第1話:決意
「よっちゃん、起きてたらご飯食べに来なさい」
母さんの声がする。
僕は額から流れる雫を拭き取り立ち上がり寝巻のまま一階へ続く階段をおりる。
一階ではテーブルの上にパンと目玉焼きがおいてある。
「おはよう。 荷物の用意はできたの?」
僕はうなずき
「うん」
と答えた。
椅子に座り口でパンをくわえる。
「じゃあ母さんはもう仕事に行くから食器は水に漬けておいて」
母は小走りで玄関へ行き家を後にする。
僕はキッチンで包丁を手にとった。
犯人は僕らを刺し殺そうとしてくるだろう……
友人を守れるのは僕しかいない。
犯人はナイフという武器に安心しているはず、
なら僕はその安心から生まれる隙を狙って逆に刺し殺せばいい。
できないことじゃない
僕ならできる……
いや、やらなきゃならないんだ。
僕は包丁をタオルで巻き朝ご飯をすませ二階にあがる。
時間は午前6時30分。
集合時間まであと1時間30分。
今日の予定はバスでホテルまで行きそこで大きな荷物を預ける、そこから水族館へ行ってホテルでレクリエーション。
あとはご飯を食べて各自で部屋についているお風呂にはいる。
包丁を隠すために一度鞄の中の物を取り出し包丁を奥にいれる。
もちろん取りにくいと困るので奥に繋がる隙間をつくっておいた。
こうすればすぐに包丁をとりだせる。
集合時間まであと1時間もある。
適当にテレビをみる。
やはり緊張で心臓がバクンバクンと激しくなっている。
人を殺すという未聞の体験。
犯人を撃退したヒーローになれるかもしれないという期待。
そんな物が僕の中でごちゃごちゃと混ざりあっていた。
集合時間まであと30分くらいになった。
そろそろ家をでることした。
「行ってきます」
僕は決意と共に家を出た。