プロットとサイサイセオリー
1. 「何を書くか」より「何を感じさせたいか」
多くの作者は、プロットを作るときに「次に何が起きるか」を考える。
だが、読者は出来事ではなく、そこから得られる感情を求めている。
言い換えれば――
物語の本質は「イベント」ではなく「欲求の満足過程」だ。
だから、プロットを作る前に決めるべきは
「読者にどんな感情を与えたいか」。
これを最初に定めておくと、物語全体の設計が一気に楽になる。
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2. 読者の欲求タイプを選ぶ
読者の欲求には、いくつかの明確なパターンがある。
それぞれに対応する感情の動きとジャンル傾向を知っておこう。
欲求タイプ感情の狙いジャンル例
安心・癒し共感・やすらぎ日常・スローライフ・恋愛
成長・達成快感・高揚バトル・冒険・成り上がり
発見・知的好奇心驚き・納得ミステリー・理論系
絆・信頼感動・共鳴仲間・友情・家族
反発・カタルシスストレス解放追放・復讐・社会批判
最初に「この作品で何を満たしたいのか」を決めるだけで、
ストーリーの重心とテンポが明確になる。
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3. 主人公の欲求を読者と同期させる
読者が主人公に感情移入するのは、欲求の方向が同じときだ。
これを私は「ユナイト(同期)」と呼んでいる。
•主人公が何を求めているか
•その欲求を阻むものは何か
•どう乗り越えて、何を学ぶのか
この3点を決めておくと、展開は自然に導かれる。
たとえば――
「追放された俺が見返す」物語は、Rank(地位)の欲求をLife(生存)で守り、
最後にUnite(仲間)で昇華させる構造だ。
読者は“復讐の快感”と同時に“再生の希望”を得る。
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4. プロット=感情の波形
プロットを「出来事の並び」ではなく、「読者感情の波」として見る。
これを“欲求波形プロット”と呼ぶ。
章主人公の状態読者の感情摩擦(葛藤点)回収
1章欠乏・停滞共感・同情現状維持の苦しみ小さな希望
2章行動開始期待・不安敵や社会との衝突仮の勝利
3章喪失・迷いストレス・同調内面の壁覚悟の形成
4章反撃・成長快感・爽快ラスト摩擦カタルシス
5章昇華・再生感動・納得―余韻・希望
この表を作ると、「今読者が何を感じているのか」が常に見える。
どんな展開でも“感情の流れ”さえ通っていれば、作品は崩れない。
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5. メタ設計:読者とのユナイトを強化する
プロットが完成したら、仕上げは“読者との接続”だ。
以下の問いをチェックすると、作品が格段に読みやすくなる。
•タイトルは読者の欲求を一目で伝えているか?
•一行目で読者の感情を揺らしているか?
•サブキャラは主人公の欲求を鏡として映しているか?
•終盤で欲求は「満足」ではなく「昇華」に変わっているか?
ここまで意識すると、物語が単なる「展開」ではなく、
“体験”として読まれる。
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6. エネルギー設計(上級編)
Psy-Sci理論的には、物語は5つのエネルギーの組み合わせで動く。
Life(生)/Safety(安心)/Unite(絆)/Rank(地位)/Learn(学習)
章ごとにどのエネルギーを強く出すかを数値化すると、
“読者の燃料配分”が見える。
例:
•序盤=Safety・Unite重視(安心と共感)
•中盤=Rank・Life重視(行動と快感)
•終盤=Unite・Learn重視(昇華と理解)
このバランスを意識すると、物語全体がリズムを持つ。
読者が“自然とページをめくる”状態を作れる。
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7. まとめ:「物語とは、欲求の再構成である」
プロットを立てるときに意識すべきは、
「何を書くか」ではなく「読者にどんな欲求を再体験させたいか」。
イベントを積み上げるのではなく、
欲求を“波形”として設計する。
登場人物の動機=読者の感情線
物語の構造=欲求の流体力学
これを意識すると、
どんなテーマでも「読まれる構造」に変わる。
1. 「物語テンプレート=感情テンプレート」
物語の展開は無限にあるようでいて、
実は読者の感情の波形で見ると、いくつかの型に整理できる。
ここでは読者の「5つの欲求タイプ」に対応した
代表的な展開テンプレートを紹介する。
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① 安心・癒し型(Safety/Unite)
キーワード:回復・共感・日常・ぬくもり
構造感情波形
欠乏(疲れ・孤独)→癒しの出会い→回復→別れ→余韻⤵︎⤴︎⤵︎⤴︎(やすらぎ)
例:
•『よふかしのうた』:孤独→夜の交流→一時の安らぎ
•『ゆるキャン△』:日常のゆるい再生サイクル
作り方ポイント:
•衝突よりも“再生”に焦点を。
•大事件は要らない。小さな安心を積み重ねる。
•読者は「自分の心も回復していく」感覚を求めている。
Ending:
事件ではなく、“今日も日が昇る”で終わるのが理想。
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② 成長・達成型(Rank/Life)
キーワード:努力・成り上がり・快感・突破
構造感情波形
弱者→挑戦→失敗→覚醒→勝利⤴︎⤵︎⤴︎⤴︎(興奮・爽快)
例:
•『鬼滅の刃』:喪失→修行→成長→克服
•『なろう系』:追放→スキル発現→リベンジ
作り方ポイント:
•読者のRank欲求を刺激する「快感構造」を設ける。
•ストレス(摩擦)と報酬(達成)のバランスが命。
•勝利よりも“努力→報われる”ループを重視。
Ending:
読者が「自分もやれる」と思える位置で止める。
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③ 発見・知的好奇心型(Learn)
キーワード:謎・発見・理解・理論・観察
構造感情波形
疑問→調査→混乱→閃き→真理⤴︎⤵︎⤴︎⤴︎(納得・驚き)
例:
•『ハンターハンター(GI編)』:ルールを読み解く知的快感
•『薬屋のひとりごと』:観察→推理→真相解明
作り方ポイント:
•読者の“理解欲求”を満たすため、伏線を段階的に開示。
•一気に答えを出さず、“考えたい間”を与える。
•謎の「構造美」が読者の満足に直結する。
Ending:
真実を“理解”した瞬間、静かな感情の昇華で締める。
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④ 絆・信頼型(Unite)
キーワード:仲間・友情・信頼・再会・赦し
構造感情波形
すれ違い→協力→危機→信頼→再会⤵︎⤴︎⤵︎⤴︎(共鳴・感動)
例:
•『ワンピース』:別れと再会の繰り返し
•『スパイファミリー』:偽装→家族→本当の絆
作り方ポイント:
•主人公と仲間の“信頼構築”を段階で描く。
•「裏切り→理解→再会」の波形は鉄板。
•読者の涙は、“再接続の瞬間”で流れる。
Ending:
「また会おう」で終わると強い余韻を残す。
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⑤ 反発・カタルシス型(Rank+Safety反転)
キーワード:理不尽・怒り・反撃・浄化
構造感情波形
抑圧→屈辱→覚醒→破壊→自由⤵︎⤵︎⤴︎⤴︎(解放・爽快)
例:
•『なろう追放系』:理不尽→リベンジ→スカッと
•『進撃の巨人』:絶望→決意→破壊→代償
作り方ポイント:
•安全を奪われる痛み→Rankの反撃で解放。
•「社会的安全の剥奪」こそ最強の摩擦。
•読者は“正義の再構築”を疑似体験している。
Ending:
勝利よりも「自由と空虚の対比」で締めると深みが出る。
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8. 組み合わせで“新しい型”が生まれる
上記5つの欲求は単独でも強力だが、
実は掛け合わせで新テンプレが生まれる。
組み合わせ新しい感情体験例
Learn × Unite「共に理解する感動」科学×絆(STEINS;GATE)
Rank × Safety「守るための戦い」進撃・コードギアス
Unite × Life「仲間と生きる」鬼滅・葬送のフリーレン
Safety × Learn「癒しながら知る」日常×理系女子・観察系
これが“テンプレートを超えるテンプレート”。
「欲求の交差点」にこそ、読者が“まだ見ぬ感情”を感じる。
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9. おまけ:欲求波形を作る3つの質問
プロットに迷ったら、この3問を自問してみてほしい。
1.今、読者にどんな感情を味わわせたい?
2.それを阻む摩擦は何か?
3.その感情は、最後どう変化(昇華)する?
この3つを決めるだけで、自然と物語が動く。
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10. まとめ:「テンプレを壊すには、まず理解せよ」
テンプレを嫌う作者は多い。
だが本当に新しい物語は、テンプレを否定せず、構造から再構築する。
読者の欲求を理解した者だけが、
読者の予測を裏切ることができる。




