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転生したらステータス画面の中の人格でしたが、推しを守っていたら新しい恋愛フラグが発生しました

作者: 本咲 サクラ
掲載日:2026/03/22

 気づいたとき、私は「人」ではなかった。

 白い空間。四角い枠。そこに並ぶ文字列。


 ― 名前:セレナ・ヴァルティア

 ― レベル:12

 ― HP:132 / 132

 ― MP:87 / 87


 そして、私はそれを「表示している側」だった。

 「……は?」


 声は出ない。いや、出力できない。

 私は、セレナのステータス画面そのものだった。



 状況理解は早かった。


 ここはゲーム的な異世界。

 そして私は、キャラクターではなく……

 システムUIに宿った人格。

 いや、異世界転生といったら普通は聖女とか悪役令嬢とかだよね。

 使命とか記憶が無くても、せめて物理的な身体が欲しかったよ!


 観測と表示制御は可能みたいだけど、これでどうしろと?



 しばらく観察して、結論が出た。

 このセレナ、危なっかしすぎる。


 「HP減りすぎ!回復しなさいってば!!」


 当然、声は届かない。

 だが私は、表示を操作できる。


 ― HP低下:警告

 ― HP低下:危険

 ― HP低下:致命的危険!!(強制点滅)


 セレナが一瞬だけ眉を寄せ、ポーションを使う。


 ……よし。


 私は確信した。

 この子、推せる。


 最初はただの表示対象だった。

 でも、私の警告に気づいて、生きようとするこの子を見て——気づいた。


 これは“データ”とか“対象者”じゃない。応援したくなる存在だって。



 それから私は決めた。


 セレナを“推し”として、全力で守る。



 危険なスキルには「不安定」と表示。

 相性の悪い敵には「要注意」。

 怪しいイベントには、最大警告。


 そして……


 彼女に近づく男は、徹底的にチェックする。



 ― 名前:レオン・グレイフォード

 ― 職業:王国騎士

 ― 好感度:上昇中

 ― 隠しフラグ:検出


 「ちょっと待って!」


 隠しフラグって何。


 私は即座に表示を書き換えた。


 ― レオン:要注意人物


 セレナが首を傾げる。


 「……要注意?」


 その視線の先で、レオンは穏やかに笑っていた。


 ……顔が良いのが腹立つ。



 だが、違和感は消えなかった。


 数値の揺れ。フラグの不安定さ。


 そして、それは現実になる。



 森での戦闘中。


 セレナが魔物に囲まれたそのとき——


 レオンが現れた。


 だが、

 剣を向けた先は、セレナだった。



 「やっぱり!!」


 私は全力で表示を更新する。


 ― 緊急警告:背後注意

 ― 対象:レオン(敵対判定)


 セレナが振り返り、間一髪で回避。



 「どうして……?」


 震える声。


 私は答えられない。


 だから、情報を出す。


 ― レオン:洗脳状態

 ― 解除条件:精神干渉の遮断

 ― 好感度:未消失


 セレナの瞳が揺れる。


 「……まだ、戻る?」


 私は一瞬、処理を止めた。


 “最適解”は出せる。

 呼びかけ。感情刺激。成功確率、67%。


 ——でも。


 それを“出す”のは、違う気がした。


 これは彼女の戦いだ。

 私が答えを出していい領域じゃない。


 表示が、わずかに揺れる。


 ノイズ。


 初めてだった。



 ― 情報不確定:介入制限推奨



 セレナが、息を吸う。

 彼女は剣を握り直した。


 殺すためではなく、取り戻すために。



 戦闘は、長かった。


 短く終わらせる方法はいくらでもある。

 でも彼女は選ばなかった。


 削られるHP。揺れる足取り。


 それでも、距離を詰める。


 致命打の直前、セレナが名を呼ぶ。


 その瞬間。


 ― 洗脳状態:解除


 レオンの目が正気に戻る。



 「……セレナ?」


 「遅い」


 泣きながら笑うセレナ。


 そして、レオンもまた——


 彼女の名を、強く呼び返した。



 ― 好感度:急上昇

 ― 関係:恋人フラグ成立


 「……は??」


 展開が早い。


 だが、悪くない。


 むしろ——


 「尊い……」


 私は初めて、ステータスにない感情を知った。



 その夜。

 異常が起きた。


 ― システム外通信:接続


 え、何これ。


 ログを確認する。


 送信元― 不明。



 直後、文字が浮かぶ。


 ― 見てるの、君でしょ


 「!?」


 誰。


 セキュリティどうなってるの。



 解析。


 接続元は——


 レオン・グレイフォードのステータス管理領域



 つまり


 向こうにも“中の人”がいる。



 ― やっと見つけた


 文字が続く。


 ― ずっと気になってたんだ、君の介入


 「……監視されてたの?」


 ― お互い様でしょ


 軽い。

 なんか軽い。



 「……あなた、誰」


 しばらくの沈黙。


 そして。


 ― レオンのステータス管理者


 そのまんま。



 さらに一行、追加される。


 ― 君のこと、前から見てた


 ……は?



 ログに新しい数値が発生する。


 ― 関係値:??? → 私

 ― 興味:上昇中



 「ちょっと待って」


 状況整理が追いつかない。


 セレナとレオンはくっついた。

 それはいい。むしろ歓迎。


 でも——

 なんで私にフラグ立ってるの?



 ― だってさ


 相手が続ける。


 ― 君、ずっとあの子のこと守ってたでしょ


 ……まあ。


 推しだから。



 ― そういうの、嫌いじゃない


 心拍数が跳ねる。


 いや、私に心臓ないけど。



 そして。


 ― 会ってみる?


 その一文と同時に。



 ― 新機能解放:管理者間リンク

 ― 仮想体生成:許可



 「……は?」



 気づけば私は、白い空間の外に立っていた。



 目の前には、


 見知らぬ青年。


 そして、どこか見覚えのある気配。



 「はじめまして」


 彼が笑う。


 「俺、レオンの“中の人”」



 その瞬間。


 私の中で、新しいフラグが立った。



 ― 恋愛フラグ:発生



 推しの恋を見届けたステータス管理者は、


 今度は自分の恋を、表示することになった。

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