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第六回
「芥川とかいう人、桃太郎を書いているみたいですよ。」
明らかに暇すぎて集まった集団の中で浮きすぎて扱いに困っていた20代ぐらいの女性が話した。
スマホで検索をかけたのだ。
「尾崎紅葉の鬼桃太郎も検索に出てきました。」
私は焦った。
尾崎紅葉はおろか芥川の桃太郎の存在すら知らなかったのだ。
「誰か読んだことのある人はいますか?」
無論いるはずがなかった。
「みんなどうせ菊池桃子ぐらいしか知りませんよ。」
唐突な昭和のタレントに苦笑せざるを得ない。
「そもそも桃太郎のストーリーをちゃんと把握しているのですか?」
読書会の進行の拙さに司会者である私を侮辱する発言が向けられる。
30代ぐらいの特に特徴のない男性参加者からの意見だった。