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第28話 前世編EP5-星降る夜の願い


いくつもの星が輝く夜空の下、城のテラスには穏やかな夜風が吹き抜けていた。


あれから幾晩か、ソフィーとダイアナはレオンと共に静かな夜のひとときを過ごしていた。


初めはレオンと目を合わせることさえままならないほど震えていたが、優しい時間を重ねるうちに少しずつ心が解きほぐされていった。


怯えてばかりいた胸の鼓動も、今では静かなときめきへと変わっている。


ダイアナがそばにいてくれる安心感もあり、今ではレオン様の前で静かに微笑む余裕さえ生まれていた。


何より、レオンが自分を思いやってくれるお優しい人だという確かな思いが、ソフィーの胸を支えていた。


レオン様の隣にいるだけで、胸の奥がぽっと温かくなる。

…それが"好き"という感情なのだと、ソフィーは静かに気づき始めていた。


この夜も、3人はテラスに面した部屋で穏やかに語らい、柔らかなひとときを過ごしていた。


テーブルの上には3人分のハーブティーが湯気を立てており、ほのかな香草の香りが夜気に溶けていく。


レオンは静かな声でいくつかの星座の物語を語り、ソフィーとダイアナは並んで耳を傾け、ときおり小さく相槌を打っていた。


ふと見上げた夜空には、無数の星がきらめいている。

ソフィーは小さく息をのみ、そっと呟いた。


「……星が、とても綺麗…」


レオンは静かに頷いた。その穏やかな横顔を見つめ、ソフィーの胸がじんと熱くなる。


ちょうどその時、一筋の光が夜空を横切った。瞬く間に消えていく、小さな煌めき――流れ星だ。


「流れ星!」


ソフィーははっと声を上げ、ぱっと顔を輝かせた。

もっとよく見たい一心で椅子から立ち上がると、ひらりと身を翻してテラスへ駆け出していった。


夜風がそっとソフィーの頬を撫で、薄手のドレスの裾を揺らした。

彼女は夜空いっぱいに瞬く星々を仰ぎ、その瞳を輝かせている。

思わず目を閉じ、心の中で静かに祈った。


(どうか、この優しい時間がいつまでも続きますように……)


ソフィーがいなくなった室内には、短い静寂が訪れた。


レオンとダイアナは並んで座ったまま、テラスで無邪気に空を仰ぐソフィーの姿を見守っていた。


ダイアナはふんわりと微笑み、その眼差しには深い慈しみが宿っていた。

そんな横顔に目を留め、レオンはぽつりと声を漏らした。


「君は本当にソフィーのことを大切にしているんだね」


不意に掛けられた言葉に、ダイアナは一瞬だけ目を見開いた。


けれどすぐに「……ええ。」と静かに答えた。

その唇にはほんの少し切ない微笑みが浮かんでいる。


ダイアナは遠くテラスのソフィーを見つめながら静かに続けた。


「ずっと姉妹のように過ごしてきました。

……ソフィーには幸せになってほしいんです。」


レオンはダイアナの横顔を見つめた。

月明かりが射し込む中、ダイアナの瞳には穏やかな決意が宿っているように見える。


レオンはテラスではしゃぐソフィーに目を向け、そして静かに呟いた。


「……そろそろ、2人での時間に戻そうか」


レオンの静かな声に、ダイアナはスカートの裾をきゅっと握りしめた。


僅かな間があったが、やがて「……はい」と小さく頷き、そっと微笑む。


張りつめていた何かが、静かにほどけていくようだった。


この優しい時間が、終わりに近づいていることを——



誰も、まだ知らなかった。

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