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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第一章 学園編

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25話 雷化・天装衣

〈雷術奥義 雷化・天装衣(ラスカディグローマ)



 自分の足元に無属性魔術、鏡盾(シュピーゲル)を展開し、そこに向けてありったけの雷を放出する。地面に放出された雷は鏡盾(シュピーゲル)を介して二倍三倍にも増幅し、俺へと帰って来る。膨大な魔力が体中に満ち溢れると同時にその魔力を全身から急速に放出し、俺と言う人間の肉体に雷と言う属性を与える。



 今の状態を一言で表すなら、俺は雷になった。





 対抗戦が始まる日の朝。



 長期的な目標として見据えていたアレ(・・)の習得を、急遽対抗戦までの目標へと大幅に短縮した事で、俺はたった一週間で雷化を会得しなければならなくなった。

 結果的に言えば対抗戦の当日に、訓練は成功した……と言える。

 雷化した俺は全身が黄色がかった白っぽい色に変化し、全身からバチバチと、文字通りバチバチと雷が出ている。よく見ると若干身体の輪郭が歪んでおり、自然エネルギーである雷に自身の体質へ変化させた事が伺える。

 人の形こそ保っているが、この一見不安定とも取れる姿が、完全な雷化らしい。



 雷化……いや、雷に問わず、自身の体質を自然エネルギーに変換させるのは古代魔術で、現代で使える人は居ない。魔術の到達点と呼ばれるもので、自身が自然エネルギーになる事で特有の性質を発現し、技の威力が何倍にも跳ね上がる。

 体質を変化させる程の魔力を全身から一気に放出し、細胞一つ一つにまで雷と言う属性を与える事で雷化に至る。大昔の人でさえ、使える人は限られていたし、膨大な魔力が必要である以上昔の人でも厳しいものがあった。一部分だけの属性化は出来ていたらしいが、全身はそう容易な話では無かった。



 そんな古代魔術を、俺が何故使えるかと一言で言えば、それは発想の転換と俺の特異体質によるものだ。



 古代魔術の発動方法は全身から魔力を放出させて自分の体質に属性を追加させればいいのだが、まず魔力がそんなに無い上に、全身から魔力を放出するなんて現代の人達は出来ない。

 不足している魔力量に関しては無属性魔術、鏡盾(シュピーゲル)を地面に展開し、雷を下に向けて打てば、雷は何倍にもなって俺に帰ってくるため、一瞬に限り俺の魔力量は普段の十数倍にもなる。これで膨大な魔力量という問題を解決させた。

 全身からの魔力の放出は、〈魔装衣〉を習得していたおかげで比較的すぐに出来るようになった。イザベラさんのスパルタ指導によって、ほぼ常時全身に魔力を張り巡らせてたので、そこから放出するのは簡単な話だった。

 ここで最も障壁となるのは一時的にではあるが、大量の魔力を体内に保持しておく必要があるという事。大量の魔力を保持するのはかなり危険で、本来こんな無理矢理な魔力増幅をすれば魔粒子過剰摂取で魔力の器から魔力が漏れ出し、肉体を維持出来なくなってしまう。しかし、どうやら俺の魔力量自体は人並みだが、魔力の器だけはとんでもなく大きい特異体質らしく、その点は問題無いという訳だ。



 これは入学前最後の訓練――俺が雷拳を爆発させて聖域(サンクチュアリ)を突破しようとした日――で、イザベラさんの聖なる輝き(ホーリーグリッター)鏡盾(シュピーゲル)で跳ね返し、それを吸収された時に思いついた方法だ。



「クロト、完成したのね」


「はい、これが完全な雷化みたいです」



 俺は傍らに開いておいてあった先代皇帝の本を見ながら答える。

 この雷化・天装衣(ラスカディグローマ)という技は先代皇帝も使えた術の一つで、この本にもしっかり載っていた。逆に載っていなければ雷化の存在も知らなかったし、習得しようとも思わなかっただろう。



「構想の段階でも教えたと思うけど、これは多用出来るような技じゃない。何より寿命を削るようなドーピングだという事を忘れないでね」


鏡盾(シュピーゲル)による魔力の瞬間的な回復ですよね」


「ええ、魔力の吸収というのは本来人間には備わってない機能。やればやる程クロトの細胞が傷つき、最後には魔力を永久に失ってしまう魔力枯渇症候群に陥ってしまうわ」


「わかっています」



 鏡盾(シュピーゲル)による魔力増幅が前提となるこの技は、俺の切り札になると同時に肉体を削る事にもなる。仮に鏡盾(シュピーゲル)を応用した魔力回復が容易なら一般化していてもおかしくないはずだ。だが、この使い方が普及していないという事は当然それを否定する事象が存在するから。

 一つは魔力があふれてしまい、肉体を維持出来ない。二つ目は魔力の過剰吸収で細胞が傷つき、最後には魔力を体内に留めておけなくなり、永久に魔力を失ってしまう。



「まぁクロトの体質には正直驚いたわ。まさか魔力を逆に吸収しやすい形に肉体が変化してるなんて、見た事も無かったし。初めて会った時も治療の為に体は見させてもらったけど、この一年と少しで急激な変化よ」



 二つ目の懸念点は俺の変化した肉体の性質によりクリアされていた。どういった事が原因でこの変化が起きたのか、今はまだわかっていない。それに、異常なまでの魔力の器も、吸収に耐えられる肉体も、まるで雷化を習得する為に存在しているかのようだ。だが、それも今は単なる幸運として片付けてしまう。

 勝つ為、強くなる為なら、怪しい程都合が良い事も、利用してやるって決めた。



「これで俺は、強くなれますか?」


「それは私にはわからない。……皇子に勝つ事、自分の村を襲った者に復讐する事。それらを達成出来る肉体と術は揃ったと私は思う。けど、クロトの心が、それに耐えられるかどうかは、クロト自身の問題だから」


「……やり遂げて見せます」





 膨大な雷が放出され、俺自身が雷となった事でヨルの闇をまばゆく照らし、そのまま消し去ってしまう。



『対処法は単純で、酷くゴリ押しになってしまう。……相手の闇を消し去る程の光量を発生させればいい。マナの光属性と、クロトの雷属性。二人だけはそれが出来るだろう。勿論生半可な術じゃダメだ。一気に闇の行き場が無くなる程の光源を発生させなきゃならない。出来るか?』



 レイグの読み通り、闇は光に弱い。



「クロト! 大丈夫!?」



 闇から出ると同時に、テンペスターでヨルを牽制し、退かせる。

 周囲の状況を確認すると、レイグとパトリックが激しく剣をぶつけあっているが、かなり押されている。そしてアースの土術による攻撃をガイナとマナが何とか相殺し、アイズの二属性攻撃はエヴァが捌いている。が、水術はともかく炎術とは相性が悪く、本当にギリギリ持ち堪えていると言ったところだ。

 かなり押されているし、このままじゃ負けてしまう。



「真価はここからだ」



〈雷帝流 稲妻剣〉



 狙いをパトリックに定めて踏み込む。

 テンペスターを振るってパトリックの剣を大きく弾いたが、勢いがつき過ぎて止まれず、パトリックに追撃出来ない位置まで飛んでしまった。

 雷化するという事は俺の一挙手一投足が光速にまで跳ね上がるという事。当然軽く踏み込んだだけで長距離を移動してしまう。慣れるまでは間合いを掴めないな。



「俺の技は一段階進化するぞ」



〈雷術 雷砲拳〉



 今度は間合いを調節しながら未だに対応出来ていないパトリックの腹に拳をねじ込む。純粋な威力だけでなく、雷を伴った爆発の追撃が容赦なく襲い掛かり、パトリックは大きく宙を飛んでイーニアスの足元まで吹き飛ばされる。

 残念ながら一撃で戦闘不能にまでは追い込めなかったが、無視出来ないダメージなはずだ。



「クロト、それは……」


「説明は後! エヴァを頼む! 俺はあいつを」



 俺は次の標的をアースに定める。

 地面を強く蹴って上空まで飛び、はるか下でこちらを睨んでいるアースと視線がかち合う。両手の平に魔力を集め、大技の準備に入る。



「きゃっ!」


「クロト! エヴァが!」



 ガイナの声でアースから視線を外し、仲間へ向ける。

 アイズと一人で戦っていたエヴァは水術と炎術の同時攻撃に耐えられず、攻撃を食らって中空に吹き飛ばされている。雷の速度なら助けられるが、それより問題なのはアイズだ。右手に炎、左手に水を出現させ、それらをぶつけあう事で超次元エネルギーを生み出している。あれがレイグの言う最も破壊力のある攻撃手段。あれは撃たせるわけにはいかない。

 標的をアースからアイズへ。



「……ッ!」



 と同時に俺の体を岩石が貫通し、雷の体が揺らぐ。

 雷化の状態ではあらゆる物理的干渉を貫通出来る。触れられないわけでは無いが、俺が力んでいたり、体質を変化させていなければどんな不意打ちでも、この雷の体にダメージを与える事は出来ない。

 いくら皇子直属の護衛と言っても、古代魔術にまでは理解がないらしい。



〈雷術 雷撃大砲(プラズマキャノン)



 雷砲と違い、巨大な雷丸を形成して、それを雷の軌道に乗せてそのまま打ち出す巨大雷砲。当然その速度も雷と同じである為、アイズは光速で接近してくる巨大な雷の塊に気付くも、対応するだけの余裕は無く、そのまま直撃してしまう。



「マナ! エヴァの回復を! レイグとガイナはパトリックに注意しろ!」



 この一瞬とも取れる攻防の中で、アイズは戦闘不能。アースはこちらに攻撃を仕掛けてきているが、いずれも物理無効を破れずに空振りで終わっている。そしてパトリックが再び起き上がり、皆に接近しているのを視界の端で捉えていた。

 だが、ここでパトリックを止めに俺が戻ってしまったら、アースの強力な範囲攻撃で一網打尽にされてしまう可能性がある。だから、ここでアースから目を離すわけにはいかない。



「俺は大地と一体となる。今喋っているこの人型の土すら、本体ではない。見つけることが出来るか? 俺の本体を」



 アースの人理限界で最も厄介なのは本体の位置を自由に設定出来る事。融合している範囲内という限界はあるものの、この狭い闘技場内ではほぼ全てが奴の人理限界の範囲内だ。



「それも、対策済みだ!」



〈雷術 雷神具(ライジング)天裂槍(てんれつそう)



 通常の雷槍よりも巨大な槍を形成し、掴んで投げる。落雷のように迸る天裂槍が空を裂きながら飛び、イーニアス目掛けて一直線に降り注ぐ。

 皇子直属の護衛……皇子を見捨てるわけにはいかないだろう!



「くそが!」



 アースは大地との融合を解除し、身を挺してイーニアスを守る。だがそれは、同時に俺の全力の攻撃を生身で受ける事を意味する。雷砲拳とはわけが違う。直撃すればアースでも一撃で戦闘不能まで持ち込める。



「これで、道が開けた」

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