5.語りかける聖剣
暗い通路を進んでいくと、その先には金属で出来た装飾壁があった。それはまるで封印されているような重厚さで、固く閉ざされている様子だった。
(まるで金庫…でも、鍵穴も、ノブやシリンダーも見当たらないぞ…)
そんな壁に、シロエが手をかざす。そのまま何か不思議な響きの言葉を紡ぐと、壁から機械が動くような音がして、動き始める。
「な、なんだ、どういう仕組みなんだ??」
「これは、特定の呪文と魔力で開くことのできる、魔術扉です」
……魔力、魔術…やはり、ここは剣と魔法が当たり前に存在する異世界なんだな…。
本当に、よくある設定の世界だ。
壁、もとい魔術扉が開くと、その先は薄暗くも神聖のような雰囲気を持つ空間が広がっていた。宗教的モチーフの白獅子の壁飾りが正面にあり、そこへ真っ直ぐに青い絨毯が引かれている。
その絨毯の両脇には、対になるように剣とその台座が並べられている。
その列は…7はあるな。
(これらが、おうさまの言うところの聖剣か…)
ただ、なんか思っていたより安っぽいというか…すこし、すすぼけてすらいる。
(聖剣って、もっとこう台座に刺さってたりとか…そういうんじゃねぇのかな…)
(今のところ、”ただ放置された剣”ってだけに見えるが…)
「ここは、聖剣の間です」
「神からの祝福を受けた剣たちが、ここに納められています」
「これを扱うためには、剣に選ばれれなければなりません」
シロエが淡々と俺に説明をしてくる、だが、イマイチピンとはこないもので…。そういう設定なんだなーとは思う。そして俺は召喚勇者な訳だし…どれかの聖剣が俺を選ぶだろうとしか考えれなかった…
「聖剣は、どうやって勇者を選ぶんだ?」
「…分かりません、ただ聖剣は持ち主を認めると、微かに光を放ちます」
(…なるほど、ご都合って訳か)
俺はそんな展開に少しうんざりしつつ、1番近くの聖剣の柄を握ってみた。
が……
「光らないな」
「光りませんね」
…ま、まぁいい、次だ。
「光りませんね」
次。
「ダメですね」
次。
「…次に、行きましょうか」
……………ことごとく光らねぇんだけど、どうなってる?もしかして俺勇者とかじゃない?
いや、別に自認勇者な訳じゃないけど…でもこんなに誰からも選ばれないって…ショックなんだな……。
〈ククク…哀れな勇者よ、我が貴様を選んでやろうか?〉
……唐突に、俺の頭の中に声をかけてくる者が一人、まるで意識を流し込まれているような違和感が気持ち悪い…
(な、なんだ?誰だ……?)
〈さぁ、こちらを見るがいい〉
首が、自然と一点を見るために動く、自分の意思とは反して。
視線の先にあるのは、黒い刀身と、柄に深い赤色の宝石が埋め込まれた不気味な剣だった。
〈我を選ぶがよい、貴様に我が無窮の力を分けてやろう〉




