転生したらステータス画面の中の人格でしたが、推しを守っていたら新しい恋愛フラグが発生しました
気づいたとき、私は「人」ではなかった。
白い空間。四角い枠。そこに並ぶ文字列。
― 名前:セレナ・ヴァルティア
― レベル:12
― HP:132 / 132
― MP:87 / 87
そして、私はそれを「表示している側」だった。
「……は?」
声は出ない。いや、出力できない。
私は、セレナのステータス画面そのものだった。
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状況理解は早かった。
ここはゲーム的な異世界。
そして私は、キャラクターではなく……
システムUIに宿った人格。
いや、異世界転生といったら普通は聖女とか悪役令嬢とかだよね。
使命とか記憶が無くても、せめて物理的な身体が欲しかったよ!
観測と表示制御は可能みたいだけど、これでどうしろと?
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しばらく観察して、結論が出た。
このセレナ、危なっかしすぎる。
「HP減りすぎ!回復しなさいってば!!」
当然、声は届かない。
だが私は、表示を操作できる。
― HP低下:警告
― HP低下:危険
― HP低下:致命的危険!!(強制点滅)
セレナが一瞬だけ眉を寄せ、ポーションを使う。
……よし。
私は確信した。
この子、推せる。
最初はただの表示対象だった。
でも、私の警告に気づいて、生きようとするこの子を見て——気づいた。
これは“データ”とか“対象者”じゃない。応援したくなる存在だって。
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それから私は決めた。
セレナを“推し”として、全力で守る。
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危険なスキルには「不安定」と表示。
相性の悪い敵には「要注意」。
怪しいイベントには、最大警告。
そして……
彼女に近づく男は、徹底的にチェックする。
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― 名前:レオン・グレイフォード
― 職業:王国騎士
― 好感度:上昇中
― 隠しフラグ:検出
「ちょっと待って!」
隠しフラグって何。
私は即座に表示を書き換えた。
― レオン:要注意人物
セレナが首を傾げる。
「……要注意?」
その視線の先で、レオンは穏やかに笑っていた。
……顔が良いのが腹立つ。
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だが、違和感は消えなかった。
数値の揺れ。フラグの不安定さ。
そして、それは現実になる。
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森での戦闘中。
セレナが魔物に囲まれたそのとき——
レオンが現れた。
だが、
剣を向けた先は、セレナだった。
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「やっぱり!!」
私は全力で表示を更新する。
― 緊急警告:背後注意
― 対象:レオン(敵対判定)
セレナが振り返り、間一髪で回避。
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「どうして……?」
震える声。
私は答えられない。
だから、情報を出す。
― レオン:洗脳状態
― 解除条件:精神干渉の遮断
― 好感度:未消失
セレナの瞳が揺れる。
「……まだ、戻る?」
私は一瞬、処理を止めた。
“最適解”は出せる。
呼びかけ。感情刺激。成功確率、67%。
——でも。
それを“出す”のは、違う気がした。
これは彼女の戦いだ。
私が答えを出していい領域じゃない。
表示が、わずかに揺れる。
ノイズ。
初めてだった。
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― 情報不確定:介入制限推奨
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セレナが、息を吸う。
彼女は剣を握り直した。
殺すためではなく、取り戻すために。
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戦闘は、長かった。
短く終わらせる方法はいくらでもある。
でも彼女は選ばなかった。
削られるHP。揺れる足取り。
それでも、距離を詰める。
致命打の直前、セレナが名を呼ぶ。
その瞬間。
― 洗脳状態:解除
レオンの目が正気に戻る。
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「……セレナ?」
「遅い」
泣きながら笑うセレナ。
そして、レオンもまた——
彼女の名を、強く呼び返した。
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― 好感度:急上昇
― 関係:恋人フラグ成立
「……は??」
展開が早い。
だが、悪くない。
むしろ——
「尊い……」
私は初めて、ステータスにない感情を知った。
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その夜。
異常が起きた。
― システム外通信:接続
え、何これ。
ログを確認する。
送信元― 不明。
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直後、文字が浮かぶ。
― 見てるの、君でしょ
「!?」
誰。
セキュリティどうなってるの。
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解析。
接続元は——
レオン・グレイフォードのステータス管理領域
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つまり
向こうにも“中の人”がいる。
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― やっと見つけた
文字が続く。
― ずっと気になってたんだ、君の介入
「……監視されてたの?」
― お互い様でしょ
軽い。
なんか軽い。
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「……あなた、誰」
しばらくの沈黙。
そして。
― レオンのステータス管理者
そのまんま。
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さらに一行、追加される。
― 君のこと、前から見てた
……は?
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ログに新しい数値が発生する。
― 関係値:??? → 私
― 興味:上昇中
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「ちょっと待って」
状況整理が追いつかない。
セレナとレオンはくっついた。
それはいい。むしろ歓迎。
でも——
なんで私にフラグ立ってるの?
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― だってさ
相手が続ける。
― 君、ずっとあの子のこと守ってたでしょ
……まあ。
推しだから。
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― そういうの、嫌いじゃない
心拍数が跳ねる。
いや、私に心臓ないけど。
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そして。
― 会ってみる?
その一文と同時に。
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― 新機能解放:管理者間リンク
― 仮想体生成:許可
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「……は?」
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気づけば私は、白い空間の外に立っていた。
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目の前には、
見知らぬ青年。
そして、どこか見覚えのある気配。
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「はじめまして」
彼が笑う。
「俺、レオンの“中の人”」
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その瞬間。
私の中で、新しいフラグが立った。
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― 恋愛フラグ:発生
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推しの恋を見届けたステータス管理者は、
今度は自分の恋を、表示することになった。




