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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第三章 絆愛編

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72話 〈シルク・ド・リベルター〉

「マスターボウ、指名の依頼が来てるボーン」



 レオ公爵領、最大の都市『アイゼンウルブス』に滞在しているオリハルコン級冒険者パーティ〈シルク・ド・リベルター〉。

 サーカス団も兼ねているこのパーティはレオ公爵に気に入られ、この街でサーカスを開催していた。サーカスをする為に建てられている巨大なテントの裏に備え付けられたもう一つのテントは、団員達の控室になっており、今この場には全メンバーが集まっていた。



「誰からの依頼なの?」



 白いフロックスーツに知的なメガネを付けた()が、ややねっとりした喋り方で答える。〈シルク・ド・リベルター〉のリーダーにしてオリハルコン級冒険者〈風神〉マスターボウだ。



「それが、国から直々の依頼ボーン」



 ヒラヒラと紙をなびかせながら長身の男が答える。

 マスターボウとは色違いの黒いフロックスーツに黒いシルクハットを着けている。〈シルク・ド・リベルター〉のメンバー、ボーンマン。ちなみに本名ではない。



「国から直々に? んまぁ、すごいじゃない! 内容は?」


「それが……これを見てほしいボーン」



 ボーンマンから紙を受け取り、その内容を読む。



「……まぁ、なるほどね。バージスちゃんには悪いけれど、これは私達の出番よねぇ」


「内容ハ何ナンダ?」



 そこへ大きめの竹笠を着け、“奇妙なマント”を身に纏った男がガシャガシャと音を立てながら歩いてきた。

 奇妙なマント……黒いロングコートに似たマントで、一見どこにでもあるようなマントだ。しかし、奇妙なのはそのマントを覆い隠すほどの大量の片手剣がくっついているという事。正確には刀身五十センチほどの片手剣の柄の部分がコートと縫い付けられており、それが全身に渡っている。その姿はどこかハリネズミを思わせるような格好であり、ハリネズミと違うのは針が剣である事と、腹の部分も剣に覆われている所だ。

 柄の部分のみがくくりつけられているため刃の部分がユラユラと揺れ、男の一挙手一投足に合わせてカチカチと音を立てている。剣のマントの下から覗く足や顔などの生身部分には包帯が巻かれており、包帯でぐるぐる巻きの頭は大きく開かれた口と赤く光る片目だけが見えている。

 この奇妙な男は〈シルク・ド・リベルター〉の強さを象徴する男でもあり、謎の多いサーカス団の謎をさらに深めている男でもある。名を雨刃(うじん)と言う。



「大陸全土を巡り、被災地の復興支援。及びサーカスを開催し、国民に元気与える仕事よ。もし魔王と遭遇した際にはその撃退にも協力して欲しいらしいわ~」


「メンドクサソウダナ」


「雨刃ちゃんはいつもそうね。でも今回ばかりは国からだもの、しっかりお仕事しましょ〜!」


「了解だボーン」


「ボーンマン、グラブス、メデューは今夜のサーカスの準備をするわよ。ここでする最後のサーカスになるわ。雨刃ちゃんとリンは資金調達の為に適当な依頼を受けてきて頂戴」



「御意!」


「ワカッタ」



 雨刃とリンが応える。リンは紺色の長髪を高い所でポニーテールに結んだ女性で、腰にはレオと同じ東洋の刀がさしてある。リンはサーカスには参加しない完全な戦闘員で、芸名を使う必要も無い為、本名のまま活動している。



「さぁ!〈シルク・ド・リベルター〉出動よ!」





 ホワイトパピーはアイゼンウルブスの中でも最安値に分類される宿だった。客引きをしていたのは女将の娘でフィールというらしい。女将さんはふくよかな赤毛の女性だった。



「すいませんね フィールが強引な客引きを……」


「いえいえ! 私達も宿を探していたのでちょうど良かったです!」



 実際探していたし、話を聞いてみるとここの価格は朝飯付一日銅貨四枚で、俺達にとってはまさにうってつけの宿だった。

 男女分ける必要もあった為、二部屋借りて、今日依頼で貰った金は底を尽きた。幸いにも食料はまだ残っていたので、それで夜を凌ぎ、俺達は一つの部屋に集まった。



「これから数日、長ければ数週間はここで過ごす」


「いろいろ蓄える必要もあるしね」


「明日からは今日よりも報酬のいい仕事をすればなんとか生活も出来るし、金が貯まれば物も買える」


「なんとかやっていけそうでありんすな」


「ああ。あと、差し迫って決めなければいけないのはパーティ名だな。即席のパーティではない以上パーティ名を決めてくれって係員の人も言ってたからな」


「おれは何でもいいぜ」


「わっちも特にこれという案は無いでありんすが」


「なら氷の姫(イエロ・プリンセッサ)は? 馴染みもあるし!」


「それは俺も思ったんだが、一般的に俺達は死んだ事になってるし、もしその名前で注目されるような事態になったら何かと大変だ」


「あ、そっか……」


「なんだ? その氷の姫(イエロ・プリンセッサ)ってのは」


「わっちは知ってるでありんすよ」



 レオの疑問にシエラは自慢げに応える。



「俺達がエルトリア学園で使っていたチーム名だよ。俺とエヴァ以外にあと三人居たんだけど、とある出来事がきっかけでバラバラになっちまってる」


「懐かしいでありんすね。あの時は喋る事も無かったでありんすが」


「そう考えると今一緒に旅をしてるのは少し不思議な感じだな。……と、そんな事より名前を……」


「ぐがーー」


「自分から聞いといて寝てやがる……」


「じゃあ、とりあえず今日はもう寝ようか?」


「ああ、そうだな」


「了解でありんす」



 名前はまた今度決めるという事でエヴァとシエラは部屋へ戻っていった。レオはほっといても大丈夫だろうと思い、俺はそのままベッドに入った。





 次の日の朝。

 目が覚めた俺は軽く身支度だけして一階に降りた。

 一階には受付をするカウンターがある正面玄関と、その隣に食堂があり、朝食はそこで出してもらえる。レオはもう部屋にいなかったし、女子の部屋の方からは人の気配がなかったので、皆もう起きてるんだろう。

 一階に降りるとフィールがカウンターから勢い良く顔を覗かせた。



「あ、昨日の旅人さん。おはよー!」


「おはよう」


「こら! フィール。お客様になんて口聞いてんだい! すいませんねぇ」


「大丈夫ですよ」



 俺は、軽く会話をしたあと、食堂に入った。食堂とはいえ、大きめの部屋に四人がけの丸テーブルが数個置いてあるだけの質素な部屋だ。

 入ると奥のテーブルでエヴァが既に朝食を食べていた。俺達以外には誰もおらず、貸切状態だった。



「エヴァ、おはよう」


「…………」



 声を掛けたが、聞こえていないのか返事をしてこない。

 最近、俺達と一緒にいる時は何でもない風に装っているが、一人の時に憂れるような表情をしてることが多い。



「おはよう」



 俺はエヴァの視界に入るようにして、再び声をかける。



「……あ! お、おはよう!」


「おう、おはよう」


「遅かったね」


「らしいな……レオとシエラは?」


「えーと……シエラはすぐ近くの森に行ったよ」


「ん? 森?」


「うん 腕がなまるといけないから早朝訓練だって」


「へぇ、意識高いな。レオは?」



 エヴァは水を飲みながら人差し指で上を指す。上……?





 宿屋〈ホワイトパピー〉は一階が正面玄関と食堂。

 二階が客室になっており、三階は女将やフィール達の生活スペースになっている。三階建ての建物はこの近くにはなく、赤い屋根が頭一つ飛び出している。

 その三角屋根の上に完璧なバランスであぐらをかき、両目を閉じた紫髪の青年が居た。腰には一本の白い刀がさしてあるだけ。

 大和に居た頃、よく行っていた瞑想をしながらレオは、この間のロックドラゴンとの戦いを思い返していた。



 最終的には勝てたとはいえ、それはシエラの回復、クロトの新しい力、ハンター隊の援護。それらがあったから勝てたのであって、レオ一人では勝てたかどうかわからない。



「この程度じゃだめだ」



レオの脳裏に浮かぶのはクロトの獄化・地装衣(インフェルノトール)、シエラの神眼月の女神の投擲眼アルテミス・シュス・アイ。エヴァリオンもまだ未知数ではあるが強力な力を無意識で呼び出したと聞いている。



「おれはもっと強く……強くならないと」



 その時、ホワイトパピーからクロトとエヴァが出てきた。レオは目こそ閉じていたもののすぐにクロト達だと気づき、目を開けた。振り返ったクロトは屋根を見上げ、まっすぐレオを見る。



「レオ! 仕事に行こう!」


「……今日はパスだ」



 クロトもエヴァも不思議そうな顔をしていたが、すぐに「わかった!」とだけ言って冒険者ギルドの方へ歩き出した。

 レオは立ち上がり、建物の入り口とは反対側から降り、路地に消えた。





「しかしなんでレオの奴来なかったんだろうな」



 俺達はホワイトパピーを出た後、冒険者ギルドへ向かい、依頼を受けてきた。

 その目的地である森には着いたけど、レオは誘ったのに来ないし、シエラは帰ってこないし……仕方ないから二人で行く事にした。



「色々と考えがあっての事じゃない? レオも直感で動くタイプだけど、頭が悪いわけじゃないし」


「まぁな……気にしても仕方ないし、とりあえず仕事やるか」


「うん!」


「それにしてもブロンズなのによく討伐の依頼が回って来たな」


「近くに大規模なゴブリンの巣が発見されたらしいよ。そこをシルバー級冒険者パーティが叩くから、漏れたゴブリンを倒してほしいって依頼みたい。数が多いらしいし、結構な冒険者に声かけてたよ」


「なるほどな、どうりでこんな末端にまで……ま、依頼は依頼だ。ゴブリン程度狩り尽くしてやるぜ」


「一匹あたり銅貨五枚! 上手くやればここでかなり稼げるよ!」


「おう!」





 一方、別の場所では。



「ナンダヨ、小鬼(ゴブリン)狩リッテ。オレ達ノスル依頼カ?」


「ここの冒険者ギルドには世話になっている。困っているのなら助けてやるのが当然だ」


「マ、ソウダケドヨ」



 片手剣が大量に張り付いたマントを着た男、雨刃(うじん)とくすんだ赤色のマントを身に纏った女、リンが歩いていた。

 二人共オリハルコン級冒険者パーティ〈シルク・ド・リベルター〉のメンバーで、共にミスリル級、つまりオリハルコンより一つ下の位に位置する冒険者である。



「ギシャァァァ」


「グギャァァァァ」



 草むらから飛び出した二匹のゴブリンが雨刃とリンに飛びかかる。



小鬼(ゴブリン)ッテノハ多少ナリトモ知性ガアルハズダガ……」



 羽刃はマントについた剣を一つ掴み、ゴブリンを斬り捨てる。

 本来なら縫い付けられている片手剣を掴むとマントまで付いてくるはずだが、片手剣とマントはたった一本の糸で繋がっており、マントから糸が伸び、まるで縄鏢(じょうひょう)の剣バージョンの様になっている。



「格上相手ニ向カッテ来ルノハ勇敢デハ無ク、無謀ダ」



 もう一体のゴブリンも、既にリンに斬り伏せられている。

 リンは素早く二体のゴブリンから耳を削ぎ落とし、雨刃に投げ渡す。それを受け取った雨刃は、マントの中、腰にぶら下げている袋の中に入れた。



「さて、次の獲物を探しに行くぞ」

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