6.聖剣名乗るのやめろ
声に導かれるように、光の届かない暗闇の中に俺の足が動いていく。
(なんだ…?!、身体の自由が…効かないッ)
シロエとも、どんどん離れていく。離れる俺に彼女は気がついていないようだった。
(絶対にやばい…死ぬ?殺される??)
〈怯えるな、受け入れろ…我はただの力に過ぎぬ、振るうは貴様自身だ〉
〈……とはいえ、我が呪力に耐えれれば……の話だがな?〉
明らかな悪意が脳に直接注ぎ込まれるような不快感。しかし抗う術はない。導かれるままに暗闇を進み続けた。
「────ッ!……」
(声も…だせない…)
怖い、死にたくない、まだ死ぬには未練が多すぎるし、こんなわけのわからない所でなんて…。
必死に足掻こうとするが、全て無駄。進み続けた先に、一振の剣があった。
〈ククク…ようこそ、我が御前へ〉
古びた台座の上で鎮座する、黒い刀身の剣。その刃はまるで黒曜石のような独特の光沢を持っていて、まるで宝石のように暗く煌めいている。
暗闇に薄い線を持って、そのシルエットがまるで浮いて見えるような剣。しかし、その剣から感じる”圧”のようなモノが、それは神聖な物ではないと警告している。
〈さぁ!手にとれ!〉
〈そして、我を幾年の眠りから覚ますのだ!〉
手が伸びていく、止められない。
(…クソッ…せめて、せめてスタートボタンをクリックしてから死にたかった…!)
黒い柄を、意に反して俺の手は握りしめた。
〈さぁ、受け取るといい!我が権能を……〉
〈……?………〉
〈…ぅ”おッ?!!…〉
脳の中の声が、突然驚いたようで、大きな声を上げる。柄を握る手にあった不可思議な強制力は途端に無くなり。俺は自由になった。
「体が…動く、言葉も喋れる…」
〈馬鹿なッ?!…我の呪言から逃れただと?!〉
「呪言だと…?…お前ェ…さっきから好き放題しやがって…」
俺が触れた途端…呪言の効力が切れて、あの声…聖剣もリアクションをしていた…ということは。
「…今度は俺のターンだ、覚悟しろよ?」
〈…ヒッ!〉
剣だろうが、なんだろうが、俺が触れたモノは全て”絶頂”するって訳かッ!
ならやる事は1つだけだな…この剣を、徹底的に…
「理解せてやる!」
〈や、やめろ!くるな!〉
〈我にふ れ る なぁああああッ!!〉
刀身を震わせているが、所詮ただの剣に過ぎない、持ち主が居なければ逃げることなんて叶わない。
俺は、思い切り柄を両手で握りしめてやった。
〈…ん”ぁあッ?!…や、めッ…あぁ”””ッ!〉
〈な”にッ…こ”れ…わかん”ッ…ない…〉
「ほらほら、さっさと素直になれよ」
〈だま”…れぇエエッ…!………〉
流石に聖剣と呼ばれるだけはある、俺の力にも中々耐えている。まだ意識が飛んでない。
おうさまなんて、軽く手を握るだけでも失神してたのに…、割とこの力も使い方にコツがあったりするのか?
……殺されかけた憂さ晴らしだ、色々試してやろう。
…といっても、童貞の俺にどんなテクが使えるのか…わからないが。
「…すこし、やり方を変えてやるよ」
俺は一度柄から手を離す、流石に脳に直接喘がれ続けると…頭が痛くなる。音量MAXのASMR音源をイヤホンで聴いてるみたいだ。
〈ハァ……ハァ…もう…やめろ!…謝る…謝るから!〉
「…いや、お前は俺の剣にしてやる、その為にはたーーーっぷり…教育しないとな」
〈ヒィッ…!〉
ここから、俺と聖剣の謎の攻防戦は続くことになっていく……




