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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第二章 地獄編

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41話 思惑渦巻く

 クロト達が出て行って少し経った頃。ブルーバードでは……



「結局、誘う前にクロト達は旅立っちまった」


「うむ」


「これで、良かったと思うか?」


「まぁ少なくとも言わない方があいつにとっては良いだろう。俺達の仲間になれと言うのは、自ら犯罪者になれって言っているようなものだ」


「そうだよな」


「ああ、だが……エヴァリオン、あいつには素質があった。惜しいものだ」


「こっちの道か?」


「いや、バーテンダーとしての……だ」


「ふ、そうか」





 俺とエヴァ、そしてアルギュロスはグレイド達と合流するためセントレイシュタンを目指した。

 と言ってもブルーバードから歩いて三十分もかからない距離なので、なんの問題もなく到着した。ブルーバードで数週間世話になったが、この街に来るのは初めてだ。エヴァは何度か買い出しに出ていたようだが。



「ここが第二の都市とまで言われてるセントレイシュタンか。でかいし綺麗だな」


「城下町とはまた雰囲気が違うんだよ」


「そうなのか。ゆっくり観光もしてみたいな」


「主よ、我は情報収集と街の把握に向かいます」


「ああ、頼む。もし可能なら、イザベラさんがいなくなった後の天馬騎士団(ペガサス・ナイツ)の状況を調べてきてくれ」


「御意」



 それだけ言い残すと俺の肩から家々の屋根に飛び乗りすぐに姿を消した。

 アルギュロスに関しては街にいる間、情報収集をして貰うというのは街に入ってすぐに決めた事だ。一緒にいると人が群がってきて大変だからな。特に女性。



「さて、エヴァ。どうしようか」


「そのグレイドさんって人とはどうやって落ち合うことになってるの?」


「んーと、絶対わかる合図を送るからって言われたけど……仕方ない。それっぽい合図が来るまで歩き回るか」


「うん!」



 俺達はセントレイシュタンの大通りをぶらぶら歩きながらいろいろな店を見て回る。

 エルトリア城下町国民区大通りと同じく商人たちが店を開き、売り込みをしている。エヴァはやはり買い物が好きらしく、あっちを見てはこっちを見て、見てるこっちが疲れてくる。



「あんまりはしゃぐなよ」


「わかってる〜」



 本当にわかってるんだか……





 同時刻。エルトリア城下町騎士団区騎士団墓地。天馬騎士団(ペガサス・ナイツ)元騎士団長、イザベラの墓前。



「エイナさん」


「ん……あー、マナちゃん!」


「お久しぶりです」


「久しぶりだね」



 そこにはクロトの友、マナティアと新団長のエイナの姿があった。



「お互い大切な人達を失っちゃったね」


「そうですね……クロトにエヴァ。それに続くようにイザベラさん」


「本当に……本当に惜しい人を亡くしたわ」


「エイナさんはお墓参りですか?」


「え? あ、まぁそんなところね。これから少し遠出する予定があるから顔出しておこうと思って……と言ってもお花すら持ってきてないんだけど……」


「じゃあ、その花は……?」



 イザベラの墓には一輪の花が置かれていた。



「ほんとだ、誰だろう?」


「確か……ガザニア、でしたっけ」


「よく知ってるわね。花の名前なんて私全然わからないわ」


「母が好きなので、お花」


「そっか。……ところでマナちゃん、将来はどうするつもりなの? 家を継ぐの?」


「いえ、今は兵士になりたいと思ってます」


「兵士……って言ってもいっぱいあるわよ」


「はい。その、できれば天馬騎士団(ペガサス・ナイツ)に……」


「……ほんとに? 私はもちろん歓迎するわよ。でも、騎士団への加入するには普通の人とは違う学園の卒業の仕方になるわね」


「えっと、確か……通常、学園で四年間勉強してからそれぞれの職についたりするものだけど、騎士団に加入する場合は二年間だけ勉強して……えっと」


「実技試験ね。そのあと兵士科と騎士科に分かれて兵士科なら帝国軍、特別精鋭隊、近衛隊の三つ、騎士科なら(ドラゴン)一角獣(ユニコーン)天馬(ペガサス)の三つから選択して入団入隊って流れね」


「なるほど……」


「因みに騎士団志望のマナちゃんには関係ないかもしれないけれど、近衛隊に関しては実技試験上位三十名にのみ選択可能。更に特別精鋭隊は隊長である剛力将軍からの指名が必要なのよ」


「そうなんですね。将軍から直々の指名なんて、私には縁の無さそうな話です」


「そうでもないわよ。マナちゃん、学園でも噂になってるし……あっ! もうこんな時間。私行くね。早くても後一年、新団員歓迎会で会えることを楽しみにしてるわ。じゃあね」



 エイナは早足で墓地を出る。その背中を見つめながらマナティアも決意新たに歩き出す。





 ちょいちょい店を覗きながら俺達は街の中心にある巨大な噴水に辿り着いた。ここにもちらほら露店を出している商人がいるな。



「さて、あれから一時間ぐらい経ったが、一向に連絡が来る気配はないな」


「あ、そういえばこの街、冒険者ギルドがあるんだよ。行ってみる?」


「冒険者ギルドか。よし、行ってみよう」


「うん!」





 更に同時刻。魔族領、古城にて。



「さて、まずは結果を聞こうか」


「ワシらは雪山にて例の二人と交戦した。結果として殺せたかどうかはわからん」


「どういう事だ」


「ひぇひぇひぇひぇひぇ。途中で雪崩が起きましてねぇ、我々も退くしかなかったのです」


「なるほど アリス。お前の方は一応聞いたが、この二人にも話してやれ」


「ええ。私とエンリ、リンリでアルバレス公爵領を攻めたわ。結果としてはまぁまぁってところね。ある程度戦力は削ぎ落とせたけど、帝国の警戒心を煽ってしまったかもしれない」


「ひぇひぇひぇひぇひぇ、確か帝国にはファリオスとかいう化物がいるらしいですが?」


「ええ、そのファリオスに邪魔されたわ」


「どちらも成功とは言えなかったようじゃな」


「まぁいいさ。今帝国とぶつかったところでこちらに勝ち目はほとんどない。あと数年は準備期間だ……まぁその間何もしないわけじゃないがな……ククク」


「ところでアリス。今、エンリとリンリはどこにおる?」


「戦いの傷もかなり治ったから休暇がてら人間の大陸に行ってるわ。場所は確か……」





 俺達は広場の噴水から少し歩いた大通りとは別の通りにある巨大建物の前にいた。



「ここが……」


「宿兼酒場兼冒険者ギルド……」


「見た目はただのボロい酒場だな。とりあえず入ってみるか?」


「うん!」



 俺は少し緊張しながらも重い木の扉を開く。中は酒場風で若干ブルーバードと似た雰囲気がある。

 中は静かだった。てっきり荒くれ共のどんちゃん騒ぎを想像してただけにかなり意外だ。



「…………うぐ」



 薄暗い酒場の中心に立っていた大男がこちら側に倒れた。

 そしてさっきまでは大男で見えなかったが、大男より向こう側、カウンターの手前に二人の少女がいた。



 二人共褐色の肌で、白い髪。二人とも殆ど見分けがつかないぐらいのそっくりさんだが、一人はロングヘア―でもう一人はショートヘアーだ。ロングの方の少女が手に持った槍の矛先を倒れた男の首元に向ける。



「ふん……この程度でシルバー級冒険者か? がっかりだな」


「う……つぇ」


「エンリ、落ち着いて」



 ショートの少女が、ロングの少女――エンリ――をなだめる。



「リンリ、お前も思わないか? この程度の実力でシルバー級だのなんだのと自慢していたんだぞ。滑稽にもほどがある」


「黙って聞いてりゃ、おい! てめぇ!」



 倒れている大男に負けないほどでかい男が席から立ち上がり二人に近づく。

 おいおい。止めなくていいのか? と思ったが、恐らく止めないのではなく止めれないのだろう。受付嬢はひきつった笑みを浮かべ、バーテンダーらしき男も興味が無いという風にグラスを磨いている。



「止めた方がいいと思うか?」


「うん」


「じゃあ止めるか。エヴァはあっちの女の子を止めてくれ。俺は大男を止める」


「わかった」



 俺はテンペスターに手を掛け、考え直して手を離す。相手が素手ならこいつの出番はないな。



「おれぁゴールド級だ。冒険者の本当の恐ろしさ、教えてやるぜ」



 男は拳を振り上げ二人に狙いを定める。

 対する二人はリンリと呼ばれたショートヘア―の少女は少し後ろに下がり、エンリは槍を構えている。

 俺とエヴァは滑り込むように間に割って入り、背中合わせにそれぞれに向く。そして右手に魔力を込め、先手必勝と殴りかかる。



「まぁ落ち着けよ」



〈雷術 雷拳〉



〈氷術 交差する氷(クロス・アイス)



 俺の拳が男の顎を捉え、そのまま後ろへ吹き飛ばす。

 エヴァの方は、地面から何本かの氷の棒を斜めに交差するように突き上げ、槍を防いだ。



「な……誰だ、お前達」


「あんまり暴れるとギルドの人も迷惑」

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