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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第三章 絆愛編

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83話 阿吽の双子

 アイゼンウルブスを出てから丸一日が過ぎようとしていた。

 遂にレオ公爵領とヘレリル公爵領を隔てる森林を視認出来、昼までには森に到着し、昼過ぎには通り抜けられる予定だ。今通っている道はアイゼンウルブスからその森林を通ってヘレリル公爵領最大の都市、セントレイシュタンへと続く街道になっている。

 よく見るとあの森林の木が太い事がこの距離でもわかり、その地帯の魔物の強さを現している。昔、ブルーバードの店主であるヴァランに習った事だが、木の幹が太ければ太いほど、魔物の強さも上がる。何事も無く抜ける事が出来ればいいんだが。

 そもそも商人の交易路になっている事から、ある程度安全は保障されているとは思うが……



「さっきの行商人の様子、ただ事じゃなかったな。あの森で何があるかわからない……気を引き締めていかないと」


「ああ」


「そうでありんすね。強力な魔物の出現という可能性は高いでありんす。戦闘の準備はしっかりしておくでありんすよ」


「うぷっ……」



 この道だと行商人は珍しくないはずだが、数刻前にすれ違った行商人はとんでもない形相で逃げるように馬車を走らせていた。



 そんな事を話している内に俺達は森林に入った。少し山のようになっているせいか、道は上り坂になっている。一応整備されてはいるが、左右は木々に挟まれているため、盗賊や魔物に会ったら厄介な地形だ。



「しかし、ゴブリンの一件からろくに休む間もなく仕事して来てるからな。そろそろ休みたいぜ」



 レオは大きなあくびをし、寝るためか目を閉じた。

 確かに戦いっぱなしでゆっくり休む暇も無かったな。とは言えここは未知の領域、せめて街についてから寝てくれよ。



「ヒヒィィィン」


「うお、なんだ? どうした、クロト」


「うぷ……止まった……の?」



 馬車が急停車したことで思わず体を投げられたレオが起き上がり、エヴァも若干酔いが覚めた様子で何があったのかと覗き込んでいる。

 俺はテンペスターを握りいつでも飛び出せるように腰を浮かす。



「どうやら休むのはまだ当分無理みたいだぜ」



 四つの人影。

 白髪頭に白いマフラー、仕込み刀を持っている老人と、黒髪ツリ目の美女。一年前ヴァントの街で戦ったのを最後にめっきり姿を見なくなっていた四魔王のリヴァとアリスだ。

 更に褐色肌で白髪の少女が二人いる。一人はロングで槍を肩に担いでいる。もう一人はショートで剣を腰にさしている。

 俺は馬車を飛び降り、ゴンザレスとエリザベスの前に立つ。



「一年ぶりか? 魔王!!」



 エヴァ、レオ、シエラもそれぞれ戦う準備を早急に済ませ、馬車から降りてくる。エヴァはまだ酔っているのか少しフラフラしている。



「一年……か。時が経つのは早いもんじゃ」


「今更なに悟ってやがる。だが、お前らから来てくれたのは都合が良い。一年前の借りはここで返させてもらうぜ」


「クロト……あの二人って……」


「なんだ?」


「ほら、褐色肌の二人」


「ああ、それがどうした?」


「忘れたの? 三年前、セントレイシュタンで会ったエンリとリンリだよ」


「……そう言えば、確か奴隷紋の二人だよな」


「なんだ、知り合いか?」



 レオが腰の二代銀月に手を当てながら聞く。知り合い……実際は数言喋っただけなんだか。胸に刻まれた奴隷紋。少し気がかりではあったんだが、まさか魔王の奴隷だったとは……



「まぁ、ちょっとな」


「悪いが手加減とかは……」


「一切必要ない」


「了解」


「作戦はどうするでありんす?」



 シエラも既に矢をつがえてる。

 好都合といえば好都合。早めに倒せればそれに越したことはないんだが、しかしなぜこのタイミングで、コイツら(魔王共)が……しかも二人で来るなんて。動機については考えたところでわかるわけはない。倒して聞けばそれでいいだろう。

 それよりも考えなければならないのは戦術だ。がむしゃらに全力を出してぶつかるだけで勝てるようなやわな相手じゃない。



「なにか思いつくか? エヴァ」


「……相手は恐らく近接戦タイプが三人、魔術タイプが一人。対するこっちは近接戦タイプが二人、魔術タイプが一人、遠距離タイプが一人。四対四は不利になる、と言っても相手は四人中二人が魔王級、一対一で戦うには荷が重いし……最善は二対二。でも相手がそれを許してくれるほど優しいとは思えない」



 確かに。相手の戦力が未知数なだけに一人一殺は荷が重い。

 エンリ、リンリの強さは知らないが、三年前の時点でシルバー級、いやゴールド級の冒険者以上の力を持っていた。て事は、三年経った今は俺達と同等か、あるいは魔王の領域に……相手の戦力は高く見積もっておいた方がいいとグレイドから教わっている。四人共が魔王レベルだと思って臨もう。



「まずクロトの雷撃であの四人を分散させる。そこにすかさず私達三人がそれぞれを分断させるのがいい。クロトと私でリヴァとエンリかリンリ。レオとシエラで残った二人を。近接戦で強いクロトとレオが固まったり、逆に近接戦に弱い私やシエラが一緒になるのは絶対に避けたい」


「よし、その作戦で行こう。全員、気を抜くなよ……相手はかなり強い」


「ああ、望むところだ」


「援護はわっちに任せてくんなまし」


「クロト、お願いね」



 俺はテンペスターとシュデュンヤーを抜き一歩前に出る。



「任せろ」



 俺は瞬動術と雷転移を同時併用した生身のままでの音速移動を使い、四人の頭上に飛び上がる。反応させないままテンペスターとシュデュンヤーを合わせて肩に担ぐように構える。

 狙うは地面。ここで誰かを狙っても防がれるのは目に見えてる。



「行くぞ!」



 そのまま地面にめがけて剣を振り下ろす。が、そのスピードにも対応し、リヴァが防いでくる。

 まだ抜刀しきってないリヴァの仕込み刀とテンペスター、シュデュンヤーが衝突しガチガチと音を立てる。



「ふんっ……!!」



 リヴァは抜刀するとその勢いで俺は後ろに飛ばされる。

 一瞬宙に舞うが、空中で体を回転させて地面に着地。坂道ということもあり若干滑ったが衝撃を殺してなんとか持ちこたえる。



「ならこれだ」



〈雷帝流 雷斬砲・獄〉



 シュデュンヤーを横に振り螺旋状の雷斬撃を飛ばす。



「リンリ」


「はい!」



 リンリは三人の前に自ら飛び出し、剣を抜く。更に剣の刀身が発火。炎を纏う。



〈我流 熊ノ太刀〉



 大きく振り下ろした炎剣と雷斬砲とぶつかる。

 一瞬停滞したかのように思われたその直後、雷斬砲が弾け、炎剣に断ち切られる。



「よくやったわ」



 俺達の作戦、及び俺の攻撃はことごとく防がれてる。

 ちらりと後ろを振り返り、目で皆に訴える。どうする、このまま続けるか?



「クロト!! 前!」



 エヴァの叫びを聞き慌てて前を見る。

 十メートル近く離れていたエンリとリンリがこちらに向かって来ていた。



「行くぞリンリ!」


「うん!」



〈阿の呼吸〉



 俺から見て左側に潜り込んだリンリは、右手に構えた炎剣を斜め下から振り上げる。シュデュンヤーで受け止めるが予想より数倍重い一撃で手が痺れる。

 そこへ間髪入れずエンリが槍を回転させながら迫ってくる。



〈吽の呼吸〉



 くるくると槍を回し飛び跳ねたかと思うと重力をも利用した槍の一撃が頭めがけて叩きつけられる。これもテンペスターでなんとか防御したが、衝撃が足にまで響く。

 このままじゃ折れる……と思った次の瞬間フッと楽になった。エンリとリンリが同時に力を緩めたのだ。今まで力を込め過ぎていた俺は反動で腕に力が入らない。重撃からの緩和、緩急の差で付いて行けない。



〈複合武技 阿吽の太刀〉



 そこへすかさず二人は俺の腹めがけて剣と槍がフルスイングで叩き込んでくる。



「獄気硬化!!」



 寸前で胴回りを硬化させ、攻撃を防ぐ。

 が、獄気硬化は硬質化は出来ても、衝撃までは殺せない。俺の体は刃による傷こそ受けなかったものの、衝撃で思いっきり吹き飛ばされる。



「ぐ……」



 周りの景色が後ろから前に流れていき、馬車やエヴァ達を通り越して更に後方へ飛ばされる。衝撃で意識が飛びかける程。が、まだだ……



「エヴァ! みんな! 作戦変更だ! “一人一殺”!!」


「おっけ!」


「了解」


「任せるでありんす」



 戦闘前の見立てでは一人一殺は荷が重いからやめるという事になったが、こうなった以上は仕方がない。そもそも魔王が分断なんて簡単に許してくれるはずがないし、二対二はこちらも有利を取れるが相手も連携を取れてしまう。ならば、各個人の実力を信じてここは決死の作戦で挑む。

 元々安全策で留まっているだけじゃ勝てる相手じゃない。覚悟を決める!

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