クレイオちゃんは、私がいたら嫌なの?」
「いや、そうじゃありませんよ。ただ気になっただけです」
「私が起きた時に起こしてしまってね。ララシーだけ寝かしたままで来たんだよ」
父上が少しだけ申し訳なさそうに言う。
「別に良いですよ。それじゃあ、どこから話します?」
「そうだなー、クレイオが話したい事からで良いよ」
またそんな無責任な……。質問してくれた方が楽やのに……。
この人は俺に甘いのか信頼してるのか、よく分からん。
もう俺が質問したろうやないの!
「じゃあ、腕輪からで……。父上は、何故あの腕輪が魔具って分かったんですか?」
俺は普通の腕輪と魔具の見た目だけじゃ見分けがつかない。見分け方があるなら教えて欲しい。
腕輪と聞いて母上は、私の分は? という目で見てくるが、母上はいったい何をしに来たんだ……。
「う~ん。勘かな? クレイオが渡す物だから、もしかしたらって思っただけだよ」
えっ……勘かよ。
「見た目で分からないんですか?」
「うん。職業の『魔具職人』を持ってたら、職業スキルで判別できるけど……遠くから見ても分からないよ。スキルを使うにも手に持たなきゃ使えないしね。それ以外は私も他の人も普通は見た目だけでは分からないな。」
父上は、『魔具職人』の職業を持っていた。
その父上が判別出来ないなら、本当だろう。
職業スキルね……。
職業スキルを説明すると、職業ごとに、いくつかの固有スキルのことである。
そのスキルはステータス表のスキル欄に表示される。
職業に関しては、ある職業にもよるが一定の熟練度を超えれば職業欄に現れる。
熟練度とは、いつの間にかたまるみたい。ゲージとかないから分からないけどね。
因みに俺は『魔術士』の職業を持っている。最近GETした。
何故そんなに早いかというと……父上が魔法を教えてくれる5歳になるまで待てず、自分で本を見て魔法を学んだ。その時にスキルの『熟練度大幅増大』を使って練習してたら……いつの間にかな……。ほとんどスキルのおかげだろう。
魔術士の職業は、貴族の場合だいたい5歳から親に魔法を少し習うので、魔法学院に入ってから早ければ3年で手に入るものらしい。
遅い気もするが、5歳の時からといっても魔力量が少ないので初級魔法しか教えられないから、なかなか熟練度が一定量いかないってのもあるんだけどな……。
それに魔法は剣や拳の攻撃力より絶大で極めれば最強の職業と言われてるから、それぐらいは当然だろう。
職業を手に入れると、例えば魔術師の場合……
職業スキルを使えるだけでなく、ステータスの『INT』『MND』『AGI』『DEX』の4つが大幅に上がるらしい 。大幅といっても、どれだけ上がるのかは知らんが……。
他の職業では、4つも大幅に上がらないらしく、もちろん『INT』も上がらない。
やっぱり魔法を使えるのは貴重みたいだ。
ステータスを上げるには魔物や敵を倒した時に得られる経験値が一定を超えたとき、つまりレベルが上がる時になる!!
その辺りは、ゲームとかと一緒だな。
しかしレベルに関係なく体が成長するだけで『VIT』と『STR』は上がるみたいだが俺は少し前から剣で素振りなどをして職業『剣士』を獲得しようと頑張っている。
素振りは某ハンターゲームで動きだけは覚えているから、たぶん大丈夫だ。
それに『STR』や『CON』も上げないと、実際に「もやしっ子」にはならないとしても心配だ。
そして職業は『戦闘系』と『生産系』の2種類に大別できる。
『生産系』は、俺が知っている限りで『武器職人』『防具職人』『魔具職人』『アクセサリー職人』『宝石加工職人』『調理師』『薬剤師』がある。
その中で、主に『武器職人』と『防具職人』は生まれ持った才能が必要だと、本に書いてあったが……
そう考えると街には、たくさんの武器屋や防具屋があるはずなのに、才能のある奴がそんなにいるのか?
とまぁ、疑問が生じるわけで……。結局、本なんてそんなもんだと割り切って無理やり解釈して納得してる。やっぱり外に出ないと分からないことが多い。
「クレイオ、今日は色々と質問するね」
何故か嬉しそうであり少し寂しそうだ。その表情に少し俺は戸惑うが、父上はそのまま話を続けた。
「私は思うんだ。クレイオは、あまり私達を頼りにしてないんじゃないかと思ってるんだ。だからクレイオが悩みを抱えてても、私達だと力になれないと判断して相談をしてこないのか、私たち親は信頼されてないのかなってね……」
「それは違う」「そんな事はない」と、すぐに答えたかったが言えなかった……。
俺は甘えていれば、親を喜ばせれる。実際に喜んでたから、それで良いと思ってた。
けど、それは違ったんだ……。
甘えるのと信頼は似てるようで違うと……。
何となく分かっていた。
そして俺は何より自分をさらけ出すのが恐いんだ。
たぶんそれは前世での影響だろう。
俺は親に期待されるのが嫌だった。勝手に期待するだけ期待して駄目だったら愚痴をこぼす。
俺は、それが何よりも辛かった。
自分は一生懸命頑張った…………けど、駄目だったものはしょうがないじゃないか。
そう俺は思ったが……親はそうは思わなかった……。
「もっと一生懸命頑張りなさい!」「何でお姉ちゃんはできるのに、あなたはできないの!」
いつしか俺は期待されないように仕向けた。すると俺の立場は、ますます悪くなっていくが、そんなのはもう関係なかった。
けど俺は親に分からないように勉強を頑張った。そして、だんだんと伸びてきて今までの俺じゃ行けない大学も目指せるようになっていた。
良いテストの点数も良い模試の点数も全部見せなかった。
家に帰っても塾で飯を食べてるからと言って、家では風呂と自分の部屋以外に行かない。
しかし母は俺の事を心配し始めた……。
「ちゃんとご飯は食べてるの?」「体調は大丈夫なの?」
俺は分からなかった。
俺は、いらない子じゃなかったのか?
どうして急に、そんなに優しくするんだ…………。
そして、その対応に耐えれなくなって俺は家出をした。
祖母の家では、そんな事を気にせずに過ごせた。とても楽だった。
そして結局、俺は何も分からないまま死んだ。
だからだろう。
俺が、どんな親であろうと信頼することができないのは……。
俺は、このステータスや能力をバラした時に期待されるのが嫌なんだ。だから勝手に理由を付けて見せないように自分に言い聞かせてたんだ。
俺が、そんな事を思い出してると、沈黙に耐えかねたのか父が言葉を発した。
「すまない。私達のこと信頼してないって本当は思っていないんだ。クレイオは頭の良い子だから、私達に心配をかけたくなかったのも分かる」
違う。俺が単に臆病なだけなんだ。
「けど、いつか子供は親の元から離れるんだ。子育てには終わりがないように思えるかもしれないが、そんな事はない。限られた時間しかないんだ……。こんな事を言うのは私の我が儘なのかもしれない。もっと親の私達を頼って欲しい」
いつも温厚な父上が、この時ばかりは少し怒ってるようにも見えた。
いつの間にか俺は泣いていた。
この世界で生まれて初めてこんなに泣いた。
鼻水まで流して、顔をぐしゃぐしゃにして泣いた。
けど、急に泣き出した俺に関係なく二人は俺を強く抱きしめてくれた。温かかった。
その二人の胸の中で俺は泣き続けた……。
今ならあの時、心配してきた母さんの気持ちが何となく分かる気がする……。