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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第二章 地獄編

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39話 魔力枯渇症

「意外と元気そうじゃねェか」



 目の前の状況に危機感を覚えているのか、額に冷や汗を流しながらマルスが呟く。



「あの口の中の魔力……まずいぞ、マルス」



 あの魔力の感じ……今までとは比にならない程のブレスが来る。



「ああ、アジェンダを別の場所へ」


「だめだ。間に合わん」


「チッ、やるしかねぇか」


「さっきの羅生門は?」



 俺は咄嗟に思いついた事を口に出す。



「無理だろうな。あの魔力で放たれるブレスはさっきのとは比べもんにならん。とても防ぎきれやしないだろうよ」


「ま、心配すんなよ。ガキ」



 マルスはサラマンダーの真正面に立ち、拳を構える。

 まさか真正面から迎え撃つつもりか? いくらマルスの腕力が人間離れしているとは言っても、流石にブレスを止めるなんて無理だろう。



「俺もやる」



 俺はテンペスターを杖にし、マルスの隣に立つ。



「おい、ガキ……」


「俺はガキじゃない。違うなら行動で示せ? だっけか」


「ク……ククク、死ぬなよ。ガキ(・・)


「当たり前だ。こんな所で死ねるかよ」



 俺はテンペスターに雷を纏わせて構える。最後の魔力だ。これで倒れてくれよ。



「はぁぁぁぁぁぁ!」



 マルスの拳が光る。さっきよりも強い光だ。



「グギャァァァァ」



 サラマンダーは俺達に狙いを定め、ブレスを一直線に放つ。

 過去最高にでかいし、ここからでも伝わってくるこの熱気。もし俺とマルスの攻撃があのブレスに勝てなければ間違いなく死ぬだろう。



廉貞星(アリオト)



〈雷帝流 雷斬砲〉



 テンペスター大きく振る。そこから放たれた雷の斬撃は螺旋を描きブレスと衝突する。マルスの攻撃は光の玉となり拳から一直線に伸びた。

 雷斬砲、〈廉貞星(アリオト)〉とサラマンダーのブレスがぶつかり合い、激しい光を放つ。

 互角の衝突を暫く続けた後、ブレスと〈廉貞星(アリオト)〉が弾け飛ぶ。



「よし」



 残った雷斬砲はそのまま螺旋を描き、サラマンダーへ向かう。

 そしてアジェンダの攻撃によって剥き出しになったサラマンダーの肩を貫き、体内を斬り裂いて地面に突き抜けた。



「グギャァァァァ」


「流石にこれで死ぬだろ」



 言った後、俺はニヤッとマルスを見る。



「やるな、クロト(・・・)



 サラマンダーはそのまま倒れ、再び動く事はなかった。

 かく言う俺もそのまま地面にぶっ倒れる。魔力が完全にゼロだ。いや、正確には雷化がとけた時点で魔力はゼロだった。

 そこから回復した魔力を全て今の一撃に使った。流石に倒れる。



「クロト、マルス、お疲れさん。アジェンダもとりあえずは無事だ」


「良かった」


「ガルゥ!」


「さて、これで討伐も終わりだ。帰るか」


「おう」



 なんだか普段の魔力切れより頭がクラクラする気がする。雷化を解いた後に魔力を使ったのは初めてだからだろうか。まぁ、大丈夫だろう。寝れば魔力も回復出来る。





 時は同時刻。場所はサラマンダー戦が行われていた広場より奥の木陰。黒い革鎧を身に着けた数十人の人影がクロト達を見ていた。どこかの正規兵のようにも見えるが、あまりにも禍々しい鎧にただならぬ気配を感じる。おおよそまともな集団には見えない。



「グレイド様」



 一人の男がリーダー格と思わしき男に話しかける。



「ああ、見つけた。あの少年だ」


「すぐに向かわせますか?」


「いや、少し様子を見る」


「了解しました」





「これは魔力枯渇症じゃな」



 ブルーバードお抱え名医、通称『ドクター』が俺にそう告げる。ブルーバードの常連でもある男なのだが、酒代の代わりに顧問医師をやっているらしい。付き合いも長く、医者としての腕も信用できるものらしい。因みに本名は聞いたが教えてくれなかった。



「魔力、枯渇症……?」



 俺達はサラマンダー討伐後ブルーバードに帰ってきた。

 アジェンダの怪我は命に別状もなく、安静にしていれば治るもので、マルス、ヴァランもかすり傷や軽症しか負っていなかった。

 問題は俺だ。帰ってきて数時間経っても一向に魔力が回復しなかった。



「そうじゃ。魔力枯渇症とは文字通り魔力が枯渇することで、魔力が普通より回復が遅くなるというものじゃな。急激な魔力の上昇、低下、更に魔力を無理矢理引き出したりすると発症するケースが多いの」



 急激な魔力の上昇……雷化。

 低下……雷術の酷使。

 魔力を無理矢理引き出す……最後の雷斬砲。



「心当たりしか無いです……」


「フォッフォッフォ。まぁ稀に死ぬケースもあるが、本当に稀じゃから安心せい。数日安静にしていれば少しずつ魔力は戻って来る」


「はい、ありがとうございます……」



 そう言い終えるとドクターは出ていった。魔力枯渇症、魔力残量の上下が激しい俺にとっては注意しないといけない病気だ。イザベラさんにも忠告されていた事ではあるし、あんまり無茶はしないようにしないとな。





「クロト、大丈夫?」


「ん、ああ。エヴァか、大丈夫だ。もう少し安静にしてれば治る」


「そっか! 良かった」


「それよりエヴァこそ大丈夫なのか? レッグの手伝いは?」


「夜の忙しい時間は手伝いに行くけど、昼間の仕込みはレッグさんがやっててくれるから、私は今暇なんだよ」


「そうか」


「しかし、流石に三日間もベッドの上から動けないとなると暇だな」


「体動かせないの?」


「んー、トイレに行くぐらいなら行けるんだが、店の手伝いや戦闘は無理だな」


「そっか、早く元に戻るといいね」


「ああ」


「でもサラマンダーなんて危険な魔物倒しに行くなら私も連れて行って欲しかった」


「悪いな。俺も聞かされてなかったから……」


「次は連れて行ってよね。……あ、そういえば昨日またエリックとビリーが酔い潰れて騒ぎ起こしてたよ」



 エリックとビリー。ブルーバードの常連でほぼ毎晩来ては酔い潰れて騒ぎを起こす二人だ。

 冒険者らしく、昼間は仕事をしているらしい。働き始めてすぐ仲良くなり、よく仕事の話を聞いたりしている。



「騒ぎって言ったってどうせ大声で歌いだしたとかだろ?」


「うん。まぁ周りの人達も似たようなものだけど」


「ああ……ちょっと眠くなってきた。そろそろ寝るとするよ。エヴァもあんまり無理しないように」


「うん! 私も夜に備えてちょっと仮眠」


「おやすみ」


「うん……おやすみ」





 更に四日が過ぎ……



「ふっかーーーーーーーつ!!!!」



 店へと続く戸を蹴り上げながら、俺は高らかに宣言する。



「おう、クロ坊。久しく見ねぇと思ったら何してやがったんだ」


「誰がクロ坊だ」



 そういえばテンペスターの生みの親であるガーデルさんも俺の事をクロ防って呼んでたな。



「元気だな〜、クロ防」


「そりゃ一週間もベッドの上だったからな」


「酒持ってこーい」


「無視無視」


「お前がいない間にやった依頼の話聞かしてやるよ」



 エリックだ。



「お、聞く聞く!」


「クロ坊、酒持って来いって」



 こっちはビリーだ。



「うっせー。お前は慎め! ベロベロお化けが!」


「なんだとこのやろー」


「既に酔ってんじゃねーか……レッグ!」


「……聞こえてる」


「クロ坊ちゃーん」


「うるせー、ヴァラン! お前まで……ってマルス! アジェンダ!」



 カウンターに座っているヴァランの方を向くと、久しい二人の姿が。



「おう、ガキ」


「久しぶりね」



 また呼び方がガキに戻ってるし……

 二人は俺がぶっ倒れた次の日に治療が終わり出て行ったと聞いている。外傷だけの奴らはいいよな、魔術ですぐ治せて。



「二人とも何してたんだよ」


「私は本業の方に」


「本業?」


「なんだクロト、知らなかったのか。えーっとどこにあったかな」



 ヴァランがカウンターの隅に立て掛けてある雑誌をペラペラと探す。



「ここだ」



 レッグがカウンター下からヴァランが探していたと思わしき雑誌を取り出し渡す。受け取ったヴァランはペラペラとページをめくる。



「あった、ここだ。ほら読んでみろよ」



 俺は雑誌を受け取る。

 この雑誌は確か冒険者について書かれている雑誌だったな。名前は『STRONGER』だっけか。俺は開かれたページの見出しを読む。



『魔術無しでまたもや大型超級魔物討伐

   紅の伝説はまだ続くのか!?

オリハルコン級冒険者 アジェンダ!!』



 デカデカと書かれた文字の下にアジェンダが斧を持った写真がでかでかと貼られている。



「へぇ、冒険者だったのか。オリハルコン級ってのは、すごいのか?」


「そんな事も知らねぇのか、このガキは」



 ゲラゲラと笑うマルスにムッとしながらも、冒険者の階級制度の説明に耳を傾ける。

 オリハルコンとは冒険者の階級の一つで、一番下からブロンズ、アイアン、シルバー、ゴールド、ミスリル、オリハルコンとなり、最上位のランクになる。大陸に数えられる程度しかその称号を持つ冒険者は居らず、帝国の兵士で言えば三大将軍と同等の力を持つらしい。

 冒険者をやっている者から言わせるなら到底常人に到達出来る領域では無いらしい。



「そんな凄い称号持ってたのかよ!?」


「ふふ。そうなのよ」


「ま、驚くのも無理はねぇ」


「なんせ大陸に数人と言われてる称号だからな」



 ちなみにエリックとビリーはシルバーだと言っていたのを今更思い出した。



「魔術無しってどういう?」


「こいつ、あの巨大な斧しか使わねぇんだよ。サラマンダーの時に使った二斧流なんて結構なレアだ」


「私とクレセンティーヌは最強のタッグなのよ」


「ク、クレセン……なに?」


「クレセンティーヌ、私の巨斧の名前よ」


「なるほど……で、マルスは何をやってたんだ?」


「ん、俺は…………」



 その時豪快に扉が開けられ、黒い革鎧を着た数十人の男達が入ってきた。かなりの異様さからさっきまで騒いでたごろつき達も静まり返る。奴らが一様に装着している鎧からは禍々しい気配が漂う。

 左目に大きな傷があるリーダーだと思わしき隻眼の男はサッと店の中を見渡すと俺に焦点を定め、じっと見てくる。



 異様な雰囲気。ただ酒を飲みに来たって風貌じゃない。もし騒ぎを起こすつもりなら叩き出す。

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