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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第二章 地獄編

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62話 超級亜竜『ロックドラゴン』

 テリア山に入ってから約一週間。三段目に到達した俺達は順調に進んでると言えた。

 途中何度も魔物に遭遇したが、いずれもホワイトベアーやホワイトオークで、ハンター隊のコンビネーションと弓術があればなんの問題も無かった。

 危険もなく、安全なのはいいんだが……ただ歩いてるだけってのは楽しくない。暴れ足りない。

 なんて考えてると前の方で雪が盛り上がっている部分がある。中で魔物が寝てるんだろう。

 思った通り、俺達の足音に反応して雪が盛り上がり、中から白い毛並みのオークが現れる。ホワイトオークだ。



「前方三十メートル! ホワイトオーク出現! 全体、戦闘態せ……」


「俺一人で十分だ!」



 俺は雪に覆われている地面を無理矢理踏み込み、雷と瞬動術を合わせてギザギザに高速移動し、ホワイトオークに近づく。



雷化・天(ラスカティグ)……いや、雷装衣で十分か」



〈雷術 雷装衣〉



 俺の速度にこそ体が追いつけていないものの、ホワイトオークはすぐに俺を標的と認め、拳を振り下ろす。



「面白い、行くぜ」



〈雷術 雷崩拳〉



 左から飛んでくる拳に右手から放たれる雷崩拳で受ける。



「グゥ……グァァァ……」



 雷を伴う衝撃がホワイトオークの腕にほとばしり、痛みに吠える。そのまま何度もホワイトオークを殴る。



〈雷帝流 雷鋼剣〉



 すばやくテンペスターを抜き、痛みで仰け反っているホワイトオークの胴体に雷の一撃を叩き込む。ホワイトオークは体を真っ二つに斬られ、血しぶきを舞わせながら絶命した。

 三年前は傷をつけるだけでもかなり苦労したけど、両断まで出来るようになっていた。雷の質も上がってるし、単純な筋力や剣術の腕も上がってる。

 俺も強くなってるんだな。



「いっちょあがり」



 テンペスターを鞘に収め、俺は皆が居る所まで戻る。



「クロト、暴れ足りないのはわかるけど団体行動乱しちゃだめだよ」



 エヴァがやや困った顔で言う。



「全くだ。次はおれにやらせろよ」


「レオも乗らないの!」


「堅い事言うなよ」


「自由過ぎる事言わないでよ!」



 レオのわざとなのか天然なのかわからない戦闘狂台詞に、エヴァは疲れた様子で突っ込んでいる。早くも見慣れて来た光景だ。

 しかし、レオを改めて見ると、やっぱりこいつって少しおかしいんだなと思わされる。気温は常にマイナスで、吹雪く事も珍しくないこのテリア山を、コートも着ずにシャツ一枚で登ってるんだからな。動きも全然落ちてないし、どういう鍛え方したらこうなるのか気になる所ではある。



「ふふ……はははっ!」



 近くで聞いていたアイリスが突然笑いだす。

 遂に壊れたか? ロックドラゴンの襲撃や“奴”の存在。楽ではない雪山登り。精神がおかしくなる要因はそれなりにある……



「いや、悪い。あまりにも自由でついな。それにクロト、三年前とは比べ物にならないほど強くなってるな」


「地獄のような場所で鍛えてたからな!」



 本当は地獄そのものなんだが、流石にそれを言うには説明する時間が足りない。



「それは頼もしい。今度うちのシエラとも手合わせしてもらいたいな」



 シエラ……あの結界術を使える青髪の女の子か。



「ん、わっちとでありんすか?」


「シエラはハンター隊の中でもずば抜けて強くてな」


「そんなことは……」


「へぇ、それは是非とも戦ってみたいな」


「うむ、そのためにもまずはロックドラゴンだな。四段目が見えてきたぞ!」


「だからわっちは……!」



 アイリスが触れないので、俺達もシエラの事は無視して黙々と先へと進む。





〈氷術 武器具現 『トマホーク』 氷斧両断二投撃ひょうふりょうだんにとうげき



 空中に現れた二本の巨大な氷の斧が回転しながらホワイトベアーの胴体を斬り裂いて絶命させる。



「やるな、エヴァ。また殺傷力が上がったか」



 元々エヴァの術にはえぐい殺し方を想定して作ったとしか思えない術がいくつかあったが、地獄の修業を経てその傾向がどんどん強くなっている気がする。



「まぁね〜」


「あれを見なんし。次が来るでありんすよ」



 シエラが指さした方を見るとホワイトオークが二体走りながら迫っていた。



「おれが殺る」


「わっちも行くでありんす」



 レオとシエラが前に出る。



至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 突破の型 『虎武璃(とらぶり)』〉



 レオの姿が一瞬にして消え、次にホワイトオークの首が飛び、血しぶきが舞う。その後ろにレオが現れ、二代銀月を鞘にしまう。雪の積もったここでどうやってそこまで踏み込んでいるのか、レオがこの雪山で動く度に疑問は増えていく。



「見えんした、矢の道が」



 シエラはつがえていた矢を更に引き絞り……放つ。すぐさまもう一本矢を番え放つ。二本の矢は綺麗に心臓と脳天に刺さりホワイトオークは崩れるように倒れ、そのまま死んだ。

 シエラもすごいな。動いてる相手にあれだけ的確な射撃が出来るなんて。



「シエラは神眼持ちなんだ」



 後ろからアイリスが話しかけてくる。



「神眼?」


「ああ、十二人の英雄が持っていたとされる眼で、人理限界のその更に上位に位置し、人理限界以上の力が使える……らしい。私もシエラ以外の例を見た事が無いので、何とも言えないがな」


「へぇ じゃあ一種の才能みたいなもんか」


「そう捉える事も出来るだろうな。シエラの眼は“月の女神の投擲眼アルテミス・シュス・アイ”って名前で……」


「効果は感覚的なものでありんして、わっち自身も上手く言葉にするのは難しいでありんすが、焦点を合わせた所に矢を命中させられる……というか、当てようと思えば当てられるんでありんすよ。遠視や暗視の力もありんすが、何より強いのは、月の満ち欠けに呼応して魔術を増強出来る所でありんすね」


「それってものすごく強いんじゃないの?」


「神眼はかなりの魔力を使うでありんす。そう頻繁には使えんでありんすよ」


「なんにせよ強い事に変わりはない。ロックドラゴン討伐と”奴”の鎮静、クロト達の協力とシエラや我々ハンター隊が力を合わせれば可能なはずだ! 残りも気張って行こう」





 それから数日はすぐに流れた。



 雪山の生活は慣れていない俺やエヴァにとっては至難を極める旅になった。

 突然襲ってくる吹雪、常にマイナスを超える凍てつく寒さ、俺達は次第に(かじか)んでいき、体の動きが悪くなる。

 更に長期間に渡る登山、魔物との戦闘。少しずつ余裕がなくなっていった。

 それでもハンター隊のフォローもあり、ようやく俺達は八段目に到達した。ここまで来る頃には雪山での生活にもそれなりに慣れ始め、平原と同じ程度の動きは出来るようになってきている。



「ユノ、確認したロックドラゴンは一頭だけだったか?」


「はい! 私が確認したのは一頭のみです」


「そうか、一頭だけならいいが……」



 ロックドラゴンはサラマンダーと同じ超級魔物、そして亜竜。魔物狂暴化以前は大陸に一体しか居ないとされる亜竜だったが、平原に超級がうろつく今となっては、その法則も正しいとは言い切れない。二頭、三頭ならまだ良い方だ。最悪の場合数十体の群れが現れないとも言い切れない。



「しかし私が確認したロックドラゴンは通常種よりもかなり大きく感じました」


「大きい?」


「はい、通常のロックドラゴンはでかくても体長十メートルを超える種はいませんでしたが、今回発見したロックドラゴンは目測でも二十メートルは超えていたように見えました」


「そんな巨大種が……?」


「二十メートル……実感がわかねぇな」


「うむ、クロト。この間戦った雷獣・トゥルエノティーグルの約三倍だ」


「三倍……!?」



 あの虎ですらかなりデカかったのにあれの三倍って……



「腕がなるなァ」



 レオはむしろ嬉しそうだ。



「この人数差なら大丈夫だよ」



 エヴァもそこまで深刻には考えてないっぽいな。

 まぁでも確かに、いくら相手がでかくてもここにいるのは狩りを生業とするハンター隊総勢四十名。プラス俺達。

 勝てる見込みは十分にある。こんな所で躓くわけにもいかないし、さっさと倒してヘレリル公爵領に……



「グオオオオオオオオオオオオオオオ」



 突然地を揺るがす咆哮が辺り一帯に響き渡る。

 なんの前触れもない出来事に俺達を含め全員が一瞬にして統制を失う。



「……落ち着け!! 全員戦闘態勢に移れ!! 相手は間違いなくロックドラゴン!! 周囲にロックドラゴンの姿が確認出来ないという事は奴が現れるのは恐らく……」



 ロック。安直に考えるなら地竜。つまりは地面こそが奴のテリトリー。てことは下。

 考えに至るとほぼ同時に前方数十メートル先の雪が盛り上がる。

 と言ってもホワイトオークやホワイトベアーとは比べ物にならない程の地響きを伴う隆起だ。すぐに俺達が立っている辺りもすぐに雪が崩れ始める。



「まずい! 下がれ!!」



 俺は咄嗟に瞬動術を後ろに向かって使い、近くにいたエヴァとシエラを抱えて後方に飛んだ。アイリスやハンター隊もすぐさま後ろへ飛び退き、隆起から逃れる。

 全員が隆起範囲から出るのを待っていたかのように雪が吹き飛び、遂にそれ(・・)が現れる。

 全長は二十メートルを超え、皮膚は名前の通り岩石のような鱗に覆われている。後ろ足は太くがっしりと大地を捉えている反面、前足は小さく爪が鋭い。小さいと言っても一振りで人二、三人は吹き飛ばせるだろう。地中で暮らすうちに退化してしまったのか翼は無く、巨大なしっぽは雪を散らし、大地を抉っている。

 更に頭部に生えた二本の角は牛のように曲折している。



「これが……ロックドラゴン」



 アイリスはロックドラゴンを見上げながら目を見開いている。今まで戦ってきたサラマンダーやトゥルエノティーグルとは格が違うと認めざるを得ない迫力。いや、迫力だけじゃない。伝わってくる強さそのものがもはやこれまでの魔物とは次元が違う。

 エヴァはともかくとして、ハンター隊ですら逃げ出しこそしないものの恐怖に飲まれている。

 レオはロックドラゴンを見上げて笑っているが、その額には冷や汗が流れている。強者と出会った事の喜びと、その強さを目の当たりにした危機感とが競合しているのだろう。

 以前までの士気の高さはもはや微塵も残っていない。実力はまだ未知数。だが登場に関して言えば完全にロックドラゴンの勝ちだ。

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