表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/32

第20話 夜空に忍ぶ影


あの出来事から数日。


なつきくんは朝の時間が合うときはお迎えに来てくれ、帰りは大学まで迎えにきてくれて、一緒に帰るのが日課になっていた。

私の毎日はほんの少し、日常に戻りつつあった。


そんな私に、なつきくんがある提案をしてくれた。


「そういえば次の土曜日、花火大会あるよね? 一緒に行こ!」


「えっ、花火大会?」


「うん。水族館行ってから勉強デートはしたけど…遊び行ってないし…」


「……うん、私も行きたい!」


そのときの彼の笑顔が、胸に灯をともすようにあたたかくて…彼と過ごす毎日に、不安が少しずつ小さくなっていった。


◇◇◇


花火大会当日。

鏡の前で少しドキドキしながら浴衣を着ていく。


ーーーピンポーン。

待ち合わせの時間ちょうどに、インターホンが鳴った。


玄関のドアを開けると、彼は目を見開いて固まっていた。


「……さや?」


「え、変じゃない……?…かな?」


おそるおそる尋ねると、彼は一呼吸置いて、


「……やばい。めちゃくちゃ可愛い!」


顔を真っ赤にしながら、ぽつりと呟いた。


「っ、そんな……」


照れくさくて下を向くと、彼がそっと手を伸ばして、指先で私の髪飾りを整えてくれた。


「いつもかわいいけど、今日は……もっとかわいい。」


「……ふふ、ありがとう」


2人で手をつないで歩き出す。

会場の近くには屋台の灯り、たくさんの人混み。

どこを切り取っても、夏らしくて、夢みたいで。


「さや! 射的やろうよ!」


なつきくんは、いつもより少し少年のようで、私は何度も笑った。


(——この時間が、ずっと続けばいいのに)



風が少しだけ強くなって、浴衣の裾が揺れる。

夜の空気は熱気を孕みながらも、どこか夏の終わりを感じさせる切なさがあった。


彼の手のぬくもりが、心を穏やかにしてくれる気がして、私はただこの時間を信じたかった。


でも……気づかないふりをしていたのかもしれない。

この幸せな時間の裏側に、忍び寄る影があることに。


ーーー夜空に溶けた微かな視線は、静かにふたりを追っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ