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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第二章 地獄編

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57話 vsユーノ盗賊団

「……と言う事が昨夜にありまして」



 盗賊団を撃退した後、ちょうど良く日の出を迎えた俺達はエヴァの強い希望でアルテ・ロイテの所へ向かい、事情を話した。



「それはそれは、まことに災難で御座いました。しかし我が村に盗賊が現れた事など今まで全く無く……」


「おれ達を狙って来たってわけか。しかしこの周りは平原だぞ? おれ達が来たその日に、おれ達に知られずに発見出来るものなのか?」


「確かにレオの言うとおり。平原だから姿を確認出来たとしても私達の人数や男女比まで見える程近づけるとは思えない。それだけの練度を持っているならもう少し強いはずだしね。そもそも私達は馬車の荷台にいたんだから見れたとしてもクロト一人。私達がどこの小屋を使ってるかも、村の中の構造を完全に理解していないとわからないはず」


「そ、そう申されましても、我々も盗賊に襲撃されるなど初めての事で……」


「ま、そうだよな。別に何もあんた達を疑ってるわけじゃない。盗賊が現れたって事を知らせたかったんだ。村の人達にも十分気をつけるように言っといてくれ」


「は、はい、わかりました」





「どう思う? クロト」



 借りた小屋に帰ってきた俺達は円卓を囲む。



「そうだな……真偽がどうにせよ、今日の夜が勝負だな。もう一度襲撃を仕掛けてくるなら間を空けずに来るはずだ」


「私に作戦がある」



 俺とレオが一斉にエヴァを見る。エヴァは自信げにニヤリと笑い、作戦を説明し始めた。





 その夜。キンミー村はずれにて。怪しげな二人の人影が密会を行っていた。



「奴らは今日もあの小屋に?」


「はい、そのはずです」


「へ……そうか」


「でも大丈夫なんですか? 昨日は失敗されたようですが……」


「うるせーな。今日は姉御にも来てもらってる。問題ねーよ」


「わかりました。後はお任せします」


「しかし、お前ももう俺達を悪とは呼べないな。自分や村の奴ら守る為に旅人を売るとは……なぁ? アルテ・ロイテ」



 一人は昨日襲撃を指揮していたリーダー格の大男。そしてもう一人はこのキンミー村の村長、アルテ・ロイテだ。



「村を守るためです……あの方々には犠牲になっていただくしか……」


「やっぱそういう事か」


「ッ! 誰だ!」



 屋根の上で身を潜めていたレオが現れる。



「た、旅人様……」


「……あの時のクソ剣士」


「へぇ、面白そうな男。……ラディ。あの男は私が殺るわ」



 どこからともなく紺色の髪の女性が現れる。

 ラディと呼ばれたリーダー格の男や、他の盗賊団は黒いマントに動きやすい服装だが、この女性はマントの代わりに青いマフラーをつけている。



「あ、姉御!」


「お前達は残りの二人を探せ」



 姉御と呼ばれた女性が片手を上げると家々の影から盗賊団が顔を出す。その数昨日の約三倍。十五人以上の盗賊団が待ち構えている。

 姉御と呼ばれた女性は一気に屋根に飛び乗り、両手に持ったナイフをクロスさせ胸の前で構える。



「フッ……流石はうちの智将(エヴァリオン)。完璧な読みだ」


「何をブツブツと」


「名乗れ」


「……ふん。アグリア」


「レオだ」



 お互いに武器を構え、間合いに入る。既に戦闘態勢に入っている。



「レオね。よく見れば中々良い男じゃない。私達の味方になる気は?」


「フッ……自惚れるなよ、たかが盗賊団の頭領が。おれが従うのはおれより強い相手のみ」


「ふーん……つれないのね。じゃあ死になさい」



 アグリアは再びナイフを構え走り出す。



至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 相殺の型 『身代下降(しんだいかこう)』〉



 レオはすばやく抜刀し、数度刀を振る。が、アグリアに刃は届いていない。



「どこを狙ってるのかしら? 大口叩く割には大した事無いのね」


「大した事無いのはどっちだろうな。この技の真の狙いも気づかんか」


「……!?」



 言い終えるとほぼ同時にレオが姿を消す。



「ど、どこに……」


「下だ」



 先程までレオが立っていた場所には丸く穴が空き、レオは家の中に落ちていた。



「一瞬だけ敵の気をそらし自分の身を守れる。下が空洞という条件付きだがな」


「それになんの意味があるのかしら」


「至天破邪剣征流は一対多を想定し、得意とする抜刀術。もともとお前との一対一はおれにとって不利。とは言っても強さの確定していない奴を交えた乱闘をあえて選ぶ事も無い。だからまずお前を離す。後はクロトに任せてな」



 レオは窓を蹴り破って外へ出ると、そのまま近くの盗賊に斬りかかる。盗賊は持っていた剣で受け止めるも、レオは既にがら空きになった胴を斬り捨てていた。



「ぐぁぁ……」


「な、くそ! 待て!」



 アグリアはレオを追いかけようとするが、バチバチと稲妻が屋根に走りアグリアは足を止める。



「お前の相手は俺がしてやるよ」



 すぐ近くに隠れていたクロトが姿を現わす。





 テンペスターとシュデュンヤーを抜き、アグリアを睨む。

 相手は姉御と呼ばれる正真正銘この盗賊団のリーダー。使う術は不明だが、見てわかる通りのナイフ二刀流。おまけにさっきの動きを見るにかなり身軽。スピード重視の速攻型と見て間違いない。

 初めて戦うタイプの敵だし、昨日のように油断していると足元を掬われる可能性もある。気を引き締めていこう。



至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 薙払の型 『横一文字斬り』〉



「ぐあ……」


「ぎゃぁぁぁ」



 レオが周囲に居た数人の盗賊を横一文字に斬り捨て、盗賊達は衝撃で吹き飛ぶ。改めて見て思うが、レオの剣術は常軌を逸している部分がある。まず抜刀からの横薙ぎ一閃で人が吹き飛ぶ程の威力を普通は出せない。俺の様に雷術の爆発力を利用しているわけでもなく、純粋な力であれだけの威力を生んでいるという事になる。どういった原理かは知らないが、まだまだ隠し玉がありそうだ。



「へ……俺が相手してやるよ! クソ剣士!!」


「あなたの相手は私がしてあげる」



〈氷術 氷牢〉



「なに……!?」



 ラディの腰から下が凍り付き、身動きが取れなくなる。ラディが振り返るとエヴァがドヤ顔で立っていた。

 レオが盗賊達をいっぺんに相手し、実力者二人を俺とエヴァが抑えておく。予め決めていた役割分担だ。



「こんなもん……おりゃぁぁぁ!!」



 ラディは無理矢理力を込めて氷の拘束を破る。エヴァの速攻の氷術では表面上を凍らせる事しか出来ず、力でごり押ししてくるラディの様なタイプは少々不利だ。



「あなたには昨日のお返しをしなくちゃね」



〈氷術 冷たい処女(コールドメイデン)



 エヴァが指を鳴らすと、昨日のラディが使った鉄の処女(アイアンメイデン)の氷バージョンが出現する。

 どうもアレに捕まったのが屈辱だったようで、わずか半日で模倣して仕上げてきている。元々エヴァには魔術の才能があるとは思っていたが、見様見真似でコピーする様には驚かされる。



「こ、これは……」



 冷たい処女(コールドメイデン)の胴が開き、中から氷の鎖が飛び出す。ラディに巻き付き、そのまま冷たい処女(コールドメイデン)に巻き取られ、ラディも中に閉じ込められる。意表を突いた一撃で、自分の得意技を相手が使って来るとは夢にも思わずラディはあっけなく冷たい処女(コールドメイデン)に囚われる。



「こんな……もん……」


「はぁ!!」



 エヴァがさらに魔力を込めると冷たい処女(コールドメイデン)ごと巨大な氷柱になり、ラディは完全に氷の中に囚われる。ここはエヴァのオリジナルだそうだ。結局エヴァに使われた時は途中でレオが鎖を断ち切った事で脱出しているため、捕まるとどうなるのかわからなかったのだろう。



「ラディ! お前達!」


「お前の相手は俺だぜ。アグリア……だっけ?」



 俺はアグリアが乗った屋根に飛び乗り、右手に持ったテンペスターと左手に持ったシュデュンヤーを握り直す。

 アグリアは部下をやられた事か、俺達に一杯食わされた事か、はたまたその両方に怒り、顔を歪めこちらを睨む。

 二人の間に独特の緊張感が流れる。相手は長年殺しと盗みを生業としてきた。純粋な戦闘力は抜きにしても場慣れしているのは確実に向こうだ。もし隙を晒せば遠慮なく殺しに来るだろう。この戦い、俺が一瞬でも気を抜いたら死ぬと思っておいた方がいい。



「……」



 しばらく睨み合った後、先に動いたのはアグリア。逆手に持ったナイフを下から上に振り上げる。シュデュンヤーで防ぐが、すぐに逆の手のナイフが振られる。

 体を若干右にずらしながらテンペスターで上に弾き、そのまま二本の剣を合わせて斜めに斬る。が、さすが盗賊と言うべきか、素早い動きで剣を避け、屋根の向こう側に逃げ込む。

 俺は不意打ちを取られないように大きめにジャンプし、上から屋根の向こう側に回り込む。姿を捉えられないのはまずいと直感的に感じ、すぐさま振り返るも、アグリアの姿は既にそこには無かった。



「どこだ……」



 目を離したのは飛び上がった瞬間だけ。移動してれば音や気配でわかるはずだ。もしくは足音や気配を完全に消して移動出来る歩術のようなものを習得しているのか。

 さっきアグリアが初めて姿を現した時も、音や気配は感じられなかった。となればまだこの周辺に居るが、完全に気配を消しているという事になる。

 俺は周りを見渡しながら周囲の気配を探る。視界には何も映らない。気配も素人の俺じゃ掴み切れない。



 その時、ザッという藁が踏まれる音が後ろから聞こえ、振り返るとアグリアがすぐそこまで迫っていた。

 アグリアは長い脚を突くように蹴り上げる。俺はテンペスターの柄で受けるが、衝撃が思ったよりも強くテンペスターが手から離れ、後ろの屋根に刺さる。俺自身も蹴りの衝撃を受けきれず若干後ろにのけぞる。

 足を踏ん張り、なんとか倒れずに済んだが、アグリアは畳み掛けるように右手のナイフを振り下ろす。



「くそ……」



 俺はシュデュンヤーでナイフを弾き、そのままアグリアに振り下ろす。が、一瞬アグリアの方が速く、左手の握り拳を突き出していた。

 トンっと右脇腹に拳が当たると同時に、不自然に突き刺すような痛みが広がる。打撃の痛みと言うよりは刺突の痛みに近い。



「ッ……! なんだ、これ……」

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