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第12話 想いの輪郭 sideなつき

昨日のことを思い出すたび、胸が熱くなる。


水族館でのデート。

さやさんの涙。

手を繋いだあの瞬間、そして別れ際に抱きしめたぬくもり。


間違いない。あの瞳の奥に揺れる感情も、ふとした迷いも――あの頃のソフィーと、同じだった。


「おはよー、なつきー。今日もニヤニヤしてるな?」


「……してないし」


教室に入ると、すかさずりくが肩を叩いてくる。


「……昨日のデート……あの後、大丈夫だったか?」


「さやさん、たまたま携帯拾ってもらっただけって。

本当に……たまたまだったのか?」


俺の問いに、りくの表情が少し曇る。


「なつきが水族館の話してた時、あやねの顔が気になって。

何もなければいいと思って、妹連れて少し様子見てた」


「……さやさん、なんかされた?」


「いや、未遂で止めた。

でも、あいつ……ちょっと危ういかもな」


「……ありがとな、りく。

俺、浮かれてて……大事なとこ見えてなかったかもしれない」


目の前の人を大切にすること。

過去に囚われるんじゃなくて、今、隣にいる彼女を守ること。


(あの時は、ソフィーの想いに…自分の想いに、気づくのが遅すぎたから)


今はちゃんと見えている。

さやさんの笑顔も、迷いも、俺の気持ちも。


「まあ、困ったらすぐ言えよ。俺は味方だからな」


「……ああ」


もし、あの時――

こうして話を聞いてくれる誰かが、そばにいてくれたら。

違う未来が、ソフィーにもあったのだろうか……。




その日の帰り道、スマホにさやさんからのメッセージが届いた。


《昨日はありがとう。また、会えるかな?》


たったそれだけの言葉が、胸をやさしく温める。


《もちろん。…近いうちに、絶対》


心の奥にあった迷いが、少しずつ晴れていく。

さやさんの隣にいる未来を、俺は選びたい。


――どんな運命が待っていようとも。


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