S ランク 改定通知
Sランク制度を改定した冒険者ギルドで起きた、些細で致命的な混乱の記録。
Sランク改定通知
冒険者ギルドは、どこにでもある普通の建物だった。
石造りの壁、木のカウンター、掲示板には討伐や護衛の依頼が整然と並んでいる。
その中央に、本部印の押された一枚の紙が貼られていた。
《Sランク改定通知》
・全国すべての冒険者ギルドは、即日ランク表記規程を改定する
・個人、パーティー、クラン、依頼難易度、報酬、脅威度、優先順位は“S”を基準とする
・数字による段階表記は禁止
・Sの重複表記は可とする
ギルド長は通達を読み終え、短く言った。
「以上だ」
広間がざわめく。
「つまり、個人ランクは?」
「Sだ」
「パーティーは?」
「Sだ」
「クランも?」
「Sだ」
新人冒険者のアルベルトは、少し考えてから頷いた。
今までと、やることは変わらない。表記が変わっただけだ。
受付嬢マルタは、通達の紙をもう一度見た。
「……これ、今までの記録も全部書き直すんですか?」
ギルド長は即答しなかった。
マルタは名簿の束を見下ろし、そっと息を吐いた。
登録用紙の項目は変わっていない。
ただ、書き込む文字が増えるだけだ。
数日後、最初の昇格者が出た。
「ローランド、昇格だ」
「ありがとうございます」
「個人ランクはSS」
「パーティーは?」
「S」
「クランは?」
「SS」
マルタは枠の中にSを並べた。
まだ収まる。問題はない。
護衛依頼も更新された。
依頼難易度:SS
報酬ランク:SS
想定脅威:SS
優先順位:SS
「SS以上で一名募集だ」
前に出たのは三人だった。
「ローランド、SS」
「フリード、SS」
「マティアス、SSS」
規程通り、依頼書は三枚になった。
各地で魔物の大量発生が起きたのは、その少し後だった。
応援要請が飛び交い、他支部から冒険者が到着し始める。
「北方支部、クラウス。個人ランクSSSS」
「西方支部、エリック。個人ランクSSSSS、パーティーランクSSSS」
「中央直轄。クランランクSSSSSS」
マルタは名簿を見下ろした。
枠の端に、Sが触れ始めている。
やがて、広場の外が一斉に騒がしくなった。
「南方支部、到着!」
「クランランクSSSSS、
パーティーランクSSSSSSSS、
個人ランクSSSSSS――
アルノーだ!」
「西方支部、応援到着!」
「クランSSSSSS、
パーティーSSSSSSS、
個人SSSSSSS――
ベルナール!」
「中央直轄。
クランSSSSSSS、
パーティーSSSSSSSS、
個人SSSSSSSS――
ディートリヒ」
広場に集まった冒険者たちは、互いに視線を交わした。
「……お前、今いくつだ?」
「SSSSSS……だったはずだ」
「それ、さっきより増えてないか?」
「いや、増えてない。……と思う」
別のところでも声がする。
「俺はSSSSSだ」
「待て、それ俺と同じか?」
「いや、お前は……」
「……何回Sだ?」
誰も即答できなかった。
名乗り直そうとして、途中で止まる。
「SS……」
「SSS……」
「……いや、違う」
数えようとして、途中で分からなくなる。
指でなぞっても、目で追っても、
今どこまで言ったのか分からない。
受付嬢マルタも、同じだった。
名前を書く。
Sを書く。
Sを書く。
枠が足りない。
掲示板も、名簿も、依頼書も、
同じ文字で埋まっていく。
声は短くなり、
確認だけが増え、
やがて区切りが消えた。
SSSSS
SSSSSS
SSSSSSS
SSSSSSSS
意味は、静かに底へ落ちた。
SSSSSSSSSS
SSSSSSSSSSSS
最後に残った報告書には、
意味を失った文字だけが並んでいた。
SSSSSSSSSS
SSSSSSSSSSS
SSSSSSSS
こうして彼らは、Sの海に沈んでいった。
初投稿、チャット GPT 使用です。
何年も前 、当時の なろう小説で冒険者ギルドのランクが Sランク以上をたくさん作り 読みにくくなっていたことがあるので、その当時 書きたかった事を GPT を使用して作ってみました。




