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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第三章 絆愛編

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79話 大焦熱地獄

「な、何だ……」



 さっきまで天に向けて切り立っていた岩山は崩れ、ゴブリンの巣は潰れた。岩山があった場所の地面は沈下し、巨大なクレーターの様になっている。

 所々から緑色の手や足が瓦礫から突き出している事からさっきまで居た空洞だと言う事は辛うじてわかるが、もはや原型は無く、素の中に居たゴブリン達がこれで全滅してしまったのではと思うほどだ。



「レオ! ディーナスやエヴァを頼むぞ」


「何をするんだ?」


「確認したいことがある!」



 俺は沈下した地面を観察する。なぜいきなり……いや、おおよそ雨刃かリンが、またはあのオーガが何かしたんだろう。

 ならあの二人は普通に考えればこの岩の下。仮にオーガの攻撃によるものだとしても、あの二人が黙って下敷きにされるとは考えにくいが、まさか……



「おいっ!! 雨刃!! リン!!」



 声は反響するのみで返事は無い……いや、今俺の声に反応するように石ころが動いたような。

 再びカタカタっと石ころが動き……クレーターの中心部分の瓦礫が飛び、下から手が突き出される。すぐにもう一方も手も地面から抜け、その上半身が露になる。

 赤色の皮膚。人間ではありえない筋肉量。頭部の角は二本の内一本折れてしまっている。全身から血を流し、荒い息を吐いてはいるが未だ健在。皇帝鬼(エンペラーオーガ)……伝説級に匹敵する化物。



「仕留め損なってるじゃねーか……雨刃!」



 それだけじゃない。

 エンペラーオーガを筆頭にホブやスペルも瓦礫の下から這い出てきている。



「やってくれたな、針鼠男……小鬼(ゴブリン)は全滅か。ホブも半数はやられたし、ロードも死んだな。スペルは何体か無事だが、数匹生き残ってても意味が無い」



 エンペラーオーガは自分の周りにいるゴブリン達の総数を数えながら呟いている。

 全身の傷は既に修復が始まり、少しずつ力を取り戻している。完全に取り戻す前に勝負を決めたい所だが……



「しかしまぁ、良いとするか。あの針鼠男の代わりがそこにいるからな」



 エンペラーオーガはキッと俺を睨みつけニンマリと笑う。その瞬間俺の全身に恐怖が走る。これが、伝説級にも匹敵する魔物の威圧。

 空洞の中で会った時は力も未知数で雨刃も居た。何よりここまで直接的な敵意を向けられたわけじゃなかった。

 だが、今あいつは瓦礫の中から這い出てくるだけでなく、それをものともせずに次の獲物を狙っている。こいつは……今殺さなければ絶対に不味い!



〈雷術奥義 雷化・天装衣(ラスカディグローマ)



 雷化し、テンペスターとシュデュンヤーを抜く。そしてそれと同時に突進。加えてテンペスターに雷を纏わせ、赤巨鬼に穿つ。



〈雷帝流 雷撃一閃・突〉



 一直線に放たれた雷はエンペラーオーガの腕に当たると爆散し全身に電流を流す。

 ほんの一瞬……一秒にも満たない時間ではあったが、麻痺によりエンペラーオーガの動きを止めた。今の俺は雷そのもの。一秒もあれば、余裕であいつに一撃入れれる!!



神鳴(かみなり)術 神鳴放電砲(しんめいほうでんほう)



 エンペラーオーガの背後に回り込み、シュデュンヤーとテンペスターから雷撃大砲(プラズマキャノン)以上の高電圧で雷を放つ。

 雷は激しい音を立てながら爆発し、辺り一帯に静電気を撒き散らす。だが、これで安心は出来ない。この程度で倒れるなら、さっきの崩落で死んでいるし、雨刃達が仕留め損なうわけがない。



「連撃行くぞ!」



〈雷帝流 稲妻剣〉

〈雷帝流 雷鋼剣・獄〉



「まだまだ……」



〈黒帝流 剣狼〉

〈黒帝流 双剣狼〉

〈黒帝流 打上剣狼〉



 エンペラーオーガの周りを回りながら俺が使える剣技を叩き込む。



「レオから学んだこの技……」



 エンペラーオーガの正面で足を止め、今一度両手に力を込める。レオ、お前の技『麒麟駆け』……もらうぞ。



「連撃は進化する!!」



 右手(テンペスター)には白き雷を……左手(シュデュンヤー)には黒き雷を……敵を滅する白黒の連撃剣。



〈雷帝流 白黒雷多連斬撃はっこくらいたれんざんげき・獄〉



 殆ど適当。型も技もあったものじゃない。だが、俺は両刀を振るい、休む間もなくエンペラーオーガに剣を叩き込む。白と黒が入り混じり、目にも止まらぬスピードを生む。



「おらぁぁぁぁ!!」



 テンペスターとシュデュンヤーを重ねた一太刀を最後に、俺の動きは止まった。



「はぁ……はぁ……はぁ……」



 まるで、世界の時が止まったように、俺の息以外の音が聞こえない。俺が駆け出してから一分も経っていない。



「ぐ……ぐは……」



 バチバチと帯電しながらもエンペラーオーガは膝を付き、血反吐を吐く。対する俺も両剣の剣先を地面につけ、がっくりと膝を付く。



「やってくれるな……ガキ。今の連撃、針鼠男にも勝る威力であった」



 頼むからこのまま倒れろ……

 これ以上やるなら、あれを使わなくちゃいけない。



「だが……俺を倒すには至らない!!」



 エンペラーオーガは立ち上がり、その大木の如し足で蹴りを放つ。

 俺は胴をもろに蹴られ、肺から空気が漏れ、体は宙に浮き、弧を描きながら飛び、地面に落ちた。



「ぐ……ごほ……ごほっごほっ……」



 何故だ。

 俺の頭に浮かんだのは痛みや疲労よりも一つの疑問。

 雷化・天装衣(ラスカディグローマ)を発動している間は俺の体質そのものが雷へと変化している。自然の雷を掴めないように、今の俺を蹴るなんて事出来るはずがない。だが、今あいつは確実に俺を蹴り飛ばし、痛みを与えて来た。あいつが特殊なのか、俺の雷化に何かが起きているのか。



「少々妙な技を使っているようだが……無駄だ」



 雷化・天装衣(ラスカディグローマ)の物理無視が発動していないのは謎だが、今は考えている余裕がない。一瞬でも気を抜けばこいつには勝てない。



「やるしかない……」



 今までの戦いではあえて使ってこなかったが、伝説級相手に悠長な事は言ってられない。まずは周りのホブやスペルを潰す!!



「開け!! 地獄の門よ。来い、地獄の狂気!」



〈等活地獄〉



 右手のあざが黒き光を放ち、視界を黒く染める。

 次第に光は弱くなり、再びエンペラーオーガやホブゴブリン、スペルゴブリンが何事も無いように現れる。

 俺が味わってきた地獄の中で、等活地獄は最悪だった。比較的“痛み”を与えてくる地獄が多いのに対し、この地獄は変化球。自我を失い、敵味方の区別すら出来なくなる催眠地獄。



「お、おい! お前達、何をしている!」



 ホブゴブリンはお互いに殴り合い、スペルゴブリンは無差別に火球を放つ。この地獄は仲間同士を殺し合わせる最悪の地獄。



「ぐのぅ! ガキめ!! なにをしたぁぁぁっっ!!」


「ちょっとした地獄巡りだ。お前もすぐに連れて行ってやるよ」



 今日は魔力を使いっぱなしだ。残りの魔力的に次の門が最後になる。だが、同時に開ける地獄の門は一つまで。次の地獄を開けば、さっき開いた等活地獄の門は閉じ、ホブやスペルが意識を取り戻してしまう。なるべく時間を稼いで数を減らしたいところだが……



「おぉらぁぁ!!」



 目の前にまで迫ったエンペラーオーガの巨拳が俺に向けて放たれる……が、巨拳は俺には当たらなかった。燃え盛る炎柱が俺の視界を覆い、エンペラーオーガとの間に立ち塞がる。



「な、なんだ……」


「大丈夫か! 雨刃さんと一緒にいた……ブロンズの!」


「あ、ああ……」



 向かって右側から現れ、俺を助けてくれたのはフーバ・ガイエン。〈三首の鬼(クワトロデビル)〉のリーダーで、メンバーのラフとドダラも居る。



「少し遅かったようですね。ランシエ」


「そーでもねーだろう。ブロンズの坊主が粘ってくれたお陰で」



 フーバ達の近くから〈蒼紅(そうく)(あしぎぬ)〉の二人も現れる。レオ達も加えればあの数のホブやスペルも相手に出来る。



「フーバ!」


「あぁ? なんだ!」


「俺がこのオーガをやるから、残ったホブゴブリンやスペルゴブリンを頼む!」


「……わかった! だがそのオーガ、ただのオーガじゃ……」


「頼んだぞ!」



 俺は再び右手の甲に刻まれた地獄の鍵に魔力を集める。

 八つある地獄の内、俺が開ける事が出来る地獄は七つ。最後の地獄である無限地獄だけは、俺じゃ開けない。

 だが、その一つ下の地獄を開く事は出来る。その地獄はどんな強者でも耐える事の不可能な地獄。クリュが盗賊団を滅ぼし、俺がヴァントにてアンデットを全滅させた焦熱地獄の更に上の地獄だ。



「おのれ、ガキが……舐めた真似を!」


「行くぞ! エンペラーオーガ! ……開け! 地獄の門よ!! 来い……全てを燃やし、全てを溶かし、全てを退ける地獄究極の炎よ!」



〈大焦熱地獄〉



 俺が右手を地面に叩きつけると同時に鉄の杭が地面、丁度エンペラーオーガの股下から突き出る。

 鉄の棘は股から脳天に向けて一直線に伸び、エンペラーオーガを串刺しにする。



「まだ……だぞ……!」



 続けてその鉄の棘を支柱とし、各方向に更に細かい棘が全身を突き破るように飛び出す。エンペラーオーガは内部から全身を貫かれ、その場に縛り付けられる。



「ぐ、ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、な、なんだこれは……」


「大焦熱地獄……でも、俺が味わったのとは少し違うな」



 俺は自分が味わった大焦熱地獄を思い返しながら、そのおぞましさに思い出すのをやめる。

 棘で串刺しにされたエンペラーオーガはそれだけでも死にそうであったが、大焦熱地獄は止まらない。足元から吹き出した黒い炎がエンペラーオーガを(なぶ)る様に全身を這いずり回り、エンペラーオーガを焼く。



「う、ぐおぉぉ……うぐぁぁぁぁ……」



 全身を這いずり回る黒炎にエンペラーオーガはなす術も無くただ焼かれる。

 だから使いたくないんだよな、地獄の鍵。アンデッド相手ならまだしも、生身の生物相手ってなると……だが、一度出た黒炎は対象を焼き尽くすまでは止まらない。俺の意思でも。

 次第にエンペラーオーガの皮膚は焼け焦げ、爛れて落ちていく。肉は焼け落ち、血は燃え尽き、骨は黒く炭化する。



「クソがァァァァァァ」



 エンペラーオーガは最後の断末魔を残し、物言わぬ燃えカスと変わった。



「はぁ……はぁ……これで……良かったんだ……」



 周りの状況も優勢だ。

 大焦熱地獄の門を開いた事で等活地獄の効果は消えたが、ホブゴブリンやスペルゴブリンは正気を取り戻す前に半数がフーバや〈蒼紅(そうく)(あしぎぬ)〉のベポやランシエによって倒された。

 残る半数も現在掃討中だ。



「クロト……! クロト!!」



 この声は……エヴァか? でも……俺はそろそろ限界だ。エヴァの声を最後に俺は気を失い、そのまま倒れた。

 後は、任せた。

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