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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第三章 絆愛編

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閑話 月刊冒険者雑誌『STRONGER』

 エルトリア帝国城下町に冒険者ギルドは存在しない。

 その代わりに冒険者組合という施設、及び組織が存在する。大陸全土に散らばる冒険者ギルドを統括する組織である。

 冒険者ギルドと同じく通常の仕事の受注も出来るが、それを利用する人はあまり居ない。理由は様々だが、一番の理由はやはり騎士団の存在だ。

 龍騎士団(ドラゴン・ナイツ)天馬騎士団(ペガサス・ナイツ)一角獣騎士団(ユニコーン・ナイツ)……この三つの騎士団により、城下町周辺に生息する危険性を秘めた魔物は掃討され、冒険者組合に討伐系の依頼が来る事は滅多にない。

 それ故にわざわざエルトリア帝国城下町を拠点として動く冒険者は少なく、結果的に仕事を受注する人は居なくなる。

 では、何をしているのか。

 それは国からの依頼を該当地域、又は全地域に通達。国の定めた指名手配者の手配書を各地へ配布。そして最後に最も多くの人に望まれている仕事。それが月刊冒険者雑誌『STRONGER』の発行、及び配布である。





 月刊冒険者雑誌『STRONGER』。



 全国の冒険者に関するトピックを記者達が取材、編集、全国へ出版している冒険者の為の雑誌である。

 羊皮紙を本のように束ね、そこに“その場”を紙に写し取る事が出来る光、土、火属性の魔石が一つになったもの、通称『写描(カメラ)』を使い注目の冒険者の姿を紙に収める。その上から記事を書くことで最初の一冊が完成する。

 そしてその最初の一冊を何度も複写複製を繰り返し、全国へ発行される。



 そして、最新号……



 『STRONGER』と大きく書かれた文字の下に、三日月刀を一本は普通に、もう一本は逆手で持ち背を向けた状態から振り向いた赤髪の美女で表紙は飾られていた。

 〈舞姫〉の二つ名を持つナイアリス・レヴァン。

 ゴールド級冒険者にして、先日のゴブリン事件で名乗りを上げた冒険者の一人。ひょんなことからレオと仲良くなった少し変人な部分もある女性だ。



 彼女は討伐依頼を専門とする為、基本的にインタビューは受けても時間のかかる表紙の撮影などは断っていた。それ故、これまで『STRONGER』でナイアリスを表紙になった事は無く、編集長も注目していたが、同時に断念していた。

 そんな彼女がなぜ今回は受けたのか……



 それは『STRONGER』の記者がアイゼンウルブスに取材しに来た時である。ダメで元々、ナイアリスに表紙の撮影を依頼していた。

 記者もこれはアイゼンウルブスで取材する際の恒例行事、いや通過儀礼なのだと理解していた為、さほど期待もしていなかった。



「いや、撮らない」



 ナイアリスもいつも通り断った。

 違った点と言えば少し口が悪くなっていたぐらいだ。悪いと言っても、元が丁寧すぎるだけで、普通の人なら特に気にならないレベルである。だから記者も「やっぱりか……」程度に考えていた。

 だが普段と違うのはそこからだった。それをたまたま近くで聞いていたレオが一言。



「別に表紙ぐらい撮らせてやればいいじゃねーか」



 この瞬間ナイアリスの思考は止まり、そしてありえない速度で回転した。

 ナイアリスの戦闘センスは頭一つ抜けており、いずれはオリハルコン級に……と期待されている程。そんな彼女の脳みそは戦いにおいてありえない速度で回転し、最適解を導き出すのだ。

 そしてこの時、雪山で遭難し、ウルフの群れ百体以上に囲まれた時よりも、複数の一級魔物と同時に戦った時よりも、そして野盗と間違えられ、オリハルコン級冒険者〈紅の伝説〉アジェンダに本気で斬りかかられた時よりも素早く柔軟に回転した。



 彼女の頭の中は速度こそ早かったが方向は間違った方へ、だが彼女にとっての最適解に展開した。



 そう……



 “レオが見たがっている”……と彼女の頭の中で解決した。自分に表紙を飾ってほしい、私を見たい……と。

 そこからナイアリスの決断と行動は凄まじく早かった。

 二つ返事で了解し、撮影場所も聞いていないのに記者を引っ張りギルドから出ていった。



 そんな経緯で撮られた表紙をめくると数ページに渡りグラビア冒険者が載っている。

 普通は数人の冒険者にグラビアを依頼し、掲載するのだが、今回は全ページがナイアリスだ。

 ナイアリスはその美貌と強さ、そして表面上のおとなしい性格からディーナスに並んで人気がある。編集長もあのナイアリスが撮影に協力してくれたということで存分に使ったわけだ。

 ナイアリス側も“レオが見たがっている”という間違った解釈のもと、惜しみ無く協力した。



 五ページ程度のグラビアコーナーが終わるといよいよトピックに入る。

 一番最初に入って来たトピックはやはりアイゼンウルブスのゴブリン事件についてだ。過去最大を誇るレベルの巨大なゴブリンの巣を〈シルク・ド・リベルター〉の雨刃、リンを筆頭とした冒険者達の連合軍が討伐したというのはかなり異例のケースで、特に大きく取り上げられた。

 当の本人達は連合軍という意識は全くなく、その場に居合わせた間に合わせのメンバー、という認識の方が正しかった。物は言いようと言うやつだろう。



 次のページにもやはりゴブリン事件の事でゴブリンの巣が突如として発見され、更にはそれが過去最大の巣であったこと。

 群れを率いていたのは小鬼(ゴブリン)ではなく人喰い鬼(オーガ)、それも今回の事件で正式に伝説級に認定された皇帝鬼(エンペラーオーガ)だったと言うのがさらなる波紋を生んでいる。

 だが、意図的に作られたという部分は雨刃の独断で秘密となっている。



 次のページからは連合軍についてのピックアップだ。

 今回初の表紙を飾りグラビアをも彩った〈舞姫〉のナイアリスは勿論の事、今回の依頼でゴールド級に昇格した〈三首の鬼(クワトロデビル)〉、〈青紅(そうく)(あしぎぬ)〉の事も大きく載っていた。



 そのさらに次のページはクロト達についての見開き一ページが使われていた。

 “突如現れたブロンズの彗星!”や、“その実力はミスリルに留まらず、オリハルコンも間近!?”など、大々的にピックアップされていた。

 本人の強い希望によりこのページを飾るはずの写真はぼかしが掛けられ、それぞれの特徴は見えるが顔などはわからなくなってしまっている。

 編集長が一番出したかったのはこれだろう。事実、今月号を読んだ冒険者の殆どがクロト達に様々な感情を抱いていた。



――“名無しのパーティがいきなりミスリルだとよ”

――“すごいなぁ、私達もいつかなれるかな?”

――“ケッ……何が彗星 面白くねぇな”



 三分の一が羨望、残りは僻みや嫉妬だ。



 次のページには『STRONGER』の中でもかなりの人気コーナー、冒険者ランキングだ。

 全国のギルドを拠点として活動する冒険者達を様々な分野に分けてトップ二十を算出したコーナーで、毎回変動するランキング、逆変動の全くないランキング等、様々な意味で人気を誇っている。



 『強さランキング』

 冒険者なら誰しもここへ載る事を夢見ているだろう。

 上位はオリハルコン級冒険者が占めており、その中での変動はあってもメンツが揺らぐ事はそうそう無い。

 〈紅の伝説〉アジェンダ、〈シルク・ド・リベルター〉のオーナー〈風神〉のマスターボウ、そして〈正体不明の霧〉ミスト……最近特に挙がるのはこの三人の名だ。

 今月は一位ミスト、二位がアジェンダ、三位がマスターボウとなっている。

 強さランキングとは言え直接対峙したわけでは無く、その月の依頼内容や件数、稼いだ額で総合的に判断される。



 この一位に三連続で載っているミスト。

 この大陸内にミストを詳しく知る者は存在しないとまで言われるほど正体不明。依頼を受ける時はその姿を現すが、担当した受付は霧のような靄のような抽象的にぼやけた姿しか覚えてないと言う。

 今では頭がはっきりしない魔術でもかけられているという認識に落ち着いている。依頼を受ける所を見た者は……と言うとそんな者は存在しない。

 誰もその姿を目視出来ていないのだ。

 だがその強さや挙げた功績の量は同格のアジェンダやマスターボウよりも大きく上回っている。故に付けられた二つ名が〈正体不明の霧〉である。



 因みに六位、七位はオリハルコン級冒険者パーティ〈シルク・ド・リベルター〉の団員である雨刃とリンが、十八位にはギリギリ〈舞姫〉のナイアリスもランクインしている。



 そこからページをめくると強さランキングの他にも、

 人気ランキング、彼氏彼女にしたい冒険者ランキング等、しっかりと統計の取られたランキングもあれば料理上手そうランキング等の偏見だけで作られたランキングもある。

 編集長の遊び心らしい。



 ランキングを抜けると、次に〈紅の伝説 アジェンダ〉のトピックに入る。またまた魔術無しで超級魔物の討伐を成功させた事がページ一面に飾られている。



 次のページではいよいよ超決闘イベントについて書かれている。

 ゴブリン事件がなければ間違いなくトップを飾ったであろう一大イベントだ。帝国最強の剛力将軍ファリオスとオリハルコン級冒険者〈紅の伝説〉アジェンダの一騎打ち。

 これに対する人々の反応は様々だが、大体の者がこれに期待し、チケットを手に入れようと躍起になっている。

 時は四ヶ月後、場所はアルバレス公爵領にある血と闘いの街〈決闘街ケルターメン〉。



 そして最後はこんな言葉で締めくくられていた。



――四ヶ月後の超決闘イベントを発端とし、世界はまた激動を迎えるであろう――



 と。

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