表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第二章 地獄編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/216

49話 クロト、エヴァvs四魔王

「ぐぎゃぁぁぁぁぁ」



 真っ二つに斬られたゾンビが、悲鳴を上げながら腐った肉の塊に変わるのを見届け、シュデュンヤーとテンペスターを鞘に納める。



「ふぅ……これで全部か?」


「うん。この辺りにいた奴らは全員殺ったよ」



 戦いで魔力を使いすぎたのか、少し息を切らしながらエヴァが答える。

 ふと右の方を見ると遠くに街が見えた。戦っているうちに街からこんなに離れていたらしい。

 周りは先程までゾンビだった腐った肉や骨が散らばっており、腐臭が立ち込めている。



「アルギュロスやグレイド達ともはぐれたな。とにかく街に戻ろう!」


「うん!」



 戦闘が始まって既に数時間。

 疲労と魔力消費でもう正直言えば体に限界が来ている。意図的に雷化・天装衣(ラスカディグローマ)を使わずに戦ってきているが、やはり素の魔力量でここまでの長期戦は厳しい。まぁ勿論、雷化・天装衣(ラスカディグローマ)を使えばもっと早くにばててしまうわけだが。



《主!》


《アルギュロス! 無事か?》


《はい! ですが、街の中に……》


《わかった。すぐに行く!》



 アルギュロスからの報告を受け、体に鞭打って走り出す。

 俺達、そして天馬騎士団(ペガサス・ナイツ)と遅れて到着した龍騎士団(ドラゴン・ナイツ)の活躍により、アンデットの数はかなり減っている。

 だが、それでも五〇〇〇という数は膨大で、未だにそれなりの数が残っている。ゾンビ達はやはり多少の知性があるようで、四つの門を同時に攻めていたのに、自分達の数が減ったとわかると、唯一破られた南の門へと押し寄せ、一点集中で攻め始めた。

 とは言っても数千のアンデットが一気に押し寄せれば詰まってしまって思うようには進めない。門前にはまだ数百のアンデット軍団が残っている。



「やってみるか……」



 俺は右手の不思議な模様のあざを見る。ゾンビ達はもう数十メートル先に迫っている。



「クロト……?」


「エヴァ、離れてろ」


「え?」


「地獄の門を開く」


「……わかった!」



 エヴァがやや後ろに下がる。



《アルギュロス 今どこだ?》


《今はグレイド殿達と街の中のアンデットを殲滅中です!》



 よし、天馬騎士団(ペガサス・ナイツ)龍騎士団(ドラゴン・ナイツ)も近くには見えない。初めて開く故にどこまでコントロール出来るかわからないが、今ならエヴァが離れてさえいてくれれば、例え暴走したとしても味方に被害を出さなくて済むだろう。



「開け……」





「いいか、クロト。地獄とはイメージだ」


「イメージ?」


「うむ。より強く、より具体的にイメージすればするほど強力な地獄を呼び出す事が出来る」


「そうなのか?」


「……だからこそ今まで何度も地獄巡りしてきたんじゃ。お主の体に刻み込まれた痛みや恐怖の体験が、お主の地獄へのイメージをより強く定着させる。だが、強すぎる地獄は呼び出した者の意志とは無関係に命を奪っていく。地獄とは悪しき行いをした者に、死んでもなお苦痛を与える為の場所。決して生者を殺す為の力ではない。くれぐれも注意するのだ」





 地獄を呼び出すのはこれが初めてだが、地獄が、俺に教えてくれる。

 今の俺なら、このアンデット達を殲滅しうるだけの地獄を呼び出し、操る事が出来る。



「開け……」



〈爆炎術 業魔炎〉



 突然魔力の気配を感じ上を見ると、豪炎がすぐそこまで迫っていた。とっさに後ろに転げながら飛び退く。

 炎の直撃は防いだものの、衝撃で更に後ろに飛ばされる。

 突然の強襲で体勢を崩してしまったが、すぐに体を起こし、周りを見る。前、右、左を順番に見るが、敵影は見えない。後ろはすぐ近くにエヴァがしゃがんでいた。

 とりあえずエヴァは無事だ。



「誰だ!」



 今まで魔術を使ってくるアンデットなんて居なかった。だが、考えてみれば居たっておかしくは無いだろう。ここに来て相手も本気を出したのか?

 そんなことを考えながら目の前をじっと睨む。今は砂煙で姿が見えないが、巨大な魔力の塊を感じる。どう考えても手練だ。

 俺は地獄の門を諦め、シュデュンヤーとテンペスターを抜き構える。



「これ、私達全員で来る必要あったの?」


「ひぇひぇひぇひぇひぇ。ここは本気で落とすんでしたよね」


「ああ……だが、予想以上の収穫があった。二年前に死んだと思っていたぞ」



 砂煙が収まり声の正体が現れる。

 紫の髪に赤いフロックスーツ、黒いマントをつけたフロリエル。白いコートに白髪の老人。リヴァ。黒髪つり目の美女で紺の着物風ワンピースを着た女魔族。そして黒いマントにフードを深くかぶった今の俺と似たような姿の魔族。

 悪名高い四魔王、全員揃ってのお出ましだ。いや、正確には女魔族と最後の一人は知らないが、この魔力量。間違いなく魔王だろう。



「まさか四人まとめて会えるとは思わなかったぜ、魔王ども」


「相変わらず威勢はいいのぉ」


「ひぇひぇひぇひぇひぇ。いくらお前達でも四人相手じゃ何も出来まい」



 確かに、まだ全員と直接やり合うのは得策ではない。

 こいつら魔族は人間とは桁違いの魔力を持ってる上に、異能なんておまけもついてやがる。フロリエルは〈超再生〉。そして残り三人の誰かがこのアンデットを操る異能を持っている。フロリエル以外の三人は未知数だが、フロリエルがあのレベルの異能なら間違いなくそれに匹敵するレベルの異能を持っているだろう。このアンデットを操る異能も数千の軍勢を作り出せると言うだけで厄介極まりない。

 もし本気でこの四人とここで衝突したら、まず俺とエヴァの両方が生還するのは無理だ。最悪の場合は地獄の門を開いて地獄に逃げ帰るしかない。



「……そうだ、お前らに聞いておきたい事がある」


「ひぇひぇひぇひぇひぇ。聞いておきたいこと?」



 エイナさんから聞いた事の真偽をはっきりさせなければならない。



「今から三年前、東の地にあるリブ村を襲撃したのは、お前らの仕業か?」



 四人に反応が出る。特に、他の3人より少し後ろに立っているフードをかぶった男。

 少し見えている右頬のやけどの跡がピクピクと動いている。どうやら知ってるらしいな。



「そうか、なら俺にも正式にお前らを倒す理由が出来た」


「クロト……」


「わかってる。四人まとめて相手出来るほど俺は強くない。だが、今はこれもある」



 俺は右手のあざを眺める。俺の力量以上の地獄を呼び出し、俺諸共こいつらを地獄に叩き落とす。



「ひぇひぇひぇひぇひぇ。なに村だか知りませんが我々は今までいくつもの村を焼き、街を滅ぼしてきました。そんな小さな村一つ、記憶にすら残ってませんよ」


「ああ、そうか……よッ!!」



 俺は一気に踏み込み右手に持ったテンペスターでフロリエルに斬りかかる。が、テンペスターがフロリエルに届く前に、仕込み刀に止められる。リヴァだ。



「久しぶりよの。お主ほどの剣の使い手が死んだのかと悲しんでおったんじゃぞ」


「何言ってんだ、俺とお前はそんな仲じゃねーだろ!」



 俺はテンペスターに雷を流し放出する。



〈雷帝流 刀流雷撃〉



 細い雷が弾け、リヴァは咄嗟に後ろへ飛び避ける。



「相手は二人だけじゃないのよ!」



〈土術 土牢〉



 黒髪の女が地面に手をつくと、足元の地面から突き出した土が俺を捉えようと伸びる。が、それよりも早く瞬動術で上へ飛ぶ。



「氷術 雹絶帝砲(エンペラーキャノン)



 エヴァの両手から放たれた豪氷が黒髪の女めがけて飛ぶ。女は避けるが、氷の纏う魔力に頬が切れる。



「そっちこそ。相手はクロトだけじゃないよ!」



 俺は魔王達と距離を取り、エヴァと並ぶ。



「やるな、エヴァ」


「ふふ。二年前の私とは違うよ」


「しかし、お前らも伊達に魔王じゃねーな」



 シュデュンヤーに黒いオーラがまとわりついてる。さっきから感じる力はこれか。シュデュンヤーは死魂を吸収し、強化する。そして、攻撃に地獄の力を付与する。

 だったらこれはどうなる。

 俺はシュデュンヤーに雷を纏わせようと魔力を流す。するとシュデュンヤーの周りに黒雷が発生する。



「黒雷……これがお前(シュデュンヤー)の力なのか」



 俺はシュデュンヤーに纏われている黒雷を眺める。



「効果は実際に見るまでわからないけど、これは効くんじゃないか?」



〈雷帝流 雷斬砲・獄〉



 俺はシュデュンヤーを大きく振りかぶり黒雷の斬撃を飛ばす。

 斬撃はクルクルと回転し円状に変化、そしてフロリエルの肩を切り裂き、その奥の岩を真っ二つに切断した。フロリエルは反応出来なかったのではなく、効かないぞという事を見せつける為にあえて反応しなかったのだろう。あの嫌味ったらしい顔がすべてを語っている。

 さて、どうなるかな。



「ひぇひぇひぇひぇひぇ。忘れたのですか? 私にこんな……」


「お前こそ忘れたのか。二年前にエヴァの黒氷にやられたのを。〈浸食(ズィアヴロスィ)〉を纏った氷でお前の異能は無効化される。なら、不死者を殺すシュデュンヤーから放たれる攻撃も同等の効果が期待出来ると思わないか」


「ひぇひぇひぇ……ひぇ……ひぇ……どうやらそのようですね……クソガキがァァァ」



〈闇術 重力(グラビトン)



 ズンっとのしかかるような感覚がしたかと思うと、突然身体が重くなる。昔、テリア山で戦った時に食らった魔術か……



「フロリエル、そのままにしておけよ」


「私も加勢するわ」



 させるか。俺はとっさにしゃがみ込み両手を地面につける。



〈雷術 雷神具・地裂剣〉



 地面に流された下向きの雷が方向を上に変えて隆起する。

 地面から突き出た複数の雷剣が魔王達を襲う。だが、流石の反射神経。四人とも後ろに飛び退き、全ての攻撃を避けている。

 が、重力に関しては術の効果が切れて元に戻る。



「やっぱりやるな」


「お前らに褒められても嬉しくねーよ」



 俺はどうしたものかとちらっとエヴァを見る。

 普段は薄い赤色の目が少し濃くなってる。初めてフロリエルと戦った時に見た黒氷を操るエヴァの姿へと近くなっている。この圧倒的に不利な状況を打開しようとしているのかもしれないが、あの力はもう使わせない。



「エヴァ、力を合わせるぞ!」


「え?……あ、うん!」



〈氷術 武器具現 『グングニル』〉



 エヴァが手をパチンと叩くと巨氷槍が現れる。俺は剣を鞘に戻し両手を槍に向ける。



〈雷術 雷撃(ライトニングボルト)



 エヴァが作り出した巨氷槍に雷撃を加え帯電させる。



〈複合魔術 氷槍雷神撃〉



 帯電した巨氷槍が四人を標的として一直線に飛ぶ。



「この程度……」


「待て、アリス」



 アリスと呼ばれた黒髪の女が、土術を放とうとするが、黒いマントの男に止められる。



「お前が魔力を使い過ぎると奴隷紋が不安定になる。ここは俺が……」



〈爆炎術 豪魔滅却〉



 男の手から放たれた炎が爆発を伴って巨氷槍と激突。大衝突を引き起こす。俺もエヴァも衝撃で吹き飛ばされ、地面を転がりうつ伏せに倒れる。

 なんとか起き上がろうとするが、数時間に及ぶ戦闘と、さっきのダメージでほとんど身体が動かない。張りつめていた糸がここに来て切れてしまった。まだ魔王は健在なのに、ここで動けなくなるのか。

 最悪は地獄に帰還してどうにでも出来る。でもエヴァはどこだ? 近くにいなければ連れて行く事が出来ない。どうも俺より後ろに飛ばされたらしく前には居ない。

 あいつらは……砂煙の向こう側か。



「エヴァ! 無事か!」



 返事がない。まずいな……

 ちょうどその時砂煙を掻き分け黒マントの男が出てくる。



「やはり、生きているか」



 こいつとは、どこかで会った気がする……

 顔も見えないし、声もここ直近では聞いたことが無い。だが、それでも何となく会った事がある気がするんだ。



「冥土の土産に教えてやる。お前の村を襲ったのは魔族ではあるが、俺達ではない。俺達の更に上に立つお方、大魔人様だ」


「大魔人……?」


「これ以上話すことは無い。さらばだ」



 男は手のひらに炎が発生させ、それを掴む。すると炎が形を変形させ剣の姿を象る。



「これで、死ね」



 男が炎の剣を振り下ろす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ