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1.いきなりキツイって


「………勇者よ、よくぞワシの声に応えてくれた!」


…は?


目を開くとそこは、まぁ、まさに異世界の王宮って感じの場所だった。真っ白で綺麗に整えられた白磁みたいな床。ギリシャ神話の神殿のような柱の立ち並ぶ聖堂みたいだ。


四方のステンドグラスから照らされる光の下に、俺は寝転んでいた。


おかしい、俺はこんな王道ファンタジーの世界に産まれた記憶はないんだけどな。


「突然の召喚…非礼を詫びる、じゃが、我々は勇者に祈るしかなかったのじゃ…」


玉座のような場所に座る、赤いビロードのマントを纏う老人。豊かな白ひげを讃えたその姿はまさにRPGのおうさまって感じだ。


そんで、こっちの話とか、事情とか。なーんも聞いてこないし、聞きそうにもないのもまんま同じだ。


「…いや、非礼とか、いきなり言われても訳わかんないんで……」


「…とりあえず、どうやったら帰れます?」


そう、俺は帰らければならない。理由はただ一つ。俺は今からまさに。何年も待ちわびた……


〈最新作〉の〈超ヤベぇエロゲー〉をやらないといけないからだ。もう何年もクラファンで支援もしてたし、毎日作者のDMに応援のメッセも送ってた。


あのエロゲには、それだけ期待してたんだ……インストール中のキャラ紹介見ただけで満足できる訳ねぇだろ!


まだ一度も抜いてねぇし、スチルも見てねぇんだよ!


「…落ち着いて聞いてほしいのじゃ……」


「勇者が元の世界に帰るためには…魔王を倒すしかないのじゃ…」


あー、はいはい、そんな気はしてたよ。でも、まだ帰る方法がないって言われることがなくて安心できる。


「…なるほど、それで、どうやって魔王を倒せば?俺、ただのフリーターなんだけど…」


「…ふ、ふりー、たー…」


「そ、そこは安心して欲しいのじゃ、勇者はこの世界へ渡ってくる時、必ず上級神ミレーユ様から何らかの神託(スキル)を授けられておる!」


「その神託(スキル)があれば…魔王とて敵ではないじゃろう!」


なるほど…スキルね、まんまゲームって感じか…。

スキルといえば、聖剣を扱えるだとか、とんでもない爆裂魔法が使えるだとか…そういうイメージだよな。


出来れば、敵をバッサバッサ切り倒す剣士みたいなスキルがいいよな。男の子のロマンだし。


「さぁ、ワシの手を取るのじゃ、さすればお主の神託(スキル)を見せてしんぜよう!」


まぁ…ちょっと面白そうだよな、ここは一つやってみようかな。エロゲの前の…サイドディッシュにはなるだろ!


俺はそう決意し、おうさまの手を取った!



「んほぉぉおおお”ぉお”♡♡♡♡」


「……は?」



俺が、手を握った瞬間、なぜかおうさまは白目を剥いてぶっ倒れた。白磁の地面に垂れ流す体液の汚れが付き、静謐(せいひつ)としていた空間は、何処か奇妙な静けさに変わり果てる。


………いや、いやいや。



「……いきなり、キツいっス……」


痙攣する老人、呆然とする俺。

意味不明な展開から、俺の異世界召喚は始まることになった……………。


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