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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第二章 地獄編

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63話 vsロックドラゴン

 大陸には古来より七頭のドラゴンがいるとされていた。

 七頭のドラゴンはそれぞれに属性を持ち、地を、あるいは天を治めてきた。

 その肉体さることながら、体内に宿す魔力は他の魔物とは比べ物にならず、他の生物と圧倒的な力の差があった。

 しかし、その全てのドラゴンを知る者はおらず、文献にもその一部しか記録が残っていない。

 七頭のドラゴンはその絶対的な力で魔物界に君臨し続けた。超級魔物に分類されているのは体内に炎を宿す〈炎の亜竜 サラマンダー〉。突如としてテリア山に現れた〈岩石の亜竜 ロックドラゴン〉。氷を操り、そして食らう〈氷の亜竜 グラキエースドラゴン〉の三頭。そして伝説級魔物に分類される〈純竜の王 ドラゴン〉。

 文献に記されているのはこの四頭のみ。

 更に〈火竜のサラマンダー〉はマルス、アジェンダ、ヴァラン、そしてクロトに。〈純竜の王 ドラゴン〉は数年前、龍騎士団(ドラゴン・ナイツ)に倒されてしまっている。

 俺の記憶が正しければ文献に載ってたロックドラゴンはこんなんじゃなかった。岩の様な鱗を持っていたが、こいつはまるで岩をそのまま貼り付けたみたいな鱗だ。しかもこんなに巨体だとは書いてなかった。つまりはこいつは文献とは別の個体か、もしくは突然変異種という事だろう。



「アイリス、作戦は?」


「……ハンター隊は少人数で固まって散開! 一定の間隔を開けつつ、奴に矢を浴びせてやれ!」


『はッ!!』


「シエラと私、そしてクロトらは正面から相手するぞ」


「任せろ!」


「おう!!」



 俺とレオは一直線に走り出す。

 雪の上での動きは鈍くなるが、それもこの一ヶ月でかなり慣れてきてる。こいつはかなりでかい上に全身を鱗という鎧で覆っている。



「まずはこの鱗の強度が知りたい! レオ!」


「任せろ」



 レオは足でブレーキをかけつつ、腰の二代銀月を握る。



至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 突破の型 『飛翔する鉤爪』〉



 抜刀した二代銀月から放たれる斬撃は空を飛び、ロックドラゴンの左肩に命中する。鱗にヒットした斬撃は鱗を多少削るが、斬り裂き切れずに弾かれ、遠い彼方へ飛んで行く。



「斬れないのか」



 左肩の部分は土煙が舞っており、鱗にはキズこそ付いたもののダメージはゼロだ。思ったよりも鱗が硬い。



「どうする、クロト。鱗は破れなくもないが、かなり時間と体力を使う それにあいつがそれまでじっと待っててくれるとは思えねェし……」 


「ああ……狙うは鱗に覆われていない目や口、あとは鱗の薄い腹の部分だ」



 ハンター隊の様子を見ると四人以下のグループに別れそれぞれ矢を撃っている。だが、ロックドラゴンの鱗の鎧は矢程度では破れず、鱗に弾かれてボロボロと落ちていくだけ。例え刺さったとしても全くロックドラゴンの生身には届いていないらしい。

 あれじゃ無意味に等しい。どうする……もっと効果的な攻撃方法は……



「悩んでても仕方ない! とりあえずお前の言った目や口、あと腹の部分をやる。クロト! 腹の方は頼んだぞ!」


「あ、ああ!」



 レオは再び駆け出し、ゴツゴツとした鱗を足場に、まるでロッククライミングをするように登り始めた。

 危ない、考えすぎると動きが止まる。俺の悪い癖だ。

 とりあえずこいつを相手に余裕なんて一ミリも無い。賭けではあるがやつの腹に技を打ち込んでやる。



「エヴァ! シエラ! アイリス! なるべく俺達に注意が行かないよう、奴の気を逸してくれ! 出来れば鱗の脆い部分も見つけてくれると助かる!」


「わかった! エヴァリオンと私で気を逸らす シエラは神眼を使ってロックドラゴンを観察してくれ」


「わかりんした」


「任せて」



〈氷術 雹絶帝砲(エンペラーキャノン)



 エヴァの両手から氷が放たれ、ロックドラゴンの右頭部の角に直撃する。だが、ロックドラゴンの鱗は頭部も守っている。

 これもダメージはゼロだ。

 だが、図体がでかく鱗で覆われていても顔にいきなり氷塊ぶつけられれば気づく。ロックドラゴンは最初の標的をエヴァに決めたらしい。

 アイリスは一度に三本の矢をロックドラゴンに放っている。殆どは弾かれているが、少しずつ鱗の脆い部分をあぶり出している。

 シエラは左目を閉じ、右目の神眼、“月の女神の投擲眼アルテミス・シュス・アイ”でロックドラゴンをじっと観察してる。神眼には弱点を見る力もあるのだろうか。

 とにかく、やつが動き出す前に腹に一撃入れる。それの効果次第でこれからの戦い方が変わってくる。



「さて、生身でこいつに有効打が入るか、確認だ」



 アイリス、エヴァがロックドラゴンに強襲をかけてる間に俺は全速力で走り、ロックドラゴンの腹下に滑り込む。

 下が雪ってこともありよく滑る。

 雪を撒き散らしながら俺は一番脆そうな部分を探す。流石と言うべきか、腹にも薄い鱗がびっしりと生えている。

 と言うかこんな図体がでかいとどこが脆いか探すのも一苦労だ。だが、いつまでもここにいるわけにはいかない。いつ俺に気づいて攻撃されるかわからないからな。



「とりあえずまずは一撃入れる」



〈雷帝流 刀流雷撃〉



 テンペスターをロックドラゴンの腹に突き刺す。

 鱗は意外にも柔らかく多少の抵抗はあったが、すんなり刺さった。ロックドラゴンは特に動きも吠えもしないという事は、ほとんど何も感じてないんだろう。

 俺はテンペスターに雷を流し、多方向に展開する。



「グァァァァァァァァ」



 体内に電流が駆け抜け、流石のロックドラゴンも痛みに吠える。

 電撃は通る。俺の攻撃は有効打に成り得るだろう。このまま内側を破壊すれば……と考えてると後ろで何かが落ちる音がした。雪のボフッという音が。



「レオ!!」



 レオ?

 次の瞬間今までロックドラゴンの影になって暗かった周りが明るくなった。



「クロト! 逃げて!」



 逃げる……?

 上を見るとはるか上空にロックドラゴンが居た。いや、そんなはずはない。あいつの翼は退化しているし、この巨体で飛ぶ方法なんてあるわけが……

 見ているうちにどんどんロックドラゴンの影は大きくなっていく。直後、ロックドラゴンが落ちてくる。

 俺の立っている場所よりも前に落ちたおかげで踏み潰されることはなかったが、勢いで体が吹き飛ばされる。



「……ッ!」



 気づいた時には俺は雪に埋もれてうつ伏せに倒れていた。

 顔を上げるとロックドラゴンはどうだと言わんばかりに尻尾をドンドンと叩きつけている。



 俺はエヴァ達の居る所まで飛ばされたらしい。なんとか体を起こし、周囲の被害を確認する。

 周囲に生えていたはずの木々は薙ぎ倒され、ハンター隊もバラバラに散ってしまってる。体を起こせてるのは極少数だ。アイリスとシエラは後ろでお互いを支え合っておかげで何とか無事。レオは体が動かないのかうずくまるような体勢のまま動いていない。エヴァはそのすぐそばに倒れている。

 とは言え、俺も立つのだけでギリギリだ。体の節々がギシギシと音を立てている。足にも今のダメージと雪山登山疲労が来ている。

 一瞬で戦況を変えられた。



 ふと気づくと右手に持っていたはずのテンペスターが無くなっている。ロックドラゴンに刺したのは覚えている。つまりまだ腹に刺さっているか、もしくはさっきの衝撃でどこかに吹き飛ばされてしまったか。

 仕方なくシュデュンヤーを抜き、一旦考えないようにする。



「クロト! 話がある!」



 振り向くとアイリスがシエラを支えながら俺に話しかけてきていた。俺はロックドラゴンに背を向けないようにしつつ、すり足で下がる。

 レオやエヴァがいる位置まで下がると改めてアイリス達の方を向く。



「アイツの弱点が少しずつ見えてきた」


「本当か?」


「ああ、体がでかい事もこれで説明が出来る。レオとエヴァリオンはどうだ? 動けるか?」



 俺は両脇で倒れている二人を見る。



「問題ねぇよ……」


「……私もまだいけるよ」



 レオとエヴァが起き上がる。それでもかなり無理をしているはずだ。

 普段の二人ならこの程度でへばったりしない。それもこれも雪山と言う環境が起因している。二人とも辛うじて立ってはいるが、二度三度攻撃を食らえばどうなるかわからない。



「よし、三人はなるべく奴の鱗を攻撃してくれ」


「鱗?」


「ああ、おそらく奴は岩石そのものを全身に纏っている」


「なに?」


「何度か鱗を攻撃したときにポロポロと崩れたり土煙が舞ったりした。それに、ただ一体しか存在しないとされている七頭のドラゴンにこんな特異個体がいるのはおかしい。全身に分厚い鎧を纏っているならこの大きさも納得出来る」


「……なるほど、確かに腹下の鱗は柔らかかった。もしそれが正しければ、本当の鱗はそう硬くない可能性もある。勝機はまだまだあるぞ」



 勝機は……本当にあるのか。

 こいつはまだまだ本気を出しているようには見えない。何かまだ、超級と評されるだけの何かがあるはずなんだ。もしそれを出されたら、まだ勝てるなんて言えるかどうか……

 いや、ここは勝てると自信を持つしかない。負ける想定をしても絶対に勝てない。行くぞ、皆。

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