イベント
Web小説の“イベント”は、欲求とギャップの装置である
「ザマァ」「俺TUEEE」「追放」「婚約破棄」「スローライフ」。
これらの言葉を聞くだけで、読者はすでに“展開”を予測している。
けれど本質はそこではない。
これらは単なる展開のパターンではなく、
主人公の欲求(=自分はこうあるはずだという予測)と、
他者からの評価や現実とのギャップがぶつかる瞬間に生まれる。
つまり、イベントとは「欲求とギャップの装置」なのだ。
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イベントとは“予測の破れ”
人は誰しも、自分のステータスを心の中で予測している。
自分は評価されていない。
自分は凡人だ。
自分はきっと必要とされているはずだ。
その予測を、他者の行動が裏切ったとき――
怒り、喜び、屈辱、快感。
そこにドラマが発生する。
つまり、イベントとは「心理的な予測の破れ」であり、
その瞬間に、物語のエネルギーが爆発する。
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各イベントの心理構造
たとえば「ザマァ系」は、上から見下していた相手の予測が崩れる話だ。
「俺TUEEE」は、世界が低く見積もっていた主人公が実は強かったという反転。
「追放→覚醒」は、組織の評価が崩れ、自分の価値を再構築する物語。
「婚約破棄」や「裏切り系」は、信頼の予測が裏切られ、セフティが崩壊する。
「スローライフ」は、社会の過剰な期待を拒み、安心を取り戻す。
どのタイプも、
“予測が壊れる → 感情が動く → 価値が再構築される”
という流れを持っている。
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読者がハマる理由
読者は、主人公の「予測の破れ」に自分を重ねる。
理不尽な扱いを受けたときの記憶、
報われなかった努力、
見返したいという衝動。
その痛みが、主人公の反転や成長と共鳴した瞬間、
脳が「快」を感じる。
これが、「スカッとする」物語の正体だ。
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イベントの黄金構造
予測(欲求) → 崩壊 → 再構築(成長) → 快感。
この4つの流れを一話ごとに回していく。
すると、読者は“ドラマが常に起きている感覚”を味わい、
物語そのものが快楽に変わっていく。
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結論:イベントは心理的快楽のスイッチ
「ザマァ」も「追放」も「俺TUEEE」も、
それ自体がジャンルではなく、
欲求とギャップのコントロール手法だ。
主人公の“予測”を壊し、
読者の“感情”を同期させる。
そこに生まれる感情の再配置――
それこそが、web小説のイベント構造の真髄である。
裏を返せばこのエネルギー構築を利用して新しいテンプレパターンを構築できる。
——Web小説を極めるために必要なこと
読者とは、作者の作品を見るために自分の時間という貴重な資源を消費している存在である。
この一点を忘れた瞬間、作品はただの“自己満足の記録”に堕してしまう。
同じ展開ばかりが続けば、読者は学習する。
「このパターンはもう知っている」と予測が立てられるようになり、
その時点で物語のラーニン(学び)欲求は満たされなくなる。
読者の脳は次の刺激を求め、より新しい物語へと旅立つ。
だからこそ、名もない作品が読者を引き留めるには、
**「新しさ」よりも「欲求への共鳴」**を狙うべきだ。
なろうテンプレが隆盛した時代、
それは確かに読者の安全・承認・快感という欲求を見事に満たしていた。
だが今、それは**“既に満たされた欲求”**であり、
同じ栄養をいくら与えても満足度は上がらない。
次に求められるのは——
「テンプレを裏切る快感」ではなく、
**“読者自身の欲求構造を鏡のように映す物語”**である。
怒り、共感、恥、承認、孤独、再生。
それらの欲求をどこまで誠実に掘り下げ、
どんなベクトルで動かせるかが“読者がついてくる理由”になる。
テンプレが終わった今、
**次の黄金比は「欲求 × 意外性 × 誠実さ」**だ。




